☆労働審判制度(労働審判法)☆
突然の解雇や雇い止め、賃金・退職金の未払い等々、増加する労働者個人の事業主との争い(労働紛争)の迅速な(短期間の)解決を目指すため、法制度改革のひとつとして生まれ、06年4月1日からスタートした日本で初めての訴訟と調停の中間的な位置付けの個別労働紛争を専門的に扱う初の司法機関(裁判手続き)で、全国50の地方裁判所本庁に設けられた。
厚生労働省のまとめによると、都道府県におかれている労働局に寄せられた労働相談は04年度に82万3,000件に達しており、このうち個別労働紛争は03年度より14%も増加16万件を超えており、その内訳は、解雇に関する相談がトップで27・1%、ついで労働条件の引き下げが16%である。
一方、民事訴訟に持ち込まれたのは約2,500件だった。このことは、多くの労働者が時間と金がかかる裁判での解決を敬遠していることを意味しており、弱い立場の労働者が泣き寝入りしていることの証左でもある。
こうした事態の打破を目的に導入されたのが、労働審判制度であり、これにより不利な立場に置かれている労働者の救済が強く期待されるところである。
労働審判制度は地方裁判所への申し立てをうけ、労働審判官(裁判官)と労働審判員(労働者と使用者側から任命)の計3人で労働審判委員会が構成され、最高裁判所が、労働関係の知識をもっている者の中から労働審判員を任命する。
現在全国で、連合や全労連(51人)などが推薦した労働者側500人、使用者側推薦の500人との計1,000人(女性の割合はわずか5%)の労働審判員がおり、任期は2年である(審判員には手当が出る)。
事件ごとに労働審判官1名と労働審判員2名が指定される3人制の労働審判委員会は、紛争のポイントを整理し、証拠を調べ、3回の「期日」(民事裁判の口頭弁論にあたる)以内に解決をはかることを原則としている。
労使紛争の民事裁判の平均審理期間が約11カ月である事を勘案して早期解決を目指す労働審判では3、4カ月を目途とするところとなる。
そのため、この期日で証拠調べができない複雑な争いなどは、労働審判になじまないものとして途中で手続きが終了することとなり、この場合、労働審判の申し立てを訴訟の提起と見なして通常の裁判(民事【労働】裁判)に移行される(訴えの擬制)。
紛争の解決方法は、まず、話し合いによる解決(調停)を試み、これで解決されない場合は、審判(判決)をだすことになり、審判は、委員会を構成する3人の多数決によって決められる。
調停や審判は確定判決(確定の効力を有する判決、すなわち通常の不服申立【上訴】によって取り消すことができない判決)と同一の法的効力をもち、当然、相手側がこれに従わないときには、強制執行(債権者が債務者に対して有すると認められた私法上の請求権を、国家権力によって強制的に実現する手続きで民事執行法に規定されている)ができる。
審判から2週間以内に異議の申し立てがあった場合は失効し、紛争の解決は自動的に通常の訴訟に移行される(これが、「4審制」ではないかと批判されるところである)が、その際、労働審判の結論と同じ結果が出る可能性が高いと考えられていることから、この仕組みによって労働審判の受け入れを当事者に促すこととなる。
相手(事業者側)に要求する金額が増えるのに応じて手数料も増えるが、その額は通常の民事裁判の約半額で、例えば、「未払いの給料100万円を払ってほしい」と申し立てるときの手数料は5,000円となる(弁護士を立てる場合の弁護士費用は別途)。
労働審判法第1条は、「個々の労働者と事業主の間に生じた民事に関する紛争」と規定していることから、個々の労働者と事業主との争いを対象とし、労働組合と事業者、公務員と国・自治体との争いは除外されることとなる。
もとより、パートやアルバイト、派遣労働者も、申し立てることができ、申し立てから40日以内に審判を始めることが義務付けられている。
労働審判制度の問題点の一つが、解雇が無効と判断され、労働者本人が職場復帰を望んでいる場合にも、金銭補償による審判をだせることが否定していないことにある。
労働審判法第20条1項は「当事者間の権利関係及び労働審判手続の経過を踏まえて、労働審判を行う」との規定から、例えば日本労働弁護団は、解雇が無効と判断され、労働者が金銭解決を求めていない場合、金銭解決の審判をだすことは「審判手続の経過を踏まえて」おらず、「出せないものと解される」としているが、解雇問題の金銭解決は、日本経団連などが要求していることから、この規定からははっきりしない。
