-判決のページ(04年1月〜)

 

最近の判決03年1月〜7月03年8月〜12月99年12月〜02年12月)⇒最近の無罪判決

 

 

 

☆ 神戸地裁;「捜査怠慢で死亡」認定、県に賠償命令 神戸の院生殺害(04年12月22日)==高裁判決

 

02年3月神戸市西区で、神戸商船大(現・神戸大)の大学院生(当時27)が元暴力団組長らに車で拉致され、集団暴行を受けて殺害された事件で、兵庫県警が適切な捜査を怠ったとして、院生の母親(64)が県と元組長らに約1億3700万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

判決は、「@警察の初動対応について、110番通報の内容などから、事件の危険性を認識できたのに、現場から約60メートルの交番で仮眠中の警察官を現場に行かせず、6キロ離れた交番から派遣したAパトカーは途中までサイレンを鳴らさず、本来なら約9分で到着すべき距離に約17分かかったB現場での対応についても、職務質問が不十分だったC友人から院生が連れ去られた可能性があると聞きながら、現場から立ち去ったと判断したことは『合理的だったとは到底いえない』」として上で、「D警察官らの権限不行使は『組織としての対応のまずさを如実に物語り、著しく不合理で、違法だと解せざるを得ない」と言及、「E警察官の捜査権限の不行使を『捜査の怠慢』」とみなして違法性を認定、捜査を怠ったことと院生の死亡に因果関係を認定、また、「F警察が適切に対応していれば、院生を発見し、保護することが可能だった」と指摘、『G通報内容や現場の状況から、院生が元暴力団員に連れ去られることでさらなる暴行を受け、死亡することも十分予見できた』として、権限の不行使院生の死亡に因果関係を認め、『H被害が生じた理由について『市民の生命身体を守るべき警察官の対応が不適切で、救いを求める被害者に救護の手が及ばなかったことが大きな要因』』と判断、元暴力団組長らと同等の賠償責任が県にもあるとした。た。県などに約9700万円の支払いを命じた。

なお、警察が捜査の適切な権限を行使しなかったことを問われた埼玉県桶川市の女子大生殺人事件訴訟や、兵庫県太子町ストーカー事件訴訟では、慰謝料を認められたが、殺人との因果関係は認定されなかった。これが認定されたのは今回が初めて。

 

 大阪地裁堺支部; 障害者の転倒、裁判所の過失として105万円の支払い命令(04年12月22日

 

大阪府堺市の大阪地裁堺支部03年4月、正面玄関の階段で、点字ブロックやスロープなどがなかったことから、帰る際に太陽のまぶしさに目がくらみ、玄関前の3段ある階段を踏み外して、野球のスライディングのように後方に転倒し、右ひじを強く打って骨折、完治までに約1年かかった視力障害者(網膜色素変性症で色の識別がしにくく、両目の視野も狭い。視力は0・05前後しかなく、2級の身体障害者に認定されている)の男性(56)が、「障害者にとって危険な状態だった」「点字ブロックやスロープ、視力障害者の注意を促すアナウンスなど、どれか一つでもあれば事故を避けることができた」と主張、150万円の国家賠償を求めた訴訟の判決があった。

  判決は、(十分なバリアフリー設備がなかったことは認めたうえでの)国側の「なかったからといって安全性を欠くことにはならない」「特に障害者の利用頻度が高い施設ではなく、申し出があれば、職員が介添えをする態勢を整えていた」階段の安全性に問題はなく、事故は男性の不注意が原因だった」との反論を退け、「原告が階段を的確に認識できなかったのは、階段の手前に点字ブロックなどがなかったため」と認め、国側に、105万円の支払いを命じた。

 堺支部は54年に建てられた古い施設で当時、点字ブロックは階段の前で途切れており、階段の踏面(ふみつら)に滑り止めもなかったことから、裁判長は裁判長は04年8月、「(1)裁判所玄関は公衆の通路で、視力障害者の通行も少なくない(2)大阪府福祉のまちづくり条例設計マニュアルにも、公共性の高い施設の階段手前には注意喚起用の点字ブロックを設けるよう求めている」と指摘、施設の管理に落ち度があったとして100万円の慰謝料を払うよう提案したが、国は拒否していた。

なお、堺支部は04年春、庁舎内のすべての来庁者用通路の階段に点字ブロックを設けたほか、手すりを延長するなどの施設改善を実施したが、これに関して同支部は「欠陥を認めたわけではなく、より安全に裁判所を利用していただくための行政上の配慮」と説明した。

 

 大阪地裁;株主代表訴訟でダスキン元社長に5億3千万賠償命令(04年12月22日)

 

 大手清掃用品レンタル業「ダスキン」(大阪府吹田市)が運営する「ミスタードーナツ」が無認可の食品添加物入りの「肉まん」を販売した食品衛生法違反事件に絡み、株主(61)が、当時の経営陣に対し、事件による損害約106億円を同社に賠償するよう求めた株主代表訴訟で、被告13人のうち11人を対象とする判決があった。

 判決は、00年11月、菅野元本部長は無認可の酸化防止剤が混入していることを取引業者から聞き、同12月に芝原元専務に報告したが、2人は販売を継続した。また、当時専務だった上田武・元社長は別の業者から混入の事実を聞いており、当時社長だった千葉元会長に報告していれば回収措置がとれたかもしれないとして注意義務違反を認定し、「混入の事実を知ったのに、社長への報告を怠った」として上田元社長の責任を認定、5億2955万円を賠償するよう命じたが、千葉元会長ら10人に対する請求は退けた。

 なお、肉まんの販売に直接かかわった芝原修一・元専務と菅野誠介・元事業本部長の判決は来年2月9日にある。

 

