☆憲法の改正と国民投票法☆
☆ 日本の土台を60年間支えてきた日本国憲法。その改正手続きを定めた国民投票法が07年5月14日に与党の賛成多数で成立した(民主、共産、社民、国民新の野党4党は反対)。早ければ2011年にも、この国の“かたち”を決める憲法に、国民全体が真剣に向き合うべき時代に入った=⇒日本国憲法の改正手続に関する法律。
☆ 自民、公明両党は07年3月18日までに、憲法改正手続きを定める国民投票法案と国会法改正案の与党修正案をまとめた。(1)投票年齢を「20歳以上」から「原則18歳以上(当面は20歳)」に変更(2)両院に設置する「憲法審査会」での改憲案審議は公布後3年間は行わない−などが柱で、共同修正協議で民主党と合意した内容をほぼ取り込んだ。民主党と折り合わなかった国民投票の対象は、当初の与党案通り改憲案に限定するとした(07年03月18日配信『共同通信』)。
☆ 与党と民主党は06年5月26日午後、国民投票法案を衆院にそれぞれ提出=06年6月1日の衆院本会議で両案の趣旨説明と質疑を行った。1947年の現行憲法施行後、初めて国会で憲法改正に関連する法案が議論されることになる。与党案は、(1)投票権者は20歳以上(2)国民投票の対象は憲法改正に限定(3)投票用紙の記入方法は賛成「○」、反対「×」とし、白票は無効とする―などの内容。民主党案は、投票権を18歳以上に与え、国会の議決があれば16歳以上にも認める。改憲以外の国政の重要問題に関する国民投票も可能としている。白票については反対とみなす。
(日本国憲法改正)国民投票法案(自治省) / (憲法調査推進議員連盟=議連)憲法改正国民投票法案
自民、公明両党が04年11月30日合意した「憲法改正国民投票法案」骨格
国民投票法案に関する日本共産党の主張/9条改憲へのよこしまな策
自民、公明両党が06年5月19日の協議会で了承した「憲法改正手続き法案」大綱(要旨)
憲法は不磨の大典ではない。社会の変化や新しい時代の要求によって、改正の必要が生じる場合もある。
そこで、憲法の改正については「各議院の総議員の3分の2以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする」(第96条)という、特別の手続きを定めている(硬性〔こうせい〕憲法=改正の手続きを厳しく定めている憲法のこと)。
だが、その手続きによる場合でも、憲法の基本原理である国民主権主義、人権尊重主義、恒久平和主義を否定するような改正はできない。憲法の基本精神を変えてしまうような改正は、日本国憲法そのものを否定してしまうことになるからである。
日本国憲法は制定されて以来、憲法改正や憲法改正のための国民投票は一度も行われていないし、そのための具体的手続きを定めた国民投票法も制定されていない。実は、行政府は憲法制定から数年後に国民投票法の原案を作ったのであるが、政府が法案提出前の閣議決定を見送ったという経緯がある。投票法が頓挫したのは、当時の改憲勢力を国会で3分2以上をとれず、国民の間にも改憲のムードが起きなかったことから、府政が憲法改正の確固たる意思を固められなかったという事情があったためである。
だが、05年2月の衆院憲法調査会の最終討議において、自民、民主、公明の3党は、憲法改正の手続き法となる国民投票法案作りに着手することで合意した。改憲論議が盛んになり、国会の勢力から改憲が現実味を帯びてきたことを意味するものであるが、改憲のためには、国会は当面3つの段階を踏まなければならない。
第1段階は、国民投票法案を審議する常設委員会を設置であるが、これが、事実上使命を終えた憲法調査会の後継機関となる。第2段階は、国民投票法の制定である。第3段階が、改憲を国会が発議できるかどうかの関門となる憲法改正案本体を審議する常設委員会を設けるための国会法の改正である。
憲法改正の国民投票の方法については、現憲法は「特別の国民投票」と「国会の定める選挙の際行われる投票(国政選挙と同時に行うこと)」の2種類を規定しているが、現在のところ、そのどちらになるのか不明である。また、国民投票法案の中身をめぐっても、論争は尽きない。
