
検察審査会の様子をリアルに描いた佐野洋著のミステリー『検察審査会の午後』がある。
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検察審査会は戦後60年余にわたって続いており、刑事司法への市民参加としては裁判員制度の「先輩格」。地裁や地裁支部を拠点として全国に165の審査会がある。くじで選ばれた市民11人が半年の任期で検察官が不起訴処分とした事件を審査。不起訴が妥当なら「不起訴相当」、起訴しなかったことが不適当ならば「不起訴不当」か「起訴相当」と議決する。ただ、議決に法的な拘束力はなかった。近年は年間2000件以上を扱い、「起訴相当」は多くて十数件程度。それらは、検察官が再捜査をした結果、不起訴が維持されるケースが少なくなかった。 その検査審査会法が2004年5月に改正され、「起訴相当」の議決が出た場合、検察官はその事件を再捜査し、3カ月以内に起訴するかどうかを判断しなければならない。起訴しなかった場合は再び審査会が審査。改めて11人中8人以上が賛成で「起訴すべき」と議決されれば、裁判所から指定された弁護士が検察官に代わって起訴することができる。 09年5月21日、裁判員制度発足と同時に施行された。 実は戦後の検察審査会の制度設計に関しては激しくもめた経緯がある。すなわち、GHQ(連合国軍総司令部)は、起訴権限を持つ大陪審や検事公選制の導入を求めたが、日本は強く抵抗し、市民決定に拘束力を持たせない独特の制度を急いでつくったのである。歴史は長いが、際だつのは市民感覚とのズレだ。たとえば2004年7月に発覚、政界を揺るがした日本歯科医師連盟から自由民主党所属の国会議員に対する「闇(やみ)献金」事件(日歯連闇献金事件)で、審査会は一部政審査会治家の起訴猶予を不当としたが、当局が無視したのはその格好の例である。 |
検察審査会とは?
選挙権を有する国民の中から くじで選ばれた11 人の検察審査員が,一般の国民を代表して,検察官が被疑者(犯人と目される者)を裁判にかけなかったこと(不起訴処分)のよしあしを審査するのを主な仕事とするところです。

98年は,検察審査会法施行50周年
検察制度民主化のために,1948(昭和23)年7月12日に検察審査会法が公布,施行されてから,98年でちょうど50周年を迎えた。この間に検察審査員又は補充員(検察審査員に欠員ができたときなどに,これに代わって検察審査員の仕事をする人)として選ばれた人は45万人にもなり,多くの人たちが国民の代表として活躍している。
また,これまでに全国の検察審査会が審査をした事件は13万件に上り,その中には,造船疑獄事件,近江絹糸事件,サリドマイド薬禍事件,水俣病事件,甲山事件,羽田沖日航機墜落事件,日航ジャンボジェット機墜落事件,日本共産党国際部長宅電話盗聴事件,薬害エイズ事件といった社会の注目を集めた事件もある。ちなみに95年は,全国で1,249件の申し立てがあり,「不起訴不当」「起訴相当」の議決は59件あった。
検察審査会が審査した結論に基づいて,検察官が再検討の結果起訴した事件は,50年間で1,051件を数え,その中には,懲役10年,懲役8年などといった重い刑に処せられたものもある⇒⇒起訴した事件の92%は一審で有罪の判決が出ている⇒⇒少なくとも起訴された事件に関しては,検察官の当初の判断より法律の素人である委員の判断の方が正しかったわけである。
審査はどういうときに?