 東京地裁;平沢議員が敗訴 新潮社の記事巡る損害賠償訴訟(04年12月22日)

 

 平沢勝栄衆院議員が、ジャーナリスト上杉隆氏が執筆した「パチンコ業者から平沢勝栄代議士に渡った『4000万円』」の見出しの03年11月27日号『週刊新潮』の記事で名誉を傷つけられたとして、発行元の新潮社などに1億円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟の判決があった。

判決は、現金の授受について「真実とは証明されていない」としたが、「うわさを集めて書かれた記事ではなく、平沢議員やパチンコ業者をよく知っている人から取材している」と指摘した上で、「取材の経過に照らせば、新潮社側が記載されている事実を真実であると信じたことには相当の理由がある」として請求を棄却した。

なお、平沢議員は即日、控訴した。

 

 広島地裁;新潮社に賠償命令 中川元官房長官の名誉棄損訴訟(04年12月21日)  

 

 自民党国対委員長で広島4区選出の中川秀直衆院議員(60)元官房長官が官房長官在任中の00年10月、同月末に発売された」写真週刊誌「フォーカス」(現在休刊中)に掲載された知人女性に関して、中川氏の運転手(当時)が同氏の自宅で撮影した女性の写真を、中川氏本人が撮影したかのように掲載し、中川氏が寝室において女性と2人で過ごしたような印象を与え名誉を傷つけたとして、発行元の新潮社などに慰謝料1千万円の支払いと謝罪広告掲載を求めた訴訟の判決があった。

判決は、裁判長は中川氏側の主張を認め、新潮社などに計80万円の支払いを命じた。

 なお、同社の編集長を名誉棄損容疑で東京地検特捜部に告訴したが、嫌疑不十分で不起訴処分になった。

 

 大阪地裁;「妻が運転」確定の事故、民事で「夫が運転」と認定(04年12月20日)

 

 02年12月、大阪市内で赤信号の交差点に進入し、別の乗用車と衝突、相手の2人は10日〜1週間のけがをし、近くの店舗が破損した事件で、夫が、妻(23)が運転して交通事故を起こしたとして保険金を請求したが、損保は店舗の修理費用は立て替えたが、「事実と異なる報告があった場合は免責される」と、支払いを拒否された大阪市内の夫婦が、損害保険会社を相手に、保険金請求権の確認などを求めた訴訟の判決があった。

 判決は、損保の調査で事故相手の同乗者が「運転していたのは夫」と説明したことを根拠に「夫は当時、飲酒しており、妻に身代わりを頼む動機があった」と結論付けた上で、「夫(23)が飲酒運転を隠すため、妻に身代わりを頼んだ」として、刑事事件の結論を覆して請求を棄却、逆に事故で破損した店舗の修理費用の返還を求めた損保の請求を認め、夫に225万円の支払いを命じた。

 なお、警察は、事故相手の運転者の供述などから、妻が運転していたと判断、妻は03年5月、大阪簡裁で罰金30万円の略式命令を受けて納付していた。

 

 熊本地裁;アルコール中毒死亡請求棄却(04年12月17日)=判決要旨

 

99年6月、熊本大医学部の漕艇(そうてい)部新入生歓迎コンパで、1年の学生(当時20)が大量の酒を飲んだ後に死亡したのは上級生ら責任として、損害賠償を請求した事件の判決があった。

判決は、原告側の「アルコール中毒が死因で、放置すれば死亡するとの認識が上級生らにあった」などの主張をいずれも退け、「チアノーゼ(血液中に酸素が減少し、二酸化炭素が増加したため、皮膚や粘膜が青紫色を帯びること。唇・爪・四肢の先などで目立つ。呼吸困難や心臓の障害で起こる。青色症。紫藍症)もみられず、血糖値の異常低値や死亡時に高体温だったなど急性アルコール中毒症と矛盾する状態があり、吉田さんが重度の急性アルコール中毒に陥り、呼吸中枢まひで死亡したとは認めがたい」「学生の死が急性アルコール中毒などによるものと認められないことから、早飲み競争など被告らの行為と吉田さんの死亡との間に、相当の因果関係を認めがたい」として、全面的に請求を退けた。

 

☆ 東京地裁八王子支部反戦ビラ訴訟、3被告に無罪(04年12月16日)==⇒判決要旨高裁判決最高裁判決 

 

 04年1月17日午前11時から正午ごろ、自衛隊のイラク派遣反対を自衛官やその家族に訴える「自衛隊のイラク派兵反対! いっしょに考え、反対の声をあげよう!」などと書かれていたビラを防衛庁官舎の新聞受けに入れたとして、2月27日に警視庁に逮捕、住居侵入の罪に問われ、75日間拘置後に保釈された市民団体の3被告に対する判決があった。

判決は、3人が無断で官舎に立ち入ったことについて、「住民らの意思に反しており、住居侵入罪を構成する要件にあたる」と判断、「たとえ要件を満たしても、動機や行為の態様、被害の程度などを考えたときに、違法性が低く犯罪が成立しない場合もある」としたうえで、「住民のプライバシー侵害の程度は低く、ビラ入れが憲法21条で保障された政治的表現活動の一つとして民主主義社会の根幹をなすことを考えれば、「(1)自衛隊のイラク派遣に関する見解を伝えるという動機は政治的意見の表明として正当(2)ビラ配りが月1回、30分程度の滞在で、階段や踊り場までの立ち入りだった点などから訪問販売や勧誘行為などと比べ、居住者が被る迷惑は少なく、居住者の生活にほとんど実害をもたらさない(3)住民の被害感情を考えても被害の程度は低い」ことなどから、刑事罰に値するほどの違法性はない」と述べ、また、「内容、表現とも過激ではなく、1つの政治的意見。憲法21条の保障する政治的表現活動であり、商業宣伝ビラよりも優先的地位にある」と認定、さらに、「ビラ入れは政治的表現の一つで、商業的宣伝ビラの配布に比べて優越的な地位にある。それなのに、正式な抗議や警告といった事前連絡もせず、また商業ビラが放置されているのに、いきなり検挙し、刑事責任を問うのは憲法の趣旨から疑問だ」と批判全員に無罪判決(求刑はいずれも懲役6カ月)を言い渡した。