すなわち、○×で記入するにしても、何もかも1回のオールオアナッシング(すべてか、さもなくば無か。全部か無か。「一括方式」)の投票形式なるのか、改正される各条文について個別に行われるのかも、不明である。自民党のように「前文」から全面的に書き換えるケースと、公明党のように書き足す場合では、国民への問いかけ方が違ってくる。現に、自民党内にも「1カ所の反対で案全体が否定されかねない」との声があり、意見は集約されていないが、9条の改正を狙う政府が、新しい権利を含めた、一括方法で行うことは容易に予想される(社民党が憲法改正問題をめぐる見解をまとめた「論点整理」最終案05年3月5日に明らかになったが、それによると、憲法改正手続きを定める国民投票法案については「全体を一括して投票に付すのではなく、条項ごとに賛否を問う発議・投票方式」にするよう提起している)。
さらに、投票における記載方法にも問題がある。有権者・投票者の意見を積極的に問うべきという観点から、憲法改正案に賛成のものは「賛成」と記載するか、○印を付けるという方法を採用すべきであるとの見解もあるが、最高裁判事の国民審査同様、有権者の意見を積極的に聞かない方法、例えば、憲法改正案に反対の者だけに×印を付けさせ、それ以外の投票はすべて賛成であるとみなす方法が採用されることも否定できない。
憲法が改憲の場合の選挙権者年齢を明文化していないところから、国民投票の有権者年齢をどこに設定するのかも大きな問題となる。一般の選挙権を満20歳の成人としたのは、徴兵に好都合だったからといわれているが、時代を担う若い世代の声を反映させるため、自治体が住民投票の投票年齢を引き下げる最近の流れや18歳以上が世界の大勢であるところから、国の基本法である憲法の改正の国民投票においては「18歳以上」とするための議論が必要となるからである。
また、国民投票における「その過半数」についても、基数をどこに置くか、つまり、有権者総数の過半数なのか、投票総数の過半数なのか、それとも有効投票総数の過半数なのかの争いもある(ただ、有効投票総数が多数説)。
したがって、国民投票に関する方法の場面が憲法改正の第一の攻防戦となる。
とはいえ、「本当の憲法(民主主義の基盤)は、投票制度にある」といわれるように、特に改憲の場面で、最も重要なのは国民一人一人の意思であるから、国民一人一人の意思が忠実に反映できる制度ではければならない。でなけば、国民投票を求める憲法の精神が骨抜きになる。
それにもまして、重要なことは改憲案の中身であり、それが国民に周知徹底されることである。そのためにはインターネットを含めたあらゆるメディアを使った事前のPRや主張・運動を、賛成側・反対側を問わず、何の制限を課さずに、完全に自由に行うことができる体制の確立が肝要とある。
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各国の改憲状況 1.アメリカ 憲法修正第5条==連邦議会の両院の3分の2又は全州の3分の2の州議会が発議して、4分の3の州が承認(州議会又は特別に選挙された各州に憲法会議による)が必要 2.ドイツ 憲法(基本法)第79条==連邦議会議員の3分の2及び連邦参議院の票決議の3分の2の同意が必要 3.フランス16章 憲法第89条==両院の議決と人民投票による承認(大統領が人民投票に替えて両院合同委員会に付託することを決定した場合には、その5分の3による議決)が必要 諸外国の憲法改正の実際(1940年代までの憲法を中心に) 各国の改正状況=03年3月に国立国会図書館が行った世界各国の憲法についての調査によれば,日本の憲法と同様,第2次大戦後に新たに憲法を制定したドイツは51回,イタリアは13回(調査対象となった71カ国中,一度も改正していない国は日本とデンマークだけ)。また,通常の法律よりも憲法改正の議決要件を厳しくしている国は,71カ国中,61カ国あり,ブラジルなど日本より緩い「5分の3」に設定した国もあれば,さらにモンゴルなど厳しい「4分の3」を必要としている国もある。なお,憲法改正に国民投票を義務付けているのは17カ国であるが,この中には,根幹にかかわらないような改正は国民投票を必要としない国もある。さらにカナダなどのように,いったん可決された後,さらに州ごとの承認も必要としている国もある。 1.アメリカ==1992年までに18回、27か条を修正・追補 2.ノルウエー==1995年までに139回、253か条の改正 3.オーストラリア==1988年までに8回改正 4.イタリア==2003年までに13回改正 5.ドイツ==2003年までに51回改正 6.フランス==1999年1月現在11回改正 参考文献 西修著『日本国憲法を考える』 |
