「(大草原の)小さな家」シリーズ


「大草原の小さな家」(Little House on the Prairie)と言えば、アメリカNBCテレビが制作したテレビドラマシリーズを頭に浮かべる方が多いでしょう。しかし、そもそも「大草原の小さな家」とは、ローラ・インガルス・ワイルダー(Laura Ingalls Wilder, 1867-1957)が少女時代の記憶をたどりつつ書いた9冊の本の2冊目のタイトルです。テレビの『大草原の小さな家』は、この9冊の本を下敷きにして、原作にはない登場人物やエピソードを織り交ぜながら、アメリカのNBCが制作したものです。以下、アメリカでは "'Little House' Books" として言及されることが多い9冊の本の梗概です。それから、一人娘のローズ・ワイルダー・レイン(Rose Wilder Lane, 1886-1968)の尽力なしに「小さな家」シリーズは生まれなかったと言われています。シリーズ執筆については、ローラとローズの略歴と共にこちらにまとめています。


Little House in the Big Woods (1932)(『大きな森の小さな家』)

ウィスコンシン州ペピンの近くにある「大きな森」の小さな家での、ローラ、とうさん、かあさん、姉のメアリー、妹のキャリーの生活。ローラが5歳から6歳までの1年間が、秋、冬、春、夏、そして再び秋の順で描かれている。


Little House on the Prairie (1935)(『大草原の小さな家』)

「野生の動物が、あんしんして住んでいられる土地が好き」なとうさんは、広々とした大草原が広がるインディアン・テリトリーへの移住を決心。一家は幌馬車で旅立つ。長旅の末、一家は目指す土地に到着し、丸太小屋を建てる。しかし、そこはインディアン(オーセージ族)の居留地で、国の騎兵隊が白人居住者を追い出しに来るだろうという噂がたち、一家は再び幌馬車で旅立つ。ローラが6歳から7歳までの1年間。


On the Banks of Plum Creek (1937)(『プラム・クリークの土手で』)

大草原を旅立った後、一家はミネソタ州プラム・クリークの横穴小屋に落ち着く。ローラはメアリーと一緒に町の小学校に通い始め、ローラの世界も少しずつ外へ向かって広がっていく。日照りやイナゴの大群の襲来でとうさんは思い通りの小麦の収穫をあげられず、大吹雪にも見まわれるが、一家は力を合わせて苦しみを乗り越えていく。


By the Shore of Silver Lake (1939)(『シルバー・レイクの岸辺で』)

プラム・クリークに移り住んでから5年が経つ。ローラは13歳になっている。この間に末の妹グレイスが誕生し、メアリーは熱病がもとで失明してしまう。幼い頃からローラの親友だった犬のジャックは亡くなり、ローラは悲しみに暮れるが、メアリーの目の代わりとして、かあさんの片腕として一家を支えていく。とうさんは鉄道工事現場の会計係と計時係の仕事を引き受け、一足先にサウス・ダコタへ。その後、ローラたちは汽車でサウス・ダコタへと向かい、とうさんに合流する。ローラの初めての汽車の旅である。鉄道工夫たちの去ったシルバー・レイクで一家は冬を越す。春になって、とうさんは払い下げ農地を手に入れ、家を建て、デ・スメットという新しい町の建設にも尽力していく。


Farmer Boy (1933)(『農場の少年』)

ローラの夫になるアルマンゾが9歳の頃の話。彼はニューヨーク州マローンにある農場に両親と兄、二人の姉と一緒に住んでいる。勉強は嫌いだが、農場の仕事は大好きなアルマンゾは、子牛の訓練をしたり、大きなカボチャを栽培して村の品評会で1等賞を取ったりする。農夫であるとうさんに誇りを持ち、自分も農夫になろうと決心していく。


Long Winter (1940)(『長い冬』)

10月に吹雪が来て、7ヶ月にも渡る厳しい冬が始まる。インガルス一家は払い下げ農地からデ・スメットの本通りにある家へと引越す。鉄道は不通になり、食料や燃料を運んでくる汽車も馬車も止まってしまうが、デ・スメットの人々は何とか冬を乗り切る。その裏には、ローラの学友キャップ・ガーランドと吹雪 の中、町の人々のために小麦を探しに行ったアルマンゾ・ワイルダーの尽力もあった。


Little Town on the Prairie (1941)(『大草原の小さな町』)

インガルス一家は夏は払い下げ農地で、冬はデ・スメットの本通りの家で過ごす。メアリーはアイオアの 盲人のための大学へ行き、ローラはデ・スメットの学校で学友たちと楽しい日々を過ごす。ローラは教員採用試験を受験し、合格する。


These Happy Golden Years (1943)(『この楽しき日々』)

ローラは教員資格のある16歳までは少しだけ間があったが、デ・スメットから20キロほど離れた開拓小屋の学校で教え始める。開拓小屋付近にある下宿とデ・スメットを往復するローラを送り迎えする役目をアルマンゾが買って出て、二人は少しずつ親しくなる。ローラは合わせて3学期、学校で教えた後、アルマンゾと結婚する。二人はデ・スメット付近の農地に新居を構える。


The First Four Years (1971)(『はじめの四年間』)

「百姓と結婚したくないというローラ」と「百姓として生きたい」というアルマンゾが結婚して、最初の4年間の物語。二人にはローズという娘が生まれるが、翌年生まれた長男は名前も付けられないうちに急死してしまう。ジフテリアにかかったり、火事に見舞われたり、収穫も思うようにあげられない苦しい4年間だったが、それでもローラは、アルマンゾの言う通り、「時が来ればすべてのものは公平な結果になる」と考える。



※ 上の リストの(   )内の邦題と引用は、『大きな森の小さな家』から『農場の少年』までは恩地三保子さん(福音館書店)と『長い冬』以降は鈴木哲子さん(岩波少年文庫)の和訳を参考にしています。

※ 原書のタイトルの後の数字は初版の出版年です。The First Four Yearsだけが、他の作品よりも約30年遅れて出版されていますが、ロジャー・リー・マクブライド氏によるこの本の "Introduction" によると(Harper & Row、鈴木哲子氏の邦訳にもあります)、ローラは1840年代の終わり頃にこの本を書いたようですが、アルマンゾが1949年に亡くなった後、出版意欲を失い、娘のローズも出版しないままにこの世を去り(1968年)、原稿を託されたマクブライド氏が出版を決意したとのことです。マクブライド氏はまた、ハーパー・アンド・ロー社の編集者とも話し合い、ローラが鉛筆書きした第一稿のまま出版していることにも触れています。

※ 原書及びその他の邦訳の出版もとについては、こちらをご覧ください。

※ 「小さな家」の本はここまでですが、その後のローラやローズ、アルマンゾについては、ローラ自身が描いたこちらや、ロジャー・リー・マクブライド氏が描いたこちらから知ることができます。




「小さな家」シリーズについて書かれた本については、こちらをご覧ください。

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