 弁護側は「政治的思想の抑制が目的で、公訴権の乱用にあたる」と主張したが、この点については「少なからぬ居住者が他の商業宣伝ビラに対するものとは異なる不快感を抱いており、こうした感情に着目すれば検察官の訴追裁量権の逸脱とまではいえない」と退けた。

 なお、国際人権擁護団体「アムネスティ・インターナショナル治権力による人権侵害から守るための民間の国際的人権擁護団体で、「良心の囚人」の釈放、死刑・拷問の廃止、難民の保護などを目的として1961年に創立され、国際事務局はロンドンにある。1970年に日本支部が創設された。AI)」が、3人に対して思想信条を理由に拘禁された日本初の「良心の囚人自分の信念や信仰、人種・言語・性などを理由に囚【とら】われている、非暴力の人々」に認定した。また、公判を通じ、この捜査を担ったのは刑事部ではなく公安部に所属する警察官だったことと、自衛隊官舎の被害届は警察の求めに応じて作られたものだった事実が明らかにされことから、「でっち上げ捜査」の側面もあらわになった。

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 東京地裁;ヤクルト元副社長に67億円賠償命令 デリバティブ損失(04年12月16日)

 

 乳酸菌飲料最大手のヤクルト(本社・東京都港区)が投機性の高い金融派生商品(デリバティブ)取引などで巨額の損失を出したことをめぐり、ヤクルトの販売会社6社と個人株主3人らが、取引を担当していた熊谷直樹・元副社長ら当時の役員など11人を相手に、計約1057億円をヤクルト本社に支払うよう求めた株主代表訴訟の判決があった。

判決は、「(1)デリバティブ取引に取締役会の承認は必要ないし、(2)取引も社の目的の範囲内の行為であったとした上で、問題とされた93年から98年までの取引のうち、97年2月以降の取引について「制約事項に実質的に(同社のリスク管理体制下での制約に)反した独自の判断で行った取引があり、取締役としての注意義務に違反した」と指摘し、元副社長の取引で生じたと認定できる67億543万円の支払いを命じた。他の役員等の責任は否定した。

 ヤクルトは98年3月、デリバティブ取引の失敗などで1057億円の損失を出したと発表した後、桑原潤会長(故人)と、国税庁キャリアOBで資産運用を任されていた当時の熊谷副社長が引責辞任していた。

 また、熊谷元副社長がデリバティブ取引やプリンストン債の購入をめぐって業務上横領や商法の特別背任の罪などに問われ、東京高裁で03年8月、懲役7年、罰金6000万円の判決が確定している。

 最近の株主代表訴訟で最も賠償額が高いとされるのは、大和銀行ニューヨーク支店での不正取引をめぐる訴訟の大阪地裁判決(00年)の同行経営陣らに命じた約830億円。

なお、02年の改正商法の施行で株主代表訴訟での取締役の賠償責任が軽減され、現在は報酬の6〜2年分が上限となっている

 

 札幌高裁;石炭じん肺訴訟で70人和解、9人は勝訴(04年12月15日)

 

北海道内の炭鉱で働きじん肺になった患者79人(63人が死亡)が国に総額約27億円の損害賠償を求めた訴訟の和解協議があり、慰謝料など総額は約5億円で70人が和解、引き続き、国が和解を拒否した患者9人の控訴審判決があった。

判決は、「国が鉱山保安法に基づき、じん肺発生防止対策など保安規制の権限を直ちに行使しなかったのは著しく合理性を欠き、違法」と指摘した上で、損害の発生から20年で賠償請求の権利が消滅する民法の除斥期間の起算点については、「最終の行政上の決定がされた日か、じん肺を原因とする死亡の日とすべきだ」と患者側の主張を認め、和解案に沿って国に約8200万円の支払いを命じた。

 

 名古屋地裁;犬の飼い主に賠償命令 マンション階下の住人睡眠不足に(04年12月15日)

 

 会社の社宅である名古屋市中村区のマンション2階に居住していた夫婦が、02年6月ごろ、3階の住人が管理規約に反してバセットハウンド犬1頭を飼い、その犬の鳴き声がうるさくて睡眠不足になり、夜は別に借りた部屋で寝るようになったとして、階上住人に犬の飼育禁止と損害賠償約260万円を求めた訴訟の判決があった。

 判決は、飼育が不法行為であることは認めたものの、「男性の部屋の所有権や占有権が侵害されたとは言えない」などとして退けた上で、寝るために別の部屋を借りたことも犬を飼ったことと因果関係があるとして、男性の精神的苦痛への慰謝料は40万円が相当と判断、引っ越し費用などを含めて102万円を支払を命じた。

なお、階上の住人は弁論期日に出廷せず、答弁書なども提出しなかった。当事者が口頭弁論において相手方の主張した事実を争うことを明らかにしない場合には、民事訴訟法159条1項で相手方の主張を認めたこととなるが、これを自白の擬制という。

 

 東京高裁;国に賠償求めた元慰安婦女性の控訴棄却(04年12月15日)

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 第2次世界大戦中に旧日本軍の従軍ヤ安婦として暴行されたとして、劉面換さん(77)ら中国人女性4人が、1人当たり2300万円の損害賠償などを国に求めた訴訟の控訴審判決がであった。

