リクルート事件の概要

リクルート事件とは、

1988年(昭和63)6月の『朝日新聞』横浜支局のスクープ記事から発覚した戦後最大級の構造汚職疑惑で、問題の多い日本の株式市場のゆがみを利用して政・財・官界など特権階級の人々の金儲け主義(錬金術)が白日の下にさらされた。

事件の発端は、川崎市テクノピア地区へのリクルート社進出にからみ、同市助役へのリクルート社の子会社であるファーストファイナンス社の未公開株融資付き売買疑惑であったが、まもなく、リクルート・コスモス株の疑惑譲渡先として元閣僚を含む76人が発覚、さらには、コスモス社の松原社長室長から、この事件追及をすすめていた社会党(当時)楢崎弥之助議員に500万円の贈賄工作があったとの代議士自らの告発という事態に発展。この模様はテレビで放映され、世論は沸騰した。

88(昭和63)年10月東京地検特捜部は、リクルート社などを強制捜査、松原室長を贈賄容疑で逮捕。翌89(平成元)年2月にはリクルート社江副浩正前会長ら2名を贈賄容疑で、日本最大の企業NTT式場、長谷川の両元取締役を収賄容疑でそれぞれ逮捕、3月にはNTT会長真藤恒(ひさし)、元労働次官加藤孝、元労働省課長鹿野、前文部次官高石邦男らを各収賄容疑で逮捕、5月には第2次中曽根内閣の官房長宮であった藤波孝生(たかお)代議士と池田克也公明党代議士らを受託取賄容疑で在宅のまま取り調ベを行った。

疑惑が持たれた高級官僚や閣僚たちは、「妻が株をもらった。私は知らない。」とか「家族がもらった、秘書がもらった。」と釈明、当時「妻が、妻が…。秘書が、秘書が…」という言葉が小学生の間にまで流行した。

こうして事件は元閣僚、元代議士、事務次官2名、NTT元会長らをリクルートコスモス社未公開株収受による収賄容疑で起訴及び宮沢大蔵大臣辞任、竹下内閣崩壊というスケールに拡大。

特に、疑惑のコスモス株を秘書または家族名義を含めて9人の閣僚級政治家が密室の財テク的収受をしていた政府自民党幹部、中でも中曾根前内閣中枢に強い疑惑が集中した。当然、国会の証人喚問などでも追及されたが、多くの「灰色高官」たちの立件は行われないまま、事件は幕引きとなり、結局、戦後の他の大疑獄同様、核心の解明なしで終結、国民の間には、「政治不信」だけが残こることとなった。

 

リクルート事件経過表(肩書は当時)

83・12

藤波孝生被告が第2次中曽根内閣の官房長官に就任

84・ 1

日経連専務理事(当時)が就職協定無用論を打ち出す

    3

各省庁の人事担当者会議で就職協定順守を申し合わせ

86・ 9

リクルート側が藤波被告にリクルートコスモス株を譲渡

   10

コスモス株店頭公開

88・ 6

小松秀煕・川崎市助役への株譲渡が発覚

中曽根康弘前首相、竹下登首相、宮沢喜一蔵相ら側に株が譲渡されていたことが発覚

社会党楢崎弥之助代議士が、松原弘・リクルートコスモス社長室長からの贈賄申し込みを公表

   10

藤波被告へのコスモス株譲渡が発覚

   10

真藤恒・NTT会長、高石邦男・前文部事務次官ら側への 株譲渡が発覚

   12

宮沢蔵相が辞任

89・ 2

東京地検特捜部、リ社前会長江副浩正被告をNTT法違反(贈賄)容疑で逮捕

    2

鹿野茂・元労働省課長を逮捕

    3

真藤前会長逮捕

    3

加藤元次官、辰已雅朗・リクルート元社長室長を逮捕

    3

高石前次官逮捕

    4

竹下登氏が首相退陣表明

    4

竹下首相の元秘書、青木伊平氏が自殺

    5

特捜部、藤波被告と池田克也元衆院議員を受託収賄罪で在宅起訴

    5

東京地検、宮沢前蔵相の秘書ら4人を政治資金規正法違反で略式起訴

   12

東京地裁で政界ルート初公判。藤波、江副両被告が無罪を主張

94・ 9

藤波被告に無罪判決、検察側が控訴

   12

東京地裁で池田元議員に有罪判決⇒確定

96・ 6

東京高裁で藤波被告の控訴審初公判

97・ 3

藤波被告の控訴審で逆転有罪判決、被告側上告

99・10

最高裁が藤波被告側の上告を棄却⇒有罪確定

02・ 3

東京地裁での公判で、検察側は、「企業利益追求のため、わいろ提供を通して国政や公共的事業を私物化しようとし、国民の信頼を著しく失墜させた」と指摘し、「被告は贈賄の首謀者で事件の元凶。刑事責任は極めて重い」として元リ社会長江副浩正被告(65)に懲役4年を求刑した(3月29日

03・ 3

贈賄罪に問われたリクルート元会長の江副浩正被告(66)に対する判決が03年3月4日にあり、江副元会長の「一定の値上がりは予想したが、絶対に確実だとは認識していなかった」とし、わいろの趣旨は希薄だとの反論を退け、懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役4年)を言い渡した(確定)。 

 

リクルート関係の裁判状況

▼政界ルート

藤波孝生・元官房長官;1審・無罪⇒2審・懲役3年、執行猶予4年=上告棄却・有罪確定

池田克哉・元衆院議員;1審・懲役3年、執行猶予4年=確定

▼文部省ルート

高石邦男・元文部事務次官;1審・懲役2年、執行猶予3年⇒2審・懲役2年6月、執行猶予4年=上告中

▼労働省ルート

加藤孝・元労働事務次官;1審・懲役2年、執行猶予3年=確定

鹿野茂・元労働省課長 ;1審・懲役1年、執行猶予3年=確定

▼NTTルート

真藤恒・元NTT会長;1審・懲役2年、執行猶予3年=確定

長谷川寿彦・元取締役;1審・懲役2年、執行猶予3年=確定

式場英・元取締役(故人);1審・懲役1年6月、執行猶予3年=確定

小林宏・元ファーストファイナンス社長;1審・懲役1年、執行猶予2年(贈賄)=確定

▼リクルート社

江副浩正・元リクルート社会長⇒1審公判中(懲役4年を求刑−02年3月29日)

辰巳雅朗・元社長室長;1審・無罪⇒2審・懲役1年、執行猶予3年=上告中

小野敏広・元秘書室長; 1審・懲役2年、執行猶予3年=確定

      「リクルート事件にかかわる検察捜査の総費用は合計1億5000万円(人件費を除く)」(法務省根来刑事局長の参院法務委員会での発言)

      なお、リクルート事件と規模や内容面でしばしば比較される1976(昭和51)年に発覚したロッキード事件の場合は1億7000万円。

      費用面では、リクルート事件の方がロッキード事件を下回ったが、両事件発覚時の物価水準を考慮すると、2000万円の差は逆転し、さらに開くことになる。

      江副元会長の審理は、検察・弁護側双方で100人以上の証人が出廷し、詳細な証拠調べが行われたため裁判は1989年12月の初公判から13年3カ月に及び、公判回数は322回を数えた。

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リクルート事件最終報告

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