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トリパの糖鎖

 トリパノソーマ原虫はなぜ糖鎖を作るのか?

研究の背景

 当グループではTrypanosoma brucei(日本語ではトリパノソーマ ブルセイと発音,英語ではトゥリパノソーマ ブルシアイと聞こえる)という学名の原虫を研究対象としています.T. bruceiは「単細胞」の真核生物であり,ウシなどの哺乳動物に寄生して衰弱させ,ついには宿主(=寄生された動物)を殺してしまいます.T. bruceiの亜種であるT. brucei gambienseT. brucei rhodesienseはヒトに寄生し,アフリカ睡眠病もしくはヒトアフリカトリパノソーマ症(HAT:human African trypanosomiasis)と呼ばれる致死性の病気をひき起こします.

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研究テーマ

 T. bruceiが作る糖鎖にはN-結合型糖鎖とグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを修飾する糖鎖が知られており,N-結合糖鎖としてはパウシマンノース型,ハイマンノース型,コンプレックス型,ハイブリッド型が検出されます(Izquierdo, L. et al. (2009) Mol. Microbiol. 71, 478).これらの糖鎖はT. bruceiでどのような役割を持っていて,生存・増殖にどの程度のインパクトを持っているのでしょう.我々のグループでは,これらについて解明を進めています.

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実験手法

 当グループで扱っているT. bruceiはSingle-Markerと呼ばれる株で,Lister 427株にTetリプレッサーとT7 RNAポリメラーゼを構成的に発現するよう改変したものです.Lister 427株は,ヒトに感染せず,昆虫ステージへの分化も完全には進行しない株です.その細胞表面を覆う変異表面糖タンパク質(VSG)の型はVSG221(別名MITat1.2)です.この株は培養フラスコ中で純粋培養でき,培地には蛭海先生らが開発されたHMI-9が世界的に使用されています.この株のHMI-9培地での倍加時間は8~10時間で,3日に1回程度の継代培養が必要となります.

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ギャラリー

ギムザ染色像,間接免疫蛍光抗体法による画像

  • pictureT. bruceiのキムザ染色像
  • picture赤(ゴルジ装置),N(核),k(キネトプラスト)
  • picture赤(小胞体),N(核),k(キネトプラスト)

参考サイト

TriTrypDB
トリパノソーマやリーシュマニアなどトリパノソーマ目に分類される生物のゲノム・遺伝子・タンパク質データベースサイト.

TrypsRU Home
トリパノソーマの分子生物学の大家,クロス先生のサイト.実験を進めるうえで必須の情報が得られる.

Illustrated Lecture Notes on Tropical Medicine
様々な熱帯病の情報が網羅されている.