児童買春・ポルノ禁止法

  「児童買春、児童ポルノの行為処罰・児童保護法」(児童買春禁止法)が、99年5月18日の衆院本会議で可決された。18歳未満の子どもたちの人権を守る理念にのっとって、国際的には日本人の破廉恥な行為に対する海外からの批判に対応したものであり、国内的には、女子高生らの間に広がりが指摘される援助交際の取り締まりに道を開くものである⇒施行99年11月1日
 いうまでもなく法律名にある「買春」のキーワードが示す通り、子どもたちの性を金で買うのを禁じるのが主眼の法律である。また、1957年に施行された売春防止法では、買った側が罰せられず、そのためにザル法といわれたことに対する考慮(反省)が含まれている。
 周知のように近年、日本に対する日本人に破廉恥行為に是正するための適切な対応を求める外圧も強い。たとえば、96年8月にスウェーデンで開いた「子どもの商業的搾取に反対する世界会議」は、日本の野放し状態を重大問題として取り上げ、特に2点を厳しく指弾した。
 まず、アジア諸国で日本人旅行者などによる児童買春が横行していることだ(日本は「買春者の送り出し国」−−97年中に海外で児童買春で逮捕された日本人は5人だけだが、それは氷山の一角にすぎない)。典型的な「旅の恥はかき捨て」を増長させる現状の改善を迫ったものだが、その汚名 の早急は返上が必要である。
 一方、インターネットにはんらんする児童ポルノ画像も、実は、日本から発信されるものが多い、との指摘である。つまり、児童ポ ルノの一大供給地が日本であることを、名指しで糾弾したのだ。画像は世界中に流れるだけに、外国が神経をとがらせるのは当然である。
 2点とも日本人の人権意識の希薄さが非難の的になったことを私たちは肝に銘じたい。欧米では、児童ポルノは児童への重大な人権侵害だとして、厳しく法規制を講じている。
 国連人口基金の調査でも、毎年200万人もの子どもが性産業に送り込まれ、低年齢化も進むなど、深刻な事態が報告された。
 

児童買春の刑罰も決して軽くはない。3年以下の懲役か100万円以下の罰金である。児童ポルノのビデオや写真を製造・販売・輸出入すれば3年以下の懲役か300万円以下の罰金が科せられる。
 
刑法の強制わいせつ罪などは被害者からの告訴が必要だが、児童買春禁止法は訴えがなくても警察が摘発できる
 

さらに実効性を高めるために
 
▽児童買春周旋(しゅうせん−−中にたって取り持ちをすること)罪・児童買春勧誘罪=3年以下の懲役か300万円以下の罰金(業=ぎょう=仕事)として行えば5年以下の懲役か500万円以下の罰金)
 ▽児童買春目的人身売買罪=1年以上10年以下の懲役
 ▽児童買春目的国外移送罪=2年以上の有期懲役
 ▽同時に、被害児童の名前、学校名などの報道の禁止

―が設けられている。(なお、同法が施行されると都道府県条例にある同様の行為を罰する「行(いんこう)処罰規定」は効力を失う)
 

いずれも、日本国民が海外で犯した場合にも適用する。
 これによりアジア各国などで児童買春をした日本人観光客や、中高生と「援助交際」した人は、はじめて罰せられることとなる
 「遅きに失した」感はぬぐえないが、これで法制上日本のようやく国際的な基準に追い付いた、といえる。
 1549年、日本に初めてキリスト教を伝えた宣教師フランシス コ・ザビエルは、「日本人は新たに発見された諸国民の中で、最も高級な民であろう」と、故国スペインへ絶賛の手紙を送っている。 よく学び、志操(しそう−堅く守っている主義)の高い国民として好感もった。
 以来450年、96年の世界会議で日本は「最も破廉恥な国民」と位置付けられたのも同然である。
 児童買春禁止法の理念をくみ取るとともに、子どもの人権侵害行為を容認しない社会の構築が現代の日本の急務の課題である。
1999年5月17日『愛媛新聞』「社説」参照)

 

買春禁止法ポイント  

 【目的】
児童買春、児童ポルノに関する行為を処罰し、これらの行為で心身に悪影響を受けた児童の権利を守る。
 
【定義】
児童とは18歳未満。
児童買春とは、児童や保護者に金銭などの対償を与えて性交もしくは性交類似行為をすること。
児童ポルノは児童の性交または性交類似行為を写真やビデオなどに描写したもの。