自民、公明両党が04年11月30日合意した「憲法改正国民投票法案」骨格の要旨は以下の通り。
1.総則
@国民投票は発議日から起算し30日以後90日以内の内閣が決めた日に実施。内閣は投票日の20日前までに期日を官報で告示し、改憲案も掲載。
A投票権者は国政選挙権を有するもの。
B中央選管会が事務管理。
2.投票、開票
@改憲の賛否を表示する記号を自ら記載。
A投票用紙の様式、投票方式、効力など必要事項は発議の際に別の法律で定める。
3.投票の効果
@国民投票で賛成投票が、有効投票総数の2分の1を超えた場合は国民の承認があったとする。
A首相は2分の1を超えたとの通知を受けた時は、ただちに公布の手続きをとる。
4.訴訟
@投票や投票結果の効力に異議がある時は中央選挙管理会を被告として投票結果の告示日から起算して30日以内に東京高裁に提訴可。
A無効判決は確定まで投票効果に影響を及ぼさない。
5.再投票
@訴訟の結果、投票や投票結果が無効となった場合は再投票。
A再投票をせず投票結果を定めることができる時は、国民投票会を開き定める。
6.投票運動の規制
@国民投票の投票管理者や中央選挙管理会委員らは国民投票運動ができない。
A公務員らの地位利用による国民投票運動禁止。
B外国人の国民投票運動禁止。
C投票結果を予想する投票の経過、結果の公表禁止。
D新聞や雑誌の虚偽報道など禁止。
E新聞や雑誌の不法利用などの制限。
F放送事業者の虚偽報道などの禁止。
7.罰則
買収罪、投票の自由妨害罪、秘密侵害罪などの罰則を規定。
憲法改正国民投票法案の与党案と民主党および社民党案
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与党(自民・公明)案 |
民主党案 |
社民党 |
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メディア規制 |
虚偽報道の禁止、不法利用などの制限 |
報道の自由を保障 |
国民投票運動の自由の最大限尊重 |
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投票方法 |
憲案全体を対象にする「一括投票」か、条文ごとの「個別投票」かのいずれかを発議時に別の法律で定める |
改正される各条文について個別投票 |
改正される各条文について個別投票 |
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投票権者 |
20歳以上 |
18歳以上 |
義務教育終了年齢以降の者や定住外国人にも投票を認める |
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過半数の基準 |
有効投票総数の2分の1 |
投票総数の2分の1 |
全有権者の過半数か少なくとも総投票数の過半数 |
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周知期間 |
発議日から30日以後、90日以内 |
発議日から60日以後、180日以内 |
有権者が十分な情報を収集し、学び、考え、話し合う時間を十分にとる |
最近の動向
☆ 自民党は06年2月19日、憲法改正手続きを定める国民投票法案について、全条文を一括して改正案の賛否を問う「一括投票」ではなく、前文と各章ごとの「個別投票」を採用する方針を固めた。個別投票の場合、国民は「9条改正に反対」「環境権の盛り込みには賛成」というような選択が可能になる。自民党は一括投票を主張してきたが、今国会で成立を図るため、個別投票方式を求める公明党や民主党に譲歩することにした。
自民党は、国民投票法案には「個別的発議と個別投票の原則」と書き込む方針。ただ1条ごとに賛否を求めると、投票が煩雑になると判断。現行憲法を構成する前文と、「天皇」や「戦争放棄」など11の章ごとに分けて発議し、国民に賛否を問うことを想定している。
自民党は国民投票の有権者資格については、選挙権と同じ「20歳以上」にするつもりだったが、公、民両党が「18歳以上」を主張していることから、ここでも歩み寄りの姿勢を示すことにした。具体的には、公選法改正によって選挙権が18歳以上に拡大されたときには、これと連動して国民投票法も改正する旨の付則を法案に盛り込むことを検討している。
