アメリカ合衆国憲法修正条項

 

 

連邦議会開設直後に提起され、アメリカ合衆国憲法の最初の修正条項として追加された第1修正から第10修正までは、1791年(寛政3年=第11代将軍;家斉の時代)に成立、一般に、「権利の章典」(Bill of Rights)と呼ばれている。

権利の章典は、アメリカ合衆国憲法に市民的自由の核となる個人の基本的権利とその法的保護規定が欠落していたことから追加されたもので、それは、宗教、言論、出版、集会の自由(第1修正)、武装の権利(第2修正)や不当な捜索や逮捕の禁止(第4修正)、正当な法の手続なしに生命、自由、財産を奪われないこと(第5修正)、陪審による裁判の権利(第6〜第7修正)、残酷で異常な刑罰の禁止(第8修正)などから成っている。

その後、1804年に正副大統領の選出手続を現行のように改めた大統領の選挙方法の改正(第11修正)があり、また、1865年に奴隷及び苦役を禁じた規定(第13修正)、1920年に女性の参政権規定(第19修正)1951年の大統領3選規定(第22修正。第2次世界大戦時とはいえ、これまでの3選禁止の慣習を破り、ルーズベルト大統領が4選を果たしたのが、その主たる要因)などが追加されている。

なお、これまでの26回の憲法の修正は、連邦議会の各院が3分の2以上の賛成で発議し、4分の3以上の州の批准をもって成立している。

また、男女同権に関する第27修正は、1972年に連邦議会で採択され、9年間にわたって州の批准にかけられたが、35州の批准しか得られなかったため、改正に必要な4分の3上の州の批准要件を満たすことができず、不成立に終わった。                                     

 

 

第1修正(信教、言論、出版、集会の自由、請願権) 

連邦議会は、国教を樹立し、または宗教上の行為を自由に行なうことを禁止する法律、言論または出版の自由を制限する法律、ならびに人民が平穏に集会する権利、および苦情の処理を求めて政府に対し請願する権利を侵害する法律を制定してはならない。

 

第2修正(人民の武装権)

 規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要であるから、人民が武器を保有しまた携帯する権利は、これを侵してはならない。

 

注;民兵(a militiaman)=民間人で編制した軍隊。なお、民兵制とは、スイスの兵役制度の類で、平時は一般の職業に従事している民間人が、戦時は軍隊を構成する制度をいう。

 

第3修正(軍隊の舎営に対する制限)

 平時においては、所有者の同意を得ない限り、何人の家屋にも兵士を舎営(しゃえい=軍隊が民間の家屋などで休養・宿泊すること。露営・野営に対していう)させてはならない。戦時においても、法律の定める方法による場合のほか、同様とする。

 

第4修正(不合理な捜索、逮捕、押収の禁止)

 不合理な捜索および逮捕または押収に対し、身体、家屋、書類および所有物の安全を保障されるという人民の権利は、これを侵してはならない。令状は、宣誓または確約によって裏付けられた相当な理由に基づいてのみ発行され、かつ捜索すべき場所、および逮捕すべき人、または押収すべき物件を特定して示したものでなければならない。

 

第5修正(大陪審の保障、二重の危険の禁止、正当な手続き(デュー・プロセス)、財産権の保障)

@ 何人も、大陪審の告発または起訴によらなければ、死刑を科せられる罪その他の破廉恥(はれんち)罪につき責を負わされることはない。ただし、陸海軍、または戦時、もしくは公共の危険に際して現に軍務に服している民兵において生じた事件については、この限りではない。

A 何人も、同一の犯罪について重ねて生命身体の危険にさらされることはない。

B 何人も、刑事事件において自己に不利な証人となることを強制されることはなく、また法の適正な手続きによらずに、生命、自由または財産を奪われることはない。

C 何人も、正当な補償なしに、私有財産を公共の用のために徴収(ちょうしゅう)されることはない。

 

第6修正(審理陪審、迅速な公開の裁判その他刑事上の人権保障)