児童買春で初の摘発 私立中教諭が15歳の少女を買春 ――神奈川県警少年課と戸部署は99年11月15日までに、テレホンクラブで知り合った15歳の少女を相手に買春したとして99年11月1日に施行された児童買春・児童ポルノ禁止法違反(児童買春)の疑いで(警察庁によると同法の児童買春での摘発は全国で初めて)、川崎市内の私立中学教諭の容疑者(37)を逮捕し、自宅の家宅捜索で買春相手の写真数枚を押収した。

神奈川県警少年課と南署は、00年11月7日、「タイの女子高校生たちをモデルにしたわいせつなビデオテープを現地で撮影・製造し、日本で販売した」として、児童ポルノ禁止法』違反の疑いでビデオ業者(ビデオ・出版制作販売会社「コネクション」社長ほか2人)を逮捕。同法違反の疑いで、国外での事件に適用されるのは初めて。

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児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律

第1条(目的) 

この法律は、児童に対する性的搾取及び性的虐待が児童の権利を著しく侵害することの重大性にかんがみ、児童買春、児童ポルノに係る行為等を処罰するとともに、これらの行為等により心身に有害な影響を受けた児童の保護のための措置等を定めることにより、児童の権利の擁護 に資することを目的とする。
 
 
第2条(定義)

@ この法律において「児童」とは、18歳に満たない者をいう。

 A この法律において「児童買春」とは、次の各号に掲げる者に対し、対償を供与し、又はその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交若しくは性交類似行為をし、又は自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首をいう。以下同じ。)を触り、若しくは児童に自己の性器等を触らせることをいう。以下同じ。)をすることをいう。

 1 児童
 2 児童に対する性交等の周旋をした者
 3 児童の保護者(親権を行う者、後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)又は児童をその支配下に置いている者

 B この法律において「児童ポルノ」とは、写真、ビデオテープその他の物であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。

  1 児童を相手方とする又は児童による性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により描写したもの
  2 他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態で     あって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの
 3 衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により描写したもの
 
 
第3条(適用上の注意)

 この法律の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。
 
 
第4条(児童買春)

 児童買春をした者は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。
 
 
第5条(児童買春周旋)

@ 児童買春の周旋をした者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。

 A 児童買春の周旋をすることを業とした者は、5年以下の懲役及び500万円以下の罰金に処する。
 
 
第6条(児童買春勧誘)

@ 児童買春の周旋をする目的で、人に児童買春をするように勧誘した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。

A 前項の目的で、人に児童買春をするように勧誘することを業とした者は、5年以下の懲役及び500万円以下の罰金に処する。
 
 
第7条(児童ポルノ頒布等)

@ 児童ポルノを頒布し、販売し、業として貸与し、又は公然と陳列した者は、3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処する。

A 前項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを製造し、所持し、運搬し、本邦に輸入し、又は本邦から輸出した者も、同項と同様とする。

 B 第1項に掲げる行為の目的で、児童ポルノを外国に輸入し、又は外国から輸出した日本国民も、同項と同様とする。
 

第8条(児童買春等目的人身売買等)

@ 児童を児童買春における性交等の相手方とさせ又は第2条第3項第1号、第2号若しくは第3号の児童の姿態を描写して児童ポルノを製造する目的で、当該児童を売買した者は、1年以上10年以下の懲役に処する。

 A 前項の目的で、外国に居住する児童で略取され、誘拐され、又は売買されたものをその居住国外に移送した日本国民は、2年以上の有期懲役に処する。

B 前2項の罪の未遂は、罰する。
 

第9条(児童の年齢の知情)

 児童を使用する者は、児童の年齢を知らないことを理由として、第5条から前条までの規定による処罰を免れることができない。ただし、過失がないときは、この限りでない。
 

第10条(国民の国外犯)

 第4条から第6条まで、第7条第1項及び第2項並びに第8条第1項及び第3項(同条第1 項に係る部分に限る。)の罪は、刑法(明治40年法律第45号)第3条の例に従う。
 

第11条(両罰規定)

 法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、第5条から第7条までの罪を犯したときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して各本条の罰金刑を科する。
 

第12条(捜査及び公判における配慮等)

