●表3 ローレライ1973 ユルゲン・ヴェルナー

わたしには分からない、こんなに
悲しいのがなにを意味するか;
むかしからのある悪夢が、
わたしのこころから消えない。

かぜは重たく淀んでくすんでいる、
そしてラインは汚ったらしく流れている;
あかく映えるやまのいただきはなく、
太陽はどこにあると言うのか。

かの女がラインの岸辺に座している、
ドイツの化学工業が;
かの女はそこで危険な有毒物質を調合し、
大気を窒息させている。

かの女は配水管から流れる
廃棄物には気にもかけない;
これが化学の豚小屋から流れ出て、
ラインに注がれゆく。

タンカーに乗った船員の
呼吸は困難になる;
かれの目に岩礁は見えない、
ただひどい汚水が見えるだけ。

やがて波に呑み込まれてしまうのは
船員と小舟ばかりでない;
これは工業がかの女の
有毒物質とともに為したしわざ。


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