国際人権規約に対するわが国の取り組みに関する質問主意書と答弁書

 

 

2006(平成18)年6月15日提出

質問第373号

 

国際人権規約に対するわが国の取り組みに関する質問主意書

 

提出者  高井美穂(民主党・無所属クラブ)

 

 

2006(平成18)年6月22日受領

答弁第373号
  内閣衆質164第373号

  平成18年6月22日

内閣総理大臣 小泉純一郎

       衆議院議長 河野洋平 殿

衆議院議員高井美穂君提出国際人権規約に対するわが国の取り組みに関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

 わが国が1979年に批准した「国際人権規約」のうち、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(いわゆるA規約)については、「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会」に対し「第3回報告」を06年6月30日までに提出し、その報告の中に、「勧告を実施するためにとった手段についての、詳細な情報を含めること」を要請されている。

 

 そこで、以下のとおり質問する。

衆議院議員高井美穂君提出国際人権規約に対するわが国の取り組みに関する質問に対する答弁書

一 国際人権規約A規約およびB規約のうち、わが国が現在留保している条項はいくつあるのか。また、それぞれの条項を留保している理由を簡略に説明願いたい。

一 について

 1 経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(昭和54年条約第6号。以下「社会権規約」という。)に関して、我が国が留保を付している規定及びその主な理由は、次のとおりである。

 (1)「公の休日についての報酬」について(社会権規約第7条(d))

  我が国では、現実に労働しない国民の祝日についても賃金を支払う賃金体系を採っている企業の割合が少なく、また、国民の祝日に賃金を支払うという社会的合意がないこと等から、国民の祝日について報酬を支払うか否かについては労使間の合意にゆだねることが適当と考えられるため、社会権規約第7条(d)の規定の適用に当たり、「公の休日についての報酬」に拘束されない権利を留保している。

  (2)同盟罷業をする権利について(社会権規約第8条1(d))

  社会権規約第8条は、いわゆる労働基本権について規定したものであり、同条1(d)においては同盟罷業をする権利を定めているが、争議行為の禁止に関し、同条1(d)と我が国の関係法令の定めるところが必ずしも合致しないこと等から、同条1(d)の規定に拘束されない権利を留保している。ただし、社会権規約の批准の時に我が国の法令により同条1(d)の規定にいう権利が与えられている部門については、この限りでない。

  (3)中等教育及び高等教育の漸進的無償化について(社会権規約第13条2(b)及び(c))

  後期中等教育及び高等教育に係る経費について、負担の公平や無償化のための財源をどのように賄うのか等の観点から、これらの教育を受ける学生等に対して適正な負担を求めるという方針を採っていること、また、高等教育においては、私立学校の占める割合が大きいため、私立学校を含めて無償化の方針を採ることが困難であることから、我が国は、社会権規約第13条2(b)及び(c)の規定の適用に当たり、「特に、無償教育の漸進的な導入により」に拘束されない権利を留保している。

 

2 市民的及び政治的権利に関する国際規約(昭和54年条約第7号)に関して、我が国が留保を付している規定はない。

二 「経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会」の最終見解「E・提言及び勧告」では、31項目にわたり、わが国政府に対して勧告、要求などが出されている。政府のこの間5年の取り組みと、現状をそれぞれ簡略に示されたい。

二 について

御指摘の最終見解に対する我が国の取組及び現状については、膨大な調査及び検討等を要することから、すべての勧告及び要求等に対して網羅的にお答えすることは困難であるが、例えば、次の勧告及び要求に対する我が国の取組及び現状は、次のとおりである。

1 第34段落について

後期中等教育及び高等教育に係る機会均等の実現については、経済的な理由により修学困難な生徒及び学生に対する奨学金制度等を通じて推進しており、例えば、我が国における高等教育機関への進学率は、先進国の中でも高い水準である76・2パーセント(平成17年度)に達している。

2 第38段落及び第39段落について

平成9年3月25日、人権擁護施策推進法(平成8年法律第120号)の施行に伴い、法務省に人権擁護推進審議会が設置され、平成13年5月25日、「人権救済制度の在り方について」の答申がなされた。
  同審議会の答申を最大限尊重し、提言された新たな人権救済制度を確立するために、人権擁護法案を平成14年3月に国会に提出したが、平成15年10月に廃案となったところ、人権擁護法案をできるだけ早期に再提出できるよう検討を行っている。

3 第42段落及び第44段落について

男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号)に基づく「男女共同参画基本計画」(平成12年12月12日閣議決定)に則して、雇用等の分野における男女の均等な機会と待遇の確保等の施策を総合的かつ計画的に推進してきたところである。昨年末には、「男女共同参画基本計画(第2次)」(平成17年12月27日閣議決定)を策定し、現在、この計画に基づく取組を進めている。
 4 第51段落について
  平成16年の年金制度改正において、離婚した場合に婚姻期間についての厚生年金の分割を受けることができる仕組みを平成19年度から導入するなど、「年金制度に存続する事実上の男女不平等」に関連した措置を講じたところである。

5 第55段落について

阪神・淡路大震災の被災者に対しては、阪神・淡路大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律(平成7年法律第16号)等に基づき、金利、償還期間等の優遇を行う災害復興住宅融資等を実施している。

三 06年6月9日の衆議院文部科学委員会で、政府は報告の提出が期限に間に合わず「遅れざるを得ない」と答弁している。5年間の期間がありながら、その取り組み結果の成否はともかくとして、国際的な約束事である報告期限が守れない理由を具体的に明らかにされたい。また、期限を守れないことについて、政府としてどう考え、国連等に対して説明するのか示されたい。

三 について

御指摘の報告については、本年6月30日までに提出するよう要請されていることは承知しているが、当該報告については、関係する府省庁が多岐にわたり、また、作業も膨大なものであることから、作成に時間を要している。

政府としては、一層の努力を傾注して、当該報告の早期提出に努めてまいりたい。

四 A規約13条の高等教育無償化についても政府は留保しており、回答を求められている。一方で、今国会に政府が提出した「教育基本法案」には高等教育無償化は盛り込まれていない。同条項について、規約に基づき国連に報告する前に高等教育無償化を否定する法案を国会に提出することは、国際的な信義に反するとともに、同条項と「教育基本法案」の整合性について法案提出時に説明をしなかったことは国会軽視とも言えると考えるが、政府の見解を示されたい。

 右質問する。

四 について

御指摘の「A規約第13条の高等教育無償化」については、一についてで述べたとおり、我が国として拘束されない権利を留保しているところである。

 

 

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