@ 第4条から第8条までの罪に係る事件の捜査及び公判に職務上関係のある者(次項において「職務関係者」という。)は、その職務を行うに当たり、児童の人権及び特性に配慮するとともに、その名誉及び尊厳を害しないよう注意しなければならない。

A 国及び地方公共団体は、職務関係者に対し、児童の人権、特性等に関する理解を深めるための訓練及び啓発を行うよう努めるものとする。
 

第13条(記事等の掲載等の禁止)

 第4条から第8条までの罪に係る事件に係る児童については、その氏名、年齢、職業、就学する学校の名称、住居、容貌等により当該児童が当該事件に係る者であることを推知することができるような記事若しくは写真又は放送番組を、新聞紙その他の出版物に掲載し、又は放送してはならない。
 

第14条(教育、啓発及び調査研究)

@ 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの頒布等の行為が児童の心身の成長に重大な影響を与えるものであることにかんがみ、これらの行為を未然に防止することができるよう、児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発に努めるものとする。

A 国及び地方公共団体は、児童買春、児童ポルノの頒布等の行為の防止に資する調査研究の推進に努めるものとする。
 

第15条(心身に有害な影響を受けた児童の保護)

@ 関係行政機関は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童に対し、相互に連携を図りつつ、その心身の状況、その置かれている環境等に応じ、当該児童がその受けた影響から身体的及び心理的に回復し、個人の尊厳を保って成長することができるよう、相談、指導、一時保護、施設への入所その他の必要な保護のための措置を適切に講ずるものとする。

 A 関係行政機関は、前項の措置を講ずる場合において、同項の児童の保護のため必要があると認めるときは、その保護者に対し、相談、指導その他の措置を講ずるものとする。
 

第16条(心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制の整備) 

国及び地方公共団体は、児童買春の相手方となったこと、児童ポルノに描写されたこと等により心身に有害な影響を受けた児童について専門的知識に基づく保護を適切に行うことができるよう、これらの児童の保護に関する調査研究の推進、これらの児童の保護を行う者の資質の向上、これらの児童が緊急に保護を必要とする場合における関係機関の連携協力体制の強化、これらの児童の保護を行う民間の団体との連携協力体制の整備等必要な体制の整備に努めるものとする。
 

第17条(国際協力の推進) 

国は、第4条から第8条までの罪に係る行為の防止及び事件の適正かつ迅速な捜査のため、国際的な緊密な連携の確保、国際的な調査研究の推進その他の国際協力の推進に努めるものとする。
 

   附 則

 
第1条(施行期日)

 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
   
第2条(条例との関係)

@ 地方公共団体の条例の規定で、この法律で規制する行為を処罰する旨を定めているものの当該行為に係る部分については、この法律の施行と同時に、その効力を失うものとする。
 A 前項の規定により条例の規定がその効力を失う場合において、当該地方公共団体が条例で別段の定めをしないときは、その失効前にした違反行為の処罰については、その失効後も、なお従前の例による。
 

 (風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の一部改正)
第3条 風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和23年法律第122号)の一部を次のように改正する。

 第4条第1項第2号中「第2章に規定する罪」の下に「、児童買春、児童ポルノに係る行為等  の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11年法律第52号)に規定する罪」を加える。
 第30条第1項、第31条の5及び第31条の6第2項第2号中「若しくは売春防止法第2章に規定する罪」を「、売春防止法第2章に規定する罪若しくは児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律に規定する罪」に改める。

 第35条中「又は第175条の罪」を「若しくは第175条の罪又は児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律第7条の罪」に改める。
 

 (旅館業法の一部改正)
第4条 旅館業法(昭和23年法律第138号)の一部を次のように改正する。

 第8条中「基く」を「基づく」に、「第3条第1項」を「同条第1項」に改め、同条に次の1号を加える。

  4 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平成11年
法律第52号)に規定する罪
 

 (暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の一部改正)
第5条 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成3年法律第77号)の一部を次のように改正する。

  別表第31号の次に次の1号を加える。
 31の2 児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律(平        成11年法律第52号)に規定する罪
 

 (検討)
第6条 児童買春及び児童ポルノの規制その他の児童を性的搾取及び性的虐待から守るための制度については、この法律の施行後3年を目途として、この法律の施行状況、児童の権利の擁護に関する国際的動向等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとする。

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関連リンク
子どもの権利条約に基づく第1回日本政府報告に関する日本弁護士連合会の報告書
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