新聞・雑誌などの「メディア規制」については「原則自由」で公、民両党と一致しているが、自主規制を促すために、「公正中立を守る」といった罰則のない訓示規定を設けることを検討。放送は、スポット広告などを投票日の一定期間前から制限する方向だ(06年02月20日付『東京新聞』)。
☆ 06年2月22日参院憲法調査会は、05年11月にスイスとフランスで実施した国民投票制度に関する実情調査の報告と意見交換を行った。
冒頭、海外派遣議員団長を務めた関谷勝嗣会長(自民党)が、スイスとフランスの国民投票制度と運用状況、最近の憲法改正状況、欧州連合(EU)での欧州憲法条約の制定の経緯などについての調査内容の概要を報告、海外調査に参加した自民党の舛添要一議員は、フランスで国民投票運動を行う政党に上限で1億円程度の政党助成金を出していることに賛意を示し、「基本的に政党中心の運動をやったほうがいい」とのべ、日本共産党の吉川春子議員が、スイスとフランスなどでは国民投票制度が長い歴史としっかりと根付いた地方自治制度の上に存立していることを指摘、「日本の憲法改定を目的として国民投票法案を短期間で国会に付し結論を得るのは大変危険だ」とのべた。また、社民党の近藤正道議員は国民投票運動の規制について「政府が公平に賛否両論に機会を保障するにはどうしたらいいか議論すべきたくさんの問題がある」と語った(06年02月23日付『しんぶん赤旗』)。
☆ 「真っ当な国民投票のルールを作る会」主催の改憲手続きを定める国民投票法案についての公開討論会が06年2月26日、大阪市内で行われ、衆院の憲法調査特別委員会委員、学者、弁護士、ジャーナリストなどが参加した。
政権与党の自民党の船田元・議員(党憲法調査会長)は「憲法改正がもう目の前に来ている。その中で手続き法を整備する大きな責任がある」とし、「改憲に直結する大事な法案なので、民主党とも柔軟に議論して衆参各院の3分の2以上の賛成で成立するようにしたい」とのべ、公明党の斉藤鉄夫議員は「9条を最大の論点として加憲論議を進めているが、加憲の筋道を定めるべく早期に成立させたい」とのべた。
また、民主党の枝野幸男議員(党憲法調査会長)は「公正なルールをつくるためには改憲の中身と手続き法は切り離して議論を進めるべきだ。改憲内容の議論は詰められてきており、タイムリミットが近い」とのべ、投票法案の早期とりまとめを支持した。
これに対して、共産党の笠井氏は「自民党が『新憲法草案』で自衛軍の保持と9条2項削除を打ち出し、民主党も同様の方向で提言をまとめた。また米軍再編で基地強化が進んでいる。国民投票法案整備の動きは、9条改憲の条件づくりだ」と強調し、「そのような中で投票制度をつくること自体に反対」と表明、社民党の辻元清美議員も「急いで投票法案をつくる必要はまったくない」とのべた。
なお、討論では投票方式(個別か一括か)、キャンペーン活動やメディアへの規制、投票資格年齢など投票法案の内容についても議論がかわされた。
☆ 衆院憲法調査特別委員会は06年3月7日、理事懇談会を開き、自民、公明、民主の賛成と、中山太郎委員長(自民)の意向により自民党が提案していた改憲のための国民投票法制に関する論点整理の協議を始めることを決めた。日本共産党の笠井亮議員と社民党の代表は反対した。自民党、公明党、民主党は国民投票法案を3党共同で提案することを目指しており、論点整理は、そのために意見の相違のある論点について議論し、法案作成に向けた意見のすりあわせのためのものであるが、特別委員会の理事(懇談)会で議論することになったのは、民主党が「論点協議は公式の場で」と主張したためである。
この日の理事懇談会で、自民党の船田元理事は「論点整理を入り口に、互いに議論するなかで境界線はなく、法案につながっていく」と発言。民主党の枝野幸男理事は「できるだけ広く、早く粛々と論点を整理し、合意形成すべきだ」とのべた。公明党の斉藤鉄夫理事は「今週中に衆院法制局がたたき台をまとめる」よう求めまた。また、3月9日に特別委員会を開き、自民党と民主党の代表が国民投票法案について意見表明を行い、これに対する質疑及び各党の意見表明を行うことになった(06年03月03日付『しんぶん赤旗)。
☆ 自民、公明両党は06年3月14日、国対委員長会談を開き、改憲手続きを定める国民投票法案の今国会会期内での成立を目指す方針を確認するとともに、民主党との調整を進めるために幹事長レベルの会談を提案することで合意した。しかし、民主党は「現場で物事を進めてきた枠組みを壊す」と難色を示しめしたため、当面は衆院憲法調査特別委員会での論点整理の協議を優先させることになり、自民党の船田元理事(同党憲法調査会長)は06年4月上旬にも法案提出したい考えを示した(06年03月15日付『しんぶん赤旗』)。
