ペピンと「大きな森の小さな家」


ローラは1867年2月7日に、ウィスコンシン州、ペピンから約7マイル(約10キロ)のところにある「大きな森の小さな家」で生まれました。

ペピンはペピン湖畔の人口約870人の小さな町です。ペピン湖はミシシッピ河の源流の一つで、対岸はミネソタ州、ワバシャ(Wabasha)です。『大草原の小さな家』の第一章に、一家が凍った湖を渡る様子が描かれていますが、実際にペピン湖を渡ったインガルス一家は一時期、このワバシャに住んだのだそうです。

『大きな森の小さな家』の第九章で、初めてペピンの町を訪れたローラは、「歌に出てくるヤンキー・ドルードゥルが家がたくさんありすぎて、町が見えないといった気持ち」がよくわかる言っています。そこまで「町」には思えないにしても、ローラゆかりの地の中では、かなり都会に見えます。ペピンにはヨットハーバーやビーチもあり、アンティークや工芸品を扱う店など、サンフランシスコにありそうな洗練されたお店やレストランもあるちょっとしたリゾート地でもあるのです。
ローラが生まれ、1歳の頃までを過ごした丸太小屋はもうありませんが、同じ場所に丸太小屋のレプリカ"Little House Wayside"があります。1976年から翌年にかけて、建設されたそうです。ダイニングキッチンと寝室、パントリー(食物を保存する場所)、そして屋根裏部屋だけの小さな家ですが、ローラが過ごした小屋は、もっと小さかったような気がします。バー・オーク(アイオア州)にはインガルス一家が住みこみで働いていたホテルが残っていますが、そこの各部屋と比較すると、"Little House Wayside"はゆったりし過ぎているように感じられます。この家は『大きな森の小さな家』の記述をもとに復元されていますが、このことからも、家は実際よりも少し大きくつくられていると考えられます。『大きな森の小さな家』に登場する小さなローラには、どんなに小さな家も大きく見えたでしょうから。

写真から明らかなように、丸太小屋の周囲には現在「大きな森」はありません。ローラのとうさんを始め、開拓農民たちは木を切り倒し、切り株を掘り起こして土地を開いていったのです。アメリカの開拓の歴史は森林が失われる歴史でもあるのです。アイオア州の話ですが、100年間に森は十分の一になってしまったそうです。ペピン歴史協会の人たちは、丸太小屋の周りに少しでも木を取り戻したいと、植林をしています。特に大きくなって欲しいのが、丸太小屋の前の小道に植えられたカシの木です。『大きな森の小さな家』に、家の前の庭には形のいいカシの大木が二本あり、ローラは目を覚ますとすぐに窓辺に走り、カシの木にとうさんがしとめたシカがぶらさがっているかどうか見に行った(第一章)と書かれているからです。

『大きな森の小さな家』を読むと、人々は互いにかなり離れて生活しているように見えますが、ローラがいっしょに遊んだピーターらいとこたちは、300メートルくらいしか離れていない、かなり近くに住んでいたようです。木々が隔てていたことと、ローラが小さかいことが、読者に人々が互いにかなり孤立していたように思わせるのでしょう。

1868年頃に一家はカンザスの大草原へ移住しますが、1871年にいったんペピンに戻っています。4歳になっていたローラが一時期通った学校、バリー・コーナー・スクールも丸太小屋の近くにあったそうです。ローラが習った先生、アンヌ・バリーの墓は、ペピンから丸太小屋へ至る道の途中にある共同墓地に、その写真は、ペピン歴史博物館(Pepin Historical Museum)で見ることができます(左の写真の茶色い建物)。

ペピンの目抜き通りサード・ストリート(Third Street)にあるこの博物館は、こじんまりとしていますが、19世紀の生活を知る上で興味深い展示物がいろいろあります。「小さな家」関連の書籍、小物も売っています。

サード・ストリートをペピン歴史博物館から北へ4ブロックほど行ったところに、ローラ・インガルス・ワイルダー公園があります。その中にペピン鉄道博物館(右の写真の赤い建物)があり、ここにも当時の様子を偲ばせる展示が。『ハックルベリー・フィンの冒険』などの作者、マーク・トウェインが小さく写った写真はもあります。ペピンの停車場はもとはペピン湖のほとりにありましたが、1985年に現在の位置に建物だけ移設されたそうです。停車場のもとの位置には、それと分かる跡が残っています。乗客を乗せた列車は現在、走っていませんが、貨物列車が日に何度も走っていました。

『大きな森の小さな家』の読者なら誰もがしたくなることだと思いますが、私もペピン湖の岸辺の小石を拾いました。家族とローラの足跡をたどっている8歳くらいの女の子にデ・スメット(サウス・ダコタ州)で会いました。彼女もペピンで小石を拾ったそうです。「でも、ローラみたいにポケットを破かなかったよ」(『大きな森の小さな家』、第九章参照)と自慢そうでした。

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