 判決は、「損害賠償を請求できる期間が経過している」と述べ、請求を棄却した1審・東京地裁判決を支持し、女性の控訴を棄却した。

 

 最高裁第2小法廷;火災の故意・重過失、「立証責任は保険会社に」(04年12月13日)==判決文 

 

 99年12月に店舗兼住宅に火災保険をかけ約48万円の保険料を支払い、5日後に火事にあった大阪市の女性が、セゾン自動車火災保険(東京都豊島区)に火災保険金5000万円の支払いを求めた訴訟の上告審判決があった。消防署は出火場所を部屋の灰皿付近、出火原因は「不明」としたが、保険会社は「火災は故意または重過失によって起きた」として保険金の支払を拒否していた。

判決は、「(1)火事による損害は大きく、速やかに補う必要性から火災保険がある(2)火災で財産を失った契約者が火災の原因を証明することは困難」等を指摘した上で、契約者は火災発生が偶然であることまで立証しなくてもよい」、つまり、故意・重過失について「立証責任は保険会社にある」とする初判断を示し、全額支払いを命じた1、2審判決を支持して同社側の上告を棄却した。

なお、火災保険では通常、金目当ての放火などを防ぐため、契約者側に故意や重大な過失がある場合は保険金を支払わなくてよいとする契約が結ばれる。立証責任がどちらにあるかについては下級審の判断が分かれていた。

 

 最高裁第3小法廷;いじめ自殺、最高裁が両親の上告棄却 予見可能性を否定(04年11月30日)

 

 96年、福岡県城島町立城島中3年の生徒(当時15)が、中1の時から同級生に暴行を受け、現金を脅し取られていたことなどと記された遺書を残して96年1月、自宅近くで首をつって自殺し、両親が県と町に約9400万円の損害賠償を求めた訴訟の決定があった。

内容は、両親の上告を受理しない決定。これで、悪質ないじめがあった事実を認定したうえで、「学校側が相談に真剣に取り組むなど適切に対応していれば、いじめの兆候は把握可能だった」と指摘したが、両親が力点を置いた自殺の予見可能性については「生徒が自殺をするとうかがわせる事情は認められない」と否定し、学校が生徒の安全への配慮を怠ったとして県と町に計1000万円の支払いを命じた1、2審判決が確定した。

 なお、福岡県警は同級生2人を恐喝容疑で書類送検し、家裁は2人を保護観察処分にした。

 

 最高裁第3小法廷;「浮島丸」沈没の戦後訴訟、損賠求めた原告の敗訴確定(04年11月30日)

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 敗戦直後の1945年8月24日、朝鮮人の徴用工らを帰還させるため、青森・大湊から朝鮮人などを乗せて航行中の旧海軍の輸送船「浮島丸」が、京都府の舞鶴湾で機雷に触れ爆発、沈没し、乗船していた朝鮮人約4000人の乗船者のうち、朝鮮人524人と日本人船員25人が死亡した(日本政府発表)とされる事件を巡り、韓国在住の生存者と遺族計80人が国に損害賠償などを求めた「浮島丸訴訟」の上告審の決定があった。

 決定は、「原告側の上告理由は単なる法令違反の主張か、立法府の裁量を論難するもので認められない」と述べ、法廷を開かれないまま、これを棄却した。これで、「朝鮮人を早急に朝鮮に帰還させるという軍事上の措置であり、機雷に触れる危険を伴う航海を実行したとしてもやむを得ない」と述べた上で、「国家無答責」の法理から一審判決を取り消し、原告の請求を全面的に退けた、原告側逆転敗訴の2審・大阪高裁判決が確定した。

これまでの同種訴訟判決において、「戦争損害は憲法の予想しないもので、単に政策的見地から(救済を)配慮するかどうかが考えられるに過ぎない」との判例が蓄積されており、今回の決定もこの流れにそったもので、最高裁の基本的な姿勢に変更がないことを強く認識させる結果となった。

 1審・京都地裁判決は2001年8月、乗船していた朝鮮人と国との間には「旅客運送契約に類似した関係」が成立していたとして、国の安全配慮義務違反を認め、原告のうち生存者15人について1人当たり300万円の賠償を命じた。

 なお、「戦後補償」を巡る裁判の第1審で、国に賠償が命じられたのは5件であるが、うち、浮島丸訴訟を含め2件で原告側敗訴が確定。他の3件は控訴審が続いている。

 

 大阪地裁;求刑上回る懲役18年 実子2人に性的虐待の男に判決(04年11月30日)

 

 98年ごろから未成年の実の娘の長女に性的関係を強要、01年からは包丁で脅すなどして次女にも性的虐待を繰り返し、さらに04年春に2人が保護されていた児童相談所に包丁を持って現れ、玄関のガラスを割って侵入したとして強姦(ごうかん)と建造物侵入などの罪に問われた大阪府東大阪市の男(48)に対する判決があった。

判決は、「検察官の求刑は尊重すべきだが、求刑は、強姦罪の量刑相場を参考にしたと思われる。だが、実子2人への長期の犯行は前例がなく、これ以上の悪質な事件は想定できず、刑の相場は存在しない」と指摘した上で、「最も信頼すべき父親から究極の性的虐待を受け、2人の屈辱感、悲しみ、無力感は筆舌に尽くしがたい」「長女は次女への暴行をやめさせる代わりに暴力を一時1人で受けたばかりか、継続的な犯行に抵抗する気力も失い、心的外傷後ストレス障害(PTSD)になるなど、娘たちの成長をかえりみない極めて悪質な犯行で、15年の求刑は軽すぎる」として、複数の強姦罪を併合加重した場合の最高刑である懲役20年に近い、求刑を3年上回る同18年が相当と判断した。