また、弁護士でない者の許可代理人や傍聴を認めるかどうかの問題も残されている。
2004年4月28日全労連(全国労働組合総連合)は坂内三夫事務局長の名で労働審判法の成立を歓迎し、個別労使紛争解決の有効な機関としての制度確立を期待する」との以下のコメントを発表している。
ただ、全労働者のうち非正規雇用が3分の1を占める状況下では、個別紛争の増加は不可壁であるため、労使と司法関係者らが審判員の継続的な養成などで連携し、新制度を軌道に乗せる努力が求められている。
さらには、01年に施行された個別労働紛争解決促進法を受けて設置された都道府県労働局の総合労働相談センターや自治体の窓口も、新制度と一体となって、援護策の一層の強化を図る必要がある。
スタート1カ月間での全国の申し立ては93件(最高裁調べ)。
東京地裁でも06年5月10日に名古屋地裁に続き、初めて調停が成立した。東京都内の30代の男性が、不当解雇されたとして解雇無効(社員の地位確認)と残業代支払いを求めていた。男性は05年12月に、外資系通販会社に管理職として中途採用されたが、試用期間中の06年2月、不適格として解雇された。調停の内容は、勤務先だったから解決金を受け取り、合意のうえで退職するというもの。この事案の審判の申し立ては06年4月12日で、5月10日に第1回の審判が開かれ、即日調停が成立、申し立てから約1カ月で解決したことになり、双方が同制度の趣旨に沿った早期解決を評価している。
なお、06年4月の制度開始から3カ月の状況を、最高裁がまとめたが、それによると、06年6月末時点で、全国の50地裁への申立件数は278件だった。278件のうち、最も多かった地裁は東京で、85件で、大阪の27件、横浜の19件、名古屋の17件と続く。最も受理の多い東京地裁では、終局した事件の半分は1回で調停が成立した。一方で、青森や秋田、福井、大分など計9地裁は1件も申し立てがなく、「大都市集中」が顕著だ。最高裁行政局は「地方に弁護士が少なく、準備の大変な労働審判の引き受け手がいないのも一因」と分析している。
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司法制度改革法案のなかで労働者にとってとりわけ重要な労働審判法が、本日、参議院本会議において成立した。全労連は、労働審判法の成立を歓迎し、労使の紛争解決に迅速かつ実効ある機関として発展し、将来的には労働参審制度の実現に道が開かれることを期待するものである。 労働審判制度の概略は次のようなものである。 (1)労働審判廷は全国の地方裁判所に設けられる。 (2)審理は3回で解決する。 (3)労使の審判官と職業裁判官が合議で行う。(4)調停を原則とするが、成立しない場合は解決案を決する。(5)労働審判に不服ある場合は異議の申し立てができる。申し立てによって労働審判の効力は失効し、自動的に地方裁判所に訴えの提起があったとみなす。
労働審判制度を実効あるものにできるかどうかは、制度を担うにふさわしい専門知識、経験、識見ある「審判員」を選任できるかどうかにかかっており、選任のあり方は極めて重要な課題である。衆参両院の法務委員会の附帯決議でも「労働審判員の任命手続については、公正性と中立性を確保し、その研修については、必要かつ十分な措置を講じるよう努めること」とされている。 国会論議における最高裁の答弁や附帯決議の趣旨からして、労働者から選任される「労働審判員」は、労働組合組織の違いによる排除を行わないことを明確にする必要がある。全労連は、法律成立に先立ち、労働審判制度の運用規則を制定する最高裁判所へ前記趣旨の申し入れを行ったが、最高裁は「当事者に意見を聞くことが制度成功の鍵と考える」と述べ、審判員選任手続策定に関して公平、公正、透明性を担保することを明言している。 労働審判制度は2年後にスタートする。全労連は、この制度が労働者・労働組合の期待に十分こたえうる制度として定着するために、引き続き全力をつくすことを表明するものである。 |
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06年3月12日付「しんぶん赤旗」より引用