●表2 「ローレライ」ハイネ 1823年作

わたしには分からない、こんなに
悲しいのがなにを意味するか;
むかしからのある言い伝えが、
わたしのこころから消えない。
かぜは涼しく日も暮れてゆく、
そしてラインは静かに流れている;
やまのいただきが入り日に
あかく映えている。

あのうえにこのうえなく美しい乙女が
みごとな出で立ちで座している、
かの女の黄金の装身具がきらめく、
かの女は黄金の髪を梳いている。
かの女は黄金の櫛で梳きながら
うたを歌っている;
うたには妙なる、
おそろしい旋律がある。

うたは船に乗った漁師を
激しい悲しみで襲う;
かれの目に岩礁は見えない、
ただうえのいただきが見えるだけ。
さいごに漁師は小舟もろとも波に
呑み込まれてしまうのだろう、
これはローレライがかの女の
うたとともに為したしわざ。


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