 娘たち2人は、母親が病気のため、誰にも相談できなかった。

 なお、性犯罪をめぐっては、重罰化をめざす刑法改正案が04年臨時国会で審議されており、それには、単独の事件で強姦罪に問われた場合の法定刑の上限を懲役15年から同20年に引き上げるなどの内容が盛り込まれている。

 

 最高裁第2小法廷;アジア太平洋戦争韓国人犠牲者補償請求事件で上告棄却(04年11月29日)==⇒判決文

 

第2次大戦中、旧日本軍の軍人や軍属、従軍慰安婦だった韓国人と遺族ら35人が日本政府に1人当たり2,000万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審の判決があった。

判決は、「日本政府や軍によって強制的に戦場などに連れて行かれ、戦争被害に遭った。日本政府は国際慣習法や国内法に基づき補償責任がある」との原告側の主張を退け、憲法29条3項に基づく請求に関して、「軍人軍属関係の上告人らが被った損失に対する補償は、憲法の全く予想しないところというべきであり、このような戦争犠牲ないし戦争損害に対しては、単に政策的見地からの配慮をするかどうかが考えられるにすぎないとする」とする判例を踏襲して、また、「戦後の平和条約で日本国籍を喪失した韓国人に補償請求権がないのはおかしい」とする原告側の憲法の平等原則に基づく補償請求に係る部分についても、「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(昭和40年条約第27号)の締結後、旧日本軍の軍人軍属又はその遺族であったが日本国との平和条約により日本国籍を喪失した大韓民国に在住する韓国人に対して何らかの措置を講ずることなく戦傷病者戦没者遺族等援護法附則2項、恩給法9条1項3号の各規定を存置したことが憲法14条1項に違反するということができない」とする判例を踏襲して、いずれも原告の上告を棄却した。これで、原告の請求を棄却した高裁判決が確定した。

なお、この訴訟は1991年と92年の2回にわたって提訴された。元慰安婦が原告となった初めての戦後補償裁判として注目された。1審の東京地裁判決は請求を棄却、2審の東京高裁は、国が元軍人に捕虜を刺殺させたり、女性に慰安婦として働くことを強要するなどした不法行為責任を一部認めたが、「請求権が消滅する民法上の除斥期間が過ぎている」として、原告側の控訴を棄却した(国の不法行為は、上告審では審理対象にならなかった)。

 

 東京地裁;労組の街宣活動禁止を命じる 社員解雇訴訟(04年11月29日)

 

 99年4月、勤務成績が不良だとして男性社員を適法に解雇したのに労働組合に抗議の街頭宣伝活動をされ、名誉・信用を傷つけられたとして、工具メーカー「旭ダイヤモンド工業」(東京都千代田区)と元社長が「東京・中部地域労働者組合」などを相手に本社前での街頭宣伝の差し止めなどを求めた訴訟の判決があった。

判決は、「会社の名誉・信用を棄損し、平穏に営業活動を営む権利を侵害した」と認定し、街宣活動の禁止と200万円の損害賠償の支払いを命じた。

 なお、解雇された男性はこの後、同組合に1人で加入し、それ以後、労組による街宣活動が始まったが、解雇をめぐって同社と男性が争った民事訴訟では東京地裁が「解雇は有効」として男性側敗訴の判決を言い渡し、02年6月、最高裁が上告を棄却して判決が確定している。

 

 山口地裁下関支部;ごみ業者暴行報道で朝日新聞に賠償命令(04年11月29日)

 

 2001年6月14日付の朝日新聞朝刊に「市立小学校で、女子児童3人が給食のごみ収集業者の男にしりをけられたり、手をつかまれたりしていた」などした「事実無根の記事による信用低下で売り上げが減少し、精神的苦痛を受けた」として、山口県下関市のごみ収集業の男性が、朝日新聞社と同社の取材に応じた市などを相手取り、計8700万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決があった。

 判決は、「原告を推知させるような記事の体裁や内容になっておらず、原告の言い分も紹介し、公平を期している」と反論していたとの朝日新聞社側の主張を退け、原告の行動に対し「児童らに不用意に声をかけるなど、他人の誤解を招来してもやむをえない」としながら、「一般読者に断定的判断を与える内容を掲載するには、裏付け取材が不十分であったといわざるを得ない」とし、同社に100万円の支払いを言い渡した。

 

 最高裁第1小法廷;離婚巡るNHK番組で訂正放送命令を破棄(04年11月25日)==判決文

 

 別れた夫の一方的な言い分に基づき、離婚について放送されたとして、埼玉県内の女性(58)がNHKに訂正放送などを求めた訴訟の上告審判決があった。

判決は、憲法が保障する表現の自由の下での「放送番組編集の自由」を重視する立場から、「放送法の規定は放送事業者が自律的に訂正放送を行うことを国民全体に対する義務として定めたものだ」と判断した上で、「別に法律で定める権限に基づく場合でなければ、ほかからの放送番組編集への関与は許されない」、(放送法4条の規定そのものは放送事業者による自律的な訂正放送について定めるのみで)、「被害者側からの請求の規定は、調査や訂正放送の端緒という位置づけと解するべきだ」と、個々の被害者が民事裁判で訂正放送を求めることはできないという初判断を示し、2審・東京高裁判決の「不十分な取材で女性の名誉を傷つけており、放送法に基づき訂正放送を請求できる」「指定した文章を元の番組と同じ時間帯に2回読み上げる」とNHKに訂正放送を命じた部分を破棄し、訴えを棄却する判決を言い渡した。他方、2審判決(1審は女性の請求を棄却)が名誉棄損とプライバシー侵害を認めて130万円の支払いを命じた部分については上告を受理しておらず、この部分ではNHKの敗訴が確定した。