☆ 与党と民主党は06年5月26日午後、国民投票法案を衆院にそれぞれ提出。6月1日の衆院本会議で両案の趣旨説明と質疑を行い、審議入りする見通しだ。1947年の現行憲法施行後、初めて国会で憲法改正に関連する法案が議論されることになる。与党案は、(1)投票権者は20歳以上(2)国民投票の対象は憲法改正に限定(3)投票用紙の記入方法は賛成「○」、反対「×」とし、白票は無効とする―などの内容。民主党案は、投票権を18歳以上に与え、国会の議決があれば16歳以上にも認める。改憲以外の国政の重要問題に関する国民投票も可能としている。白票については反対とみなす。
国民投票法案に関する日本共産党の主張/9条改憲へのよこしまな策動(06年03月08日付『しんぶん赤旗』)
衆院憲法調査特別委員会は、改憲のための国民投票法案の国会提出に向け、同委理事懇談会で協議を始めることを決めました(日本共産党と社民党は反対)。戦争を放棄し、戦力の保持と交戦権を否定してきた憲法9条を改定し、日本を「海外で戦争する国」に変える道への新たな踏み出しであり容認できません。
「ルール」ですまない
自公民3党は、いま開かれている通常国会への国民投票法案共同提出に向け、水面下の交渉を続けてきました。同理事懇談会での協議は、国民投票法案提出への動きを加速するものです。
憲法の改定は衆参両院で3分の2以上の賛成で発議された後、国民投票で決められます。国民投票のやり方を定める国民投票法の制定はあくまでも改憲が前提です。
自民党が05年11月に発表した「新憲法草案」で自衛軍の保持などを打ち出し、前原誠司民主党代表も12月の米国での講演で「集団的自衛権行使」をのべるなど、改憲案の具体化がすすむにつれ、改憲勢力の狙いが憲法九条改悪にあることはいよいよ明らかになっています。
国民投票法案を国会に提出しようとするのは、9条改憲と一体の、よこしまな動機があるからです。
先月、大阪市内で開かれた公開討論会で、改憲勢力の代表は「憲法改正がもう目の前にきている。その中で手続き法を整備する大きな責任がある」(船田元・自民党憲法調査会長)、「改憲内容の議論は詰められてきており、タイムリミットは近い」(枝野幸男民主党憲法調査会長)、「9条を最大の論点として加憲論議をすすめているが、その筋道を定めるべく早期に成立させたい」(斉藤鉄夫公明党衆院議員)と、国民投票法案は「9条改憲」のためのものであることをあけすけに語っています。
改憲勢力は、その動機を隠そうと、「憲法改正の手続きと憲法改正の内容を切り離して議論すべきだ」として、中立・公正な投票ルールをつくるだけであるかのように装っています。そのために「憲法96条が憲法改正手続きを定めているのに憲法改正国民投票法を整備してこなかったのは『立法の不作為』だ」という議論まで持ち出しています。
「立法不作為」は、国家賠償請求訴訟で、ある法律ができていないために国民の権利が侵害されていることなどにかかわって生じる問題で、まったく話がちがいます。憲法公布から60年間、国民投票法案がないために国民が不都合を感じるということは一度もありませんでした。世論調査でも、「戦後の日本の平和維持や国民生活の向上に今の憲法が果たした役割」について、8割が「役立った」と回答(「毎日」5日付)したように、国民は憲法を高く評価しています。
1953年には当時の自治庁が、改憲策動の高まりのなかで国民投票法案を準備したものの国民の反対で閣議決定できず、国会提出にいたりませんでした。その後も改憲策動はくりかえされましたが、国民投票法案は提出されていません。国民が改憲の必要性を認めなかったからです。
9条守れの運動広げ
国民世論の多数は、「九条改憲」に反対です。「戦争をする国」をめざす9条改憲は、国民の平和の願いとは決定的に矛盾しています。
「9条の会」をはじめ、憲法を守りぬこうという国民的共同が広がっています。「憲法九条守れ」の声と運動をさらに広げ、改憲勢力のたくらみを打ち破ることが重要です。
☆社民党の国民投票に関する基本的考え☆
国民投票制度のあり方について
憲法第96条は、主権者たる国民の憲法制定権の行使を保障するものであり、国民投票法を制定するとする場合は、多くの国民の意思を正確に反映できるものとして行なわれなくてはならない。そのためには、最低でも以下の要件を満たすことが必要である。