 @ すべての刑事上の訴追において、被告人は、犯罪が行なわれた州、および事前に法律によって定められた地区の公平な陪審による迅速な公開の裁判を受け、かつ事件の性質と原因とについて告知を受ける権利を有する。

A 被告人は、自己に不利な証人との対質(たいしつ=証拠調べをするのに被告人・証人などを相対させて尋問すること)を求め、自己に有利な証人を得るために強制手続を取り、また自己の防禦(ぼうぎょ)のために弁護人の援助を受ける権利を有する。

 

第7修正(民事事件における陪審審理の保障)

 コモン・ロー上の訴訟において、訴額が20ドルを超えるときは、陪審による裁判を受ける権利が保障されなければならない。陪審によって認定された事実は、コモン・ローの準則によるほか、合衆国のいずれの裁判所においても再審理されることはない。

 

第8修正(残虐で異常な刑罰の禁止等)

 過大な額の保釈金を要求し、または過重な罰金を科してはならない。また残虐で異常な刑罰を科してはならない。

 

第9修正(人民の権利に関する一般条項)

この憲法に一定の権利を列挙したことを根拠に、人民の保有する他の諸権利を否定し、または軽視したものと解釈してはならない。

 

第10修正(州または人民に留保された権限)

この憲法によって合衆国に委任されず、また州に対して禁止していない権限は、それぞれの州または人民に留保(りゅうほ)される。

 

第11修正(大統領の選挙方法の改正)−(1804年成立)

@ 選挙人は、それぞれの州に集まり、無記名投票により大統領および副大統領を選出する。そのうち少なくとも1名は、選挙人と同じ州の住民であってはならない。選挙人は、その投票用紙に大統領として投票する者の氏名を記し、別の投票用紙に副大統領として投票する者の氏名を記さなければならない。

A 選挙人は、大統領として得票した者のすべてと各得票者の得票および副大統領として得票した者のすべてと各得票者の得票につき、それぞれ別の一覧表を作成し、これに署名し認証をした上封印を施して、上院議長に宛て、合衆国政府の所在地に送付しなければならない。

 

第12修正−(大統領の選挙方法の改正)(1804年成立)

@ 選挙人は各々その州に会合し、秘密投票によって、大統領および副大統領を決定する。この2人の内、少なくとも1人は、選挙人と同じ州の住民であってはならない。選挙人は、その投票において大統領として投票する者を指名し、別の投票において副大統領として投票する者を指名する。また選挙人は、大統領として投票されたすべての者あるいは副大統領として投票されたすべての者の表ならびに各人の得票数の表を作成し、これらの表に署名し証明した上、封印をして上院議長に宛て、合衆国政府の所在地に送付しなければならない。

A 上院議長は、上下両院議員出席の下に、すべての証書を開封し、次いで投票が計算される。大統領として最多得票を獲得した者を大統領とする。ただし、その数は任命された選挙人総数の過半数でなければならない。もし何人も右の過半数を得なかった時は、大統領として投票された者の内、3名を超えない最高得票者の中から、下院が直ちに秘密投票により大統領を選任しなければならない。

B 大統領の選任に際して、各州の下院議員団は1票を有するものとし、投票は州を単位として行う。この目的のための定足数は、全州の3分の2の州から1名またはそれ以上の議員が出席することによって成立し、また選任のためには全州の過半数が必要である。もし右の選任権が下院に委譲された場合に、下院が(次の3月4日まで=第20修正で改正)大統領を選任しない時は、大統領の死亡またはその他の憲法上の不能力を生じた場合と同様に、副大統領が大統領の職務を遂行する。

C 副大統領として最多得票をした者を、副大統領とする。ただし、その数は任命された選挙人総数の過半数でなければならない。もし何人も右の過半数を得なかった時は、右の表の内、2名の最高得票者の中から、上院が副大統領を選任しなければならない。この目的のための定足数は、上院議員の総数の3分の2とし、また選任のためには総数の過半数が必要である。しかし何人といえども、憲法上大統領職に就く資格のない者は、合衆国副大統領の職に就くことができない。