 なお、放送法4条は「真実でないことが放送されて権利が侵害された」との請求があった場合、放送事業者は調査のうえ、事実と確認されれば訂正、取り消しの放送をしなければならないと定めている。

 

 千葉地裁;首相公式参拝と認定 千葉靖国訴訟、原告敗訴(04年11月25日)

 

小泉首相が01年8月に靖国神社を参拝したことをめぐり、千葉県に住む牧師や僧侶ら63人が「首相の参拝は国が特定の宗教に特権を与える行為で憲法の政教分離の原則を侵し、精神的にも苦痛を受けた」として、首相と国を相手に1人当たり10万円の慰謝料を求めた訴訟の判決があった。

判決は、首相の参拝の性格について、公用車を使ったり、内閣総理大臣の肩書で参拝したりしたことなどを踏まえて「外形的に職務行為にあたらないように配慮して行動した形跡がうかがえない。客観的にみて職務にあたる」と認定したが、「信仰の具体的な強制、干渉や不利益な扱いを受けた事実はなく、信教の自由の侵害はない。宗教的人格権は法的に具体的に保護されたものではない」として、憲法判断には踏み込まず、慰謝料請求も退けた。

なお、小泉首相の靖国神社参拝をめぐる訴訟は全国6カ所で提起され、大阪地裁2件、松山地裁、福岡地裁で判決があり、いずれも請求は退けられているが、福岡地裁は04年4月、「参拝は公的なもので、憲法で禁止された宗教的活動にあたり違憲」と指摘していた。

   

☆ 東京地裁;新潮社に賠償命令…読売「販売裏金」報道、真実でない(04年11月25日)

 

 読週刊新潮03年1月23日号の「読売新聞の伏魔殿『販売局』に国税のメスが入った」との見出しで、「読売新聞社販売局は新聞販売店への補助金をキックバックさせるなどして裏金を作っており、国税局から数十億円以上の巨額の使途不明金の存在を疑われるなどし、追徴課税を受けるのは間違いない」との記事(この記事の見出しが全国紙の広告にも掲載された)で、名誉を傷つけられたとして読売新聞東京本社が発行元の新潮社に1億円の損害賠償などを求めた訴訟の判決があった。

 判決は、「読売新聞社が裏金を作っていたとして追徴課税を受けた事実はなかった」と認定したい上で、「同新聞社が販売店に達成できないようなノルマを課し、これに耐えられない販売店を一方的に改廃しているとの事実も認められない」、また「読売販売局は伏魔殿」「不正を断罪する刑事と泥棒の二面性があぶり出されそうになっている」と論評した点についても、いずれも前提となる事実が真実でなく、違法と判断、さらに、「記事を客観的に裏付ける証拠がなく、新潮社を免責することはできない」として、新潮社に200万円の賠償を命じる判決を言い渡した。

 

 さいたま地裁;借金苦による妻殺害、ヤミ金業者に賠償命じる判決(04年11月19日)

 

02年5〜8月にかけて、実際に貸し付けをしていないか、出資法の上限を超える違法な高金利の貸し付けだったにもかかわらず、ヤミ金融業者からの夫婦に昼夜を問わず、「詐欺師」などと書いた紙を新聞受けに投げ込むなどの執ようにして違法な取り立に苦しんだ末、夫婦は借金返済の当てがなくなり、心中未遂を繰り返し、同年9月14日、「殺してやる方が妻の幸せ」と決意、心中未遂の後遺症が残る当時64歳の妻の首を夫が絞めて殺害、控訴審で懲役8年の刑が確定、現在は栃木県の黒羽刑務所で服役している夫(76)とその長女が、ヤミ金融業者を相手取り1000万円の損害賠償を求めた訴訟で判決があった。

判決は、「精神的に追いつめられた家庭が夫による妻の殺害という形で崩壊したことと、違法な取り立て行為に因果関係がある」として、43のヤミ金融業者に計600万円の支払いを命じた。

 なお、被告業者の一部は和解に応じたが、ほとんどは連絡が取れず、所在が確認できた業者でも、準備書面や答弁書を提出せず、口頭弁論などにも出なかった。

 

 最高裁第1小法廷;結婚しないパートナー関係、一方的破棄でも慰謝料認めず(04年11月18日)==⇒判決文

 

 85年以来、子供(2子)は出産したが、互いに束縛しないよう婚姻届けださず(法律上の結婚はしないで)、同居もせず、また、生計も完全に別にした上で、好きなときに行き来するといった関係を続け、新たな男女関係(「パートナーシップ」)とマスコミでも紹介されていた男女の一方(49歳会社員の男性)が、別の女性との結婚を考えるようになり、01年に関係解消を告げた、もう一方(47歳の大学教員の女性)は慰謝料を請求していた訴訟の上告審判決があった。

判決は、「(1)2人は共同生活をしたことが全くない(2)2人は意図的に婚姻を回避している(3)双方がこうした関係を将来にわたって続けることまで合意していた形跡はない」などと判断した上で、「一方的に関係を解消されたことで不満を抱くことは理解できるが、それをもって、婚姻やこれに準じるもの(内縁)と同じように法的に保護する必要は認められず、慰謝料請求権が発生する不法行為とは評価できない」として、「女性は関係継続の期待を裏切られた」として100万円の賠償を命じた2審判決(1審は「関係の継続は強制できない」と請求を棄却)を破棄する初判断を示した。

 

 最高裁第2小法廷;山口組組長の「使用者責任」が認定 警官射殺事件(04年11月12日)==⇒判決文

 