1.投票の方式:多くの投票者の意思を正確に投票結果に反映されるようにするため、全体を一括して投票に付すのではなく、個別の条項ごとに賛否の意思を表示できる提案方法及び投票方法とすべきである。
2.運動の自由:公職選挙法の規定を横滑りさせるのではなく、国民投票運動の自由が最大限尊重されるよう、戸別訪問や集会の開催、文書の配布、情報媒体を使ってのPR等については、原則自由とするべきである。例えば、公務員や教育者の運動の制限など、広範な禁止制限規定を設けるべきではない。
3.表現の自由:国民投票にあたっては、何よりも投票者に出来る限りの情報提供がなされなくてはならない。そのためには言論・表現の自由が最大限尊重されるべきであり、マスコミに関する規制を定めるべきではない。
4.有権者の範囲:通常の選挙における投票権者に加えて、義務教育終了年齢以降の者や定住外国人にも投票を認めるなど、有権者の範囲をできるだけ拡大することを検討するべきである。また通常の選挙では認められていない重度身体障害者の在宅投票・代理投票を認める、在外国民の投票を容易にするなどの配慮が必要だ。
5.十分な告知期間:国民投票の前に、憲法教育をあらためて徹底することが必要であり、国会発議から投票実施まで、有権者が十分な情報を収集し、学び、考え、話し合う時間をとるべきである。
6.過半数の判定:国の最高法規たる憲法の改正というきわめて重要な問題を問うのであるから、賛成票の数え方については有効投票数の過半数ではなく、全有権者の過半数か少なくとも総投票数の過半数を超えたかどうかで決すべきである。
7.投票率の下限:憲法改正案の承認についての意思が十分かつ正確に反映されたものとなるよう、投票率が一定割合に達しない場合には無効とするなど、その扱いを定めるべきである。
しかし、現在、与党が検討している国民投票法案は、国民主権の視点がまったく重視されておらず、発議・投票の方法が明確でなく、マスコミ報道や評論に過剰な規制を設けようとするなど、見過ごすことのできない問題点が存在しており、これらの要件をまったく満たしてはいない。
とくに投票方式について、一括して賛否を問う形態にするのか、「改正」条項ごとに賛否を問う方式にするのかは、改憲発議の際に決めるということになっているが、このような重要な点について曖昧にするべきではない。
さらに国民投票運動について広範な禁止規定が定められており、運用次第で過度の規制となるおそれが強い。とりわけ新聞、雑誌、テレビ等のマスコミ報道及び評論に対する制限は表現の自由を侵すものであり問題である。
憲法改正の手続法については、それ自体憲法の保障する諸原理に則っていなければならないが、与党が検討している法案では、国民の自由な議論は阻害され、真に民意を反映する投票は実施できない。しかも改憲ムードをあおり改憲のための法的基盤に格好をつけるためだけに、拙速に成立させようとしていることを許すわけにはいかない。
いずれにせよ、国民投票については議論すべき課題が多く、内容面の十分な精査が必要である。主権者が自ら責任を負った判断と権利を行使するためにも、国会のなかだけの議論で拙速に進めることは許されず、国民的にじっくりと腰を据えて議論を行なっていく必要があるのである。
☆憲法改正の手続き(予想図)☆

日本ペンクラブ(井上ひさし会長)は05年3月15日、与党が今国会にも提出予定の「憲法改正国民投票法案」について、白紙撤回するように求める声明を出した。以下の声明によると、同法案は政策選択のための法律にもかかわらず、人を選択する現在の公選法を基準にして、新聞、雑誌、テレビなどの虚偽・歪曲(わいきょく)報道や、予測投票の公表の禁止などを定めており、憲法を議論するに際して、最大限保障されるべき表現の自由の規制にあたる、などとしている。