犯罪の被害にあった人や犯罪を告訴・告発した人から,検察官の不起訴処分を不服として検察審査会に申立てがあったときに審査を始める。また,検察審査会は,被害者などからの申し立てがなくても,検察官が不起訴にした事件を職権で取り上げて審査することもある(30条)。
最近の審査申し立て例⇒中華航空機事件−−1994年名古屋空港で中華航空機が墜落し乗客ら264人が死亡した事故で,事故遺族会(山本昇会長)は99年5月17日,業務上過失致死傷などの容疑で書類送検されていた中華航空関係者4人を不起訴処分にした名古屋地検の処分は不当として,名古屋第二検察審査会に審査を申し立てた。
申立人は,事故で重傷を負った被害者2人と,愛知,岐阜,長野などに住む計200人以上の被害者遺族。各地の遺族会ごとに希望者の申立書をとりまとめ,事故遺族会が一括して申し立てる形となった。申立書で被害者,遺族側は,中華航空関係者は名古屋空港での事故以前に同様のトラブルがあったことを知らされていたのに,乗務員に的確な訓練や指導をする注意義務を怠った,と主張。「事故のすべての責任は中華航空とエアバス社が負うべきで,送検の対象とされた中華航空の運航責任者4人について『規定に従った訓練,審査がされており,刑事責任を課するほどの落ち度があるとはいえない』として不起訴処分としたのは明らかに不当」と訴えている。

検察審査会は,検察審査員(任期は6カ月)11人全員が出席した上で,検察審査会議を開く。そこでは,検察庁から取り寄せた事件の記録を調べたり,証人を呼んで事情を聞くなどし,検察官の不起訴処分のよしあしを一般国民の視点で審査する。また,検察審査会議は非公開で行われ,それぞれの検察審査員が自由な雰囲気の中で活発に意見を出し合うことができるようになっている。

審査の結果は?
検察審査会で審査をした結果,更に詳しく捜査すべきである(不起訴不当=過半数が「不起訴は納得できない」と判断すれば「不起訴不当」)とか,起訴をすべきである(起訴相当=8人以上なら「起訴相当」)という議決があった場合には,検察官は,この議決を参考にして事件を再検討する(41条=議決に拘束力はない)。その結果,起訴をするのが相当であるとの結論に達したときは,起訴の手続がとられる。
なお検察審査会法は、「議決があった時は、同一事件について更に審査の申し立てをすることはできない」と定めていますが、静岡の事件で、審査会が「検察が再捜査して不起訴にした事件は、当初の事件とは別とみなされる」と判断し、3度目の捜査で起訴された例がある。
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静岡市で02年12月、トラック運転手が会社員男性(当時33)をひいて死亡させた事故をめぐっては、業務上過失致死の罪に問われた運転手について、男性の妻が道交法違反罪(ひき逃げ)での起訴を求めて静岡検察審査会に申し立てた。「不起訴不当」の議決が出たが、静岡地検はひき逃げを再び不起訴に。 遺族が03年6月、2度目の審査を申し立てたところ、同審査会は「検察が再捜査をして不起訴にした事件は、当初の事件とは別とみなされる」として受理し、「起訴相当」を議決。同地検は3度目の捜査でひき逃げを起訴事実に追加し、運転手は有罪判決を受けた(05年2月23日付『朝日新聞』−「大阪本社版」)。 なお、これに関して、01年7月兵庫県明石市の花火大会で、11人が死亡し、247人がけがをした歩道橋事故をめぐり、業務上過失致死傷容疑で書類送検されながら不起訴となった当時の明石署長(62)と副署長(58)の処分について、審査会の審査では「起訴相当」の議決をしたが、神戸地検が再捜査の結果、再び「不起訴」にしたことで、05年2月、犠牲者の遺族らが2度目の審査を神戸検察審査会に申し立てた。
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審査の申立てや相談の費用は?