京都市で95年8月、抗争事件警戒中に指定暴力団5代目山口組の下部組織の組員に誤って射殺された警察官の遺族が、組長や実行犯ら4人に計約1億6400万円の損害賠償を求めた訴訟の上告審判決があった。

判決は、暴力団組長の使用者性について「(1)下部組織にも山口組の名称、代紋を使用させていた(2)上納金が組長に取り込まれる体制がとられていた(3)組長の意向が末端まで伝達徹底される体制だった」と指摘、「組長は下部組織の構成員を直接・間接に指揮監督し、山口組の威力を利用しての資金獲得活動に従事させていた」と判断したうえで、「資金獲得活動という事業の執行と密接に関連する行為で、組長と組員は使用者と被用者の関係にある」との初判断を示し、山口組は対立抗争で組員がした殺傷行為を称賛していていたとも認定、組長の使用者責任民法715条1項)を認め、組長側の上告を棄却した。これで、組長らに計約8000万円を支払うよう命じた二審・大阪高裁判決が確定した(補足意見で北川裁判長は「対立抗争で威力、威信を維持しなければ、組織の自壊を招きかねず、抗争自体を組長の事業そのものとみることも可能だ」との見解を示した)。

 なお、04年4月に施行された改正暴力団対策法は、指定暴力団の抗争に市民が巻き込まれた場合に組長らに賠償責任を負わせることができるが、恐喝や暴行、みかじめ料の取り立てといった不法行為には対応できないが、この判決は、「シノギ(やくざの仕事)」と呼ばれる資金獲得活動で末端組員の犯罪全般に組長の使用者責任を認めるもので、司法上の被害回復の道が広がり、犯罪抑止に期待される。

 

☆ 津地裁;市の斎場移転支出巡り前市長に賠償命じる(04年11月11日)

 

 99年、三重・名張三重県名張市が旧斎場の老朽化に伴い牛舎地の用地買収を計画、牛舎地の所有者と約6億3000万円で購入する仮契約の協定を結んでいたが、議会に対し金額を少なく偽ったまま議決を得て、協定通りの価格で購入した件で、同市が不当に高い価格で用地を購入したとして、「名張の市政を考える会」の住民14人が富永英輔前市長に損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

判決は、「契約内容が市議会の議決と異なっている」と認定した上で、自治体の財産処分に関する議会の議決権を認めた地方自治法に基づき「購入は違法であるといわざるを得ない」とし、住民側の主張を全面的に認め、前市長に対し支払い済みの金額と適正な価格との差額約2億7400万円を市に支払うよう命じた。

 なお、同市はすでに計画予定地を変更し、別の場所に斎場を建設している。

 

 最高裁第1小法廷;調査資料の非開示処分取り消し 大分県側が逆転敗訴(04年11月11日)

 

96年に発覚した大分県庁と同県教委の公金不正支出(同県の調査検討委員会の調査により、94〜96年度、カラ出張やうその食糧費請求などで約4億3400万円の裏金が作られて中央官僚の接待や県庁内部の飲食、タクシー代などに使われていたことが判明)をめぐり、「おおいた市民オンブズマン」などの市民団体が、調査のために作成した文書や入手した資料の開示を請求したが、県側が同県の公文書公開条例が「公文書」について「決裁または供覧の手続き終了後、県が管理するもの」と規定していることを根拠に、「公文書に当たらない」として開示しなかったことの取り消しを求めた訴訟の最高裁判決があった。 

 判決は、04年9月、福井県職員のカラ出張問題をめぐる情報公開訴訟で第2小法廷が示した判断を踏襲して、「県は調査報告書を公表しているが、その基礎資料となった文書もこれと同じく、公文書として公開の対象になる」と述べ、市民団体側の請求を退けた(原告敗訴の)1、2審判決を破棄し、県側の非開示処分を取り消した。これで、県側の逆転敗訴が確定した。

 なお、同県は現在条例を改正し、決裁・供覧を経た公文書だけを公開するとする条項を削除している。分県庁の。

 

 東京地裁;中田英寿選手のキス写真掲載で講談社にも賠償命令(04年11月10日)

 

プロサッカー選手の中田英寿(27)さんが、女優の宮沢りえ(31)さんとのキスシーンをめぐる「週刊現代」03年9月20日号の記事(最初、キスシーンはコアマガジン社の03年8月発行の月刊誌に掲載され、週刊現代が、この写真を紹介した上で、中田さんの所属事務所がコアマガジン社を訴える動きがあると報じた記事。なお、東京地裁はコアマガジン社に110万円の賠償を命令)で精神的苦痛を受けたとして、発行元の講談社などを相手に、慰謝料など計1200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

判決は、「中田さんが訴訟を検討していることを報じた部分には公益性がある」と認めた上で、「キスの事実は極めて私的なことでプライバシー保護が強く求められる」と述べ、講談社側の「中田さん側が月刊誌に抗議したことを取り上げた記事に、問題となった写真を引用して掲載しただけ」との主張を退け、「月刊誌との紛争を報じるために問題となった写真の掲載や女優との具体的な情景の詳述は必要なく、キスの事実を公表されない利益と報道する理由を比べると、前者が重い」として、講談社側に計120万円の支払いを命じた。

 

 札幌地裁;「笑顔ない」理由に解雇は無効 札幌の病院に慰謝料(04年11月10日)

 

 98年から、札幌市中央区の「医療法人恵和会宮の森病院」の入院患者の身の回り世話する介護員として、1年雇用契約の契約職員で雇用され、その後更新されて4年3カ月間働いていた札幌市の女性(27)が、02年6月、病院側から「笑顔がない」「不満そうなオーラが出ている」などを理由に、契約の更新を拒否されたとして、慰謝料の支払いなどを求めた訴訟の判決があった。