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憲法改正国民投票法案の白紙撤回を求める日本ペンクラブ声明 憲法改正論議にあわせ、改正のための「国民投票法案」が早ければ今国会に上程されようとしている。そしてこの法案では、「国民投票に関し憲法改正に対し賛成または反対の投票をさせる目的をもってする運動」を「国民投票運動」と規定し、これを厳しく規制する条文が予定されている。 具体的には、(1)新聞・雑誌・テレビ等の虚偽・歪曲報道の禁止、(2)予測投票の公表禁止、(3)新聞・雑誌の不法利用等の制限、を定める。立法担当者は、現在ある公職選挙法の規定と同じであると説明しているが、実際の運用では、自己の見解の発表や、世論調査・予測報道や意見広告の規制など、曖昧な文言によって過度に広汎な規制が及ぶ危険性を否定できない。 その問題点を整理すると、まず第1に、現在の公選法自体が世界に類をみないほどの厳しい表現規制を強いている法律であって、これを基準に善し悪しを論ずること自体が問題である。第2に、公選法は人を選択する場合の手続きを定めるのに対し、投票法は政策選択のための法律であって比較の対象にならない。そして第3に、国のもっとも基本的な姿勢を定める憲法を議論するに際しては、最大限、表現の自由を保障すべきであって、それを規制することがそもそも大きな誤りである。 さらに投票法は、(4)教育者の投票運動の禁止、(5)外国人の投票運動の禁止を規定している。要するに、教育者や外国人は憲法改正問題について口出しをするなということであるが、ここに至っては、露骨な批判封じ込め策そのものである。 日本ペンクラブは、現在明らかにされている投票法案から、ここに示したような表現規制によって非民主的かつ理不尽な憲法改正作業を進めようとの意図を読みとらざるを得ない。これらは明らかに日本国憲法で保障され発展してきた表現の自由の意味を理解しないものである。表現者の団体である日本ペンクラブは、与党が同法案の即時白紙撤回することを求める。 2005年3月15日 社団法人 日本ペンクラブ 会長 井上ひさし |
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自民、公明両党が06年5月19日の協議会で了承した「憲法改正手続き法案」大綱(要旨) 【趣旨】 憲法96条に定める憲法改正についての国民投票に関する手続きを定め、発議に係る手続きを整備する。 【実施手続き】 ▽投票期日 国会の憲法改正発議から60日以後、180日以内の、国会の議決した日。 ▽投票権 日本国民で20歳以上の人。 ▽登録 市町村選挙管理委員会は投票権を有し、投票日50日前に住民基本台帳に記録されている人を、投票人名簿に登録しなければならない。 ▽投票 憲法改正案ごとに1人1票。 ▽投票用紙 発議に係る改正議案ごとに調製。 ▽投票方式 賛成の時は「○」を記載し、反対の時は「×」を記載。 ▽国民の承認 賛成の投票数が有効投票総数の過半数の場合に承認とする。最低投票率制度は導入せず。(承認を得られなかった場合、国会は総選挙か通常選挙が行われるまで、同一の改正案を発議できないことを委員会審議などで確認する) 【運動規制】 ▽適用上の注意 規制と罰則規定の適用に当たっては表現の自由、学問の自由、政治活動の自由など日本国憲法の保障する国民の自由と権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。 ▽投票事務関係者などの運動禁止 投票事務関係者のほか、裁判官、警察官らも在職中、投票運動をすることができない。 ▽公務員・教育者の地位利用による運動の禁止。 ▽広告放送の制限 何人も投票日1週間前からテレビやラジオを使用し、投票運動のための広告放送をしたり、させることができない。違反に対する罰則は設けず。 【罰則】 ▽買収罪 改正案に賛成、反対の投票をするよう勧誘し、その投票の報酬として金銭や、影響を与えるに足る物品や供応接待を申し込んだり、約束した者は、3年以下の懲役か禁固、または50万円以下の罰金に処す。 ▽運動規制違反の罪 公務員・教育者の地位利用禁止違反などに必要な罰則規定を置く。 【国会法改正】 ▽憲法改正案の発議 (1)議員提案の場合には衆院では100人以上、参院では50人以上の議員の賛成が必要。(憲法審査会で採択された請願は、同会提出の改正案として提出するよう運用することを検討する)(2)改正案発議では、関連事項ごとに区分して行うよう努めなければならない。 ▽憲法審査会 (1)憲法や関連基本法制について広範、総合的に調査を行い、憲法改正案などを審査するため、各院に常設機関として設置(2)憲法改正案を提出できる(3)両院で開く合同審査会は各院審査会に勧告ができる。 【付則】 ▽施行期日 公布日の2年後から施行。ただし国会法改正は、公布後初めて召集される国会の召集日から施行する。 |
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