 

第13条(奴隷及び苦役)−(1865年成立)

第1節 奴隷および本人の意に反する労役は、犯罪に対する処罰として、当事者が適法に宣告を受けた場合を除くほか、合衆国内またはその管轄に属するいずれの地にも存在しない。

 

注;北米南部は綿花プランテーションplantation=熱帯・亜熱帯地域の植民地で、原住民や移民の安い労働力を使って綿花・タバコ・ゴム・コーヒー・紅茶などの商品作物を栽培する大規模農園)が発達したが、その主たる労働力は西アフリカから購入した黒人奴隷であった。16から19世紀にかけて売買された奴隷は1,000万人以上推定されている。

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米国に売られる黒人奴隷

 

第15修正(黒人の選挙権)−(1870年成立)

 第1節 合衆国市民の投票権は、人種、体の色、またはこれまでの労働の状態を理由として、合衆国、または州により拒否されまたは制限されることはない。

第2節 連邦議会は、適当な立法によって本条の規定を執行する権限を有する。

 

第17修正(上院議員の選挙法改正)−(1913年成立)

@ 合衆国の上院は、各州から2名ずつ6年を任期として その人民によって選挙される上院議員をもってこれを組織する。上院議員は、それぞれ1票の投票権を有する。各州の選挙人は、州議会の議員数の最も多い一院の選挙人として必要な資格を備えなければならない。

A 上院における州の代表に欠員を生じたときは、その州の執行部は、その補充のために選挙の命令を発しなければならない。ただし、州議会は、人民が州議会の定めるところにしたがい選挙によって右の補充を行なうまでの問、その州の執行部に対して臨時の任命を行なう権限を与えることができる。

B この修正は、それが憲法の一部として効力を発生する以前に選出された上院議員の選挙または任期に影響を及ぼすものと解釈してはならない。

 

(中略)

 

第19修正(女性の参政権)−(1920年成立)

@ 合衆国市民の投票権は、合衆国または州によって、性別を理由として、拒否され、または制限されることはない。

A 連邦議会は、適当な立法によって本条の規定を執行する権限を有する。

 

(中略)

 

第22修正(大統領の3選禁止)−(1951年成立)

第1節 何人も2回を超えて大統領の職に選出されることはできない。他の者が大統領に選出された場合のその任期のうち2年超えて大統領の職にあった者、または大統領の職務を行なった者は何人といえども1回を超えて大統領の職に選出されることはできない。ただし、本条の規定は、本条が連邦議会によって発議された時に大統領の職にある者に対しては適用されない。また本条の規定は、それが効力を生ずる時に任期中の大統領の職にある者、または大統領の職務を行なう者が、その任期の残存期問中、大統領の職にありまたは大統領の職務を行なうことを妨げない。

第2節 本条は、連邦議会によって州に提議された日から7年以内に、4分の3の州議会によってこの憲法の修正として承認されないときは、その効力を生じない。

 

(中略)

 

第25修正(大統領の地位の承継等)−(1967年成立)

第1節 大統領が免職され、死亡し、または辞職した場合には、副大統領が大統領に就任する。

第2節 副大統領の職が空席のときは、大統領は副大統領を指名し、この指名された者は、連邦議会の両院の過半数による承認を得て副大統領の職に就任する。

 

第26修正(18歳以上の市民の選挙権)−(1971年成立)

第1節 年齢18歳またはそれ以上の合衆国市民の投票権は、合衆国または州によって、年齢を理由として拒否され、または制限されてはならない。

第2節 連邦議会は、適当な立法によって本条の規定を執行する権限を有する。

 

第27修正(議員の報酬)−(1992年成立)

上院議員および下院議員の役務に対する報酬を変更する法律は、下院議員の選挙が施行されるまで、その効力を生じない。

 

 

参考資料;『解説世界憲法集』(三省堂)

 
合衆国憲法(抜粋)
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