審査の申立てや相談には,一切費用がかからない。
検察審査会が最初に注目された事案
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「夫殺し」の汚名を着せられながら、初の死後再審で無罪となった「徳島ラジオ商殺し事件」で、1、2審有罪の決め手となった2人の少年の証言がうそであることを見破って検察の見込み捜査を批判し、再審への道を切り開いたのが構成する徳島検察審査会であった。この事件を素材に、検察審査員たちの活躍を描いた戯曲に篠倉満作『起訴相当−2人は偽証している』(信山社)がある。 |
最近の不起訴不当決議例
東京第2検察審査会--99年4月13日--内縁の夫の長女=当時(3つ)を暴行して死亡させたとして傷害致死容疑で逮捕された女性(29)を,東京地検が不起訴とした処分について⇒議決書によりますと,女性は97年6月30日午前11時ごろ東京都足立区の自宅で長女の顔を殴ったり,浴槽に押さえ込むなどの暴行を加えました。長女は2日後に死亡し,警視庁西新井署は女性を傷害致死の疑いで逮捕しました。しかし東京地検は,女性の暴行と死因との因果関係は「認定できない」などとして98年3月に女性を不起訴処分としため,実母が「幼児虐待」として不起訴不当申立てていました。
北海道検察審査会--99年4月22日--北海道庁の公金不正支出問題に絡み札幌地検が98年12月に起訴を見送ったことに対し,札幌検察審査会は99年4月22日までに,詐欺などで告発された2件の空出張について「不起訴不当」と議決しました。議決には「納税者の怒りに検察は鈍感だ」などと,厳しい批判が盛り込まれています。道庁不正では,函館と釧路地検が出した不起訴処分について,地元の検察審査会がそれぞれ「不起訴相当」と議決しており,不当と判断されたのは今回がはじめてです。議決を受けて札幌地検は23日,事実関係の洗い直しなど再捜査を進める方針を明らかにしました。
東京第1検察審査会―96年10月の衆院選に出馬した野村沙知代さん(67)が「米国留学」など虚偽の経歴を記載した名刺を配ったなどとして公職選挙法違反(虚偽事項の公表)容疑で告発された問題で、東京第1検察審査会は99年10月13日までに、「留学の用語の多義性を考慮しても、今回の留学は一般常識から見れば虚偽と判断すべきだ」と指摘。さらに、この留学を記載した名刺を応援弁士に配布したことについて、「捜査を尽くせば、さらに複数の人に配った事実も確認できた可能性があった」とし「一般常識から見れば、(野村さんの公表した経歴は)虚偽にあたる」と結論、東京地検の不起訴処分(嫌疑不十分)は不当だとする議決をしました。議決を受けて
斉田国太郎・東京地検次席検事は「不起訴不当とされた部分につき、しかるべき捜査を実施する」と語りました。
栃木検察審査会―茨城県総和町で1997年4月、小学4年生の男児が乗用車にはねられて死亡した交通事故をめぐり、捜査をした茨城県警古河署が、運転していた栃木県内の男性(26)を業務上過失致死容疑などで書類送検したが宇都宮地検栃木支部は97年8月、「事故の主な原因は男児の飛び出し」として、同容疑について不起訴処分にした問題で、栃木検察審査会の不起訴不当の議決を受けて、再捜査していた宇都宮地検栃木支部は11月18日、「起訴に十分な証拠は見当たらない」などとして、改めて不起訴処分を決めた。
なおこの事故をめぐり、両親が男性らを相手取った損害賠償請求訴訟では、水戸地裁下妻支部が5月、「前方不注視が事故原因」と認定、男性側に損害賠償を命じる判決を下した。男性側は控訴したが、東京高裁で9月、男性側が約3300万円を支払うことなどで和解が成立している。
検察審査会のある場所は?
検察審査会は全国に201か所あり,地方裁判所と主な地方裁判所支部の中にあります。
詳しくお知りになりたい方は,最寄りの検察審査会(松山検察審査会089-941-4151)にお問い合わせる。なお,検察審査会では,広報用ビデオの貸出しもしている。
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検察審査会の審査員に、大阪府内に住む重度の聴覚障害者の女性が選ばれる(02年2月) 「目や耳、言語に重い障害をもつ人は審査員になれない」とする検察審査会法の欠格条項が、一連の差別法撤廃運動の成果として00年4月に削除された結果、選挙人名簿をもとに3回の抽選を経て、生後6カ月の時、薬の副作用などで聴覚と音声機能に障害が残り、現在1級の障害者手帳を持ち、普段は手話や筆談などでコミュニケーションを取っている重度の視聴覚障害者である大阪府南部のパート勤務の女性(44)が選ばれた。02年4月20日現在審査会には2度出席しており、手話通訳で他の審査員との意思疎通も問題はない。 なお女性は、「最初は無理だと思ったが、自分の世界を広げようと思って決断した。半年間の任期いっぱい頑張りたい」と話している。 |
参考文献
検察審査会五〇年史
最高裁判所事務総局刑事局/監修
法曹会 (1998.5)
検察審査会制度に関する世論調査 [世論調査報告書]
内閣総理大臣官房広報室 (1968.1)
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