判決は、女性が契約更新を重ね、同病院の4割以上を占める介護員がいずれも契約職員であることなどから、「実質的に期間の定めのない労働契約と異ならない」と判断した上で、病院側が更新を拒否した理由について、「主観的でかつ女性にとっては過酷で、解雇の理由として著しく合理性、相当性を欠く更新拒否で、権利の濫用(乱用)にあたり無効」と結論づけ、慰謝料20万円と更新拒否後の賃金の支払いなどを病院側に命じた。

 

 静岡地裁;検察審査会の議決受けひき逃げ認定、有罪判決(04年11月10日)

 

2002年12月19日未明、静岡市清水横砂の国道1号バイパスでトラックを運転中、路上に転倒していた同市の会社員(当時33歳)をひいて死亡させ、そのまま逃走したとして、業務上過失致死罪に問われたが、静岡地検が当初、後藤被告がひいた時点で、すでに被害者が即死状態だったと判断、「死亡が一見して明白な場合、救護義務は生じない」との最高裁判例を踏まえ、ひき逃げの適用を見送っていた事案で、公判中に検察審査会の議決を経て道交法の救護義務違反(ひき逃げ)を罪に加える訴因変更を受けた、元トラック運転手(25)に対する判決があった。

判決は、追加された訴因の「ひき逃げ」の罪も認め、懲役2年、執行猶予4年(求刑・懲役2年6月)を言い渡した。

 

 東京地裁;鈴木宗男前衆院議員に懲役2年の実刑判決(04年11月5日) 

 

製材会社「やまりん」(北海道帯広市)から98年8月に500万円を受領したとしてあっせん収賄(しゅうわい)、また97〜98年に「島田建設」から計600万円のわいろを受け取ったとして受託収賄事件、及び政治資金規正法違反(虚偽記載)と議院証言法違反(偽証)等、4つの罪に問われた前衆院議員鈴木宗男被告(56)に対する判決があった。

判決は、「受け取ったのは400万円で、わいろでなく、官房副長官就任のお祝い金だ」等との鈴木前議員側の全面無罪の主張を退け、「長官の地位を私物化し、公共事業の公正な遂行を阻害し、厳しい批判に値する。自己の刑事責任の重さに思いを致さず、あえて虚偽の陳述をしてはばからない被告人に対し、刑の執行を猶予するのは相当ではない」と、懲役2年、追徴金1100万円(求刑懲役4年、追徴金1100万円)の実刑判決を言い渡した。

東京地検特捜部による鈴木前議員をめぐる一連の捜査では7事件で計12人が起訴され、うち8人の有罪が確定している。

なお、鈴木被告は2002年6月の逮捕時から一貫して犯行を否認、03年8月に保釈されるまでの437日間、東京・小菅の東京拘置所に拘置され、04年7月の参院選で北海道選挙区から立候補して落選した。だが、有罪判決を受けても控訴すれば判決は確定せず、国政選挙への立候補は法的には問題ない。

 

 最高裁第3小法廷;県立病院手術ミス:2300万円賠償命令確定(04年11月2日) 

 

 93年に県立広島病院で十二指腸などの手術を受けたところ、容体が急変し、多臓器不全で死亡した佐伯町の男性(当時72歳)の遺族5人が死亡したのは医療ミスが原因だとして、賠償を県に求めた訴訟の最高裁決定があった。

決定は、2審は「すい臓の一部に傷をつけたのが原因」と手術ミスを認める逆転判決(1審は請求を棄却)を支持し、上告を棄却した。これで、02年3月2300万円の賠償を県に命じた広島高裁判決が確定した。

 

 最高裁第3小法廷;実名似の仮名報道、元少年の上告棄却で文春側の勝訴確定(04年11月2日)

 

大阪阪、愛知、岐阜の3府県で若者4人が殺害されるなどした連続リンチ殺人事件をめぐり、週刊文春が実名に似た仮名で記事を掲載したことから、事件当時は18歳の書かれた被告(一審において強盗殺人罪などで無期懲役判決を受けて控訴中)が、発行元の文芸春秋に損害賠償を求めた訴訟の最高裁決定があった。

訴訟では、刑事裁判の公判について報じた同誌の記事が、「(加害少年について)本人と推定できるような記事を掲載してはならない」とした少年法61条に違反するかどうかなどが争われたが、1、2審判決は、「仮名でも、面識がある人がみれば、だれのことかを特定できる記事は少年法に反する」などとして文春側に30万円の賠償を命じた。しかし03年3月最高裁は、「記事によって一般読者が元少年を犯人と推測できるとはいえない」との前提から「少年法61条に違反しない」として名古屋高裁に審理を差し戻し、同高裁が04年5月、被告の請求を棄却していた。

今回決定は、この元少年の上告を棄却。これで、請求を退けた差し戻し後の名古屋高裁判決が確定した。

 

 東京高裁;がん転移説明せずに手術続行して死亡に対して2200万円賠償命令(04年10月28日)

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 東京都立駒込病院で肺がんの手術後に死亡した男性(当時75歳)の遺族が、都や主治医らに損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決があった。

判決は、「主治医が手術中にがんの転移に気付きながら、家族に説明せずに手術を続行したため、男性は合併症を起こして死亡した」と認定した上で、「説明していれば、家族は手術を止めることもできた」として、説明不足と死亡の因果関係を認めず計275万円の賠償を命じただけの一審・東京地裁判決を変更し、都と主治医らに計2200万円を支払うよう命じた。

 

 新潟地裁;国の責任認め慰謝料支払い命じる判決 無年金障害者訴訟(04年10月28日)

 

学生時代に重い障害を負い現在1級の障害者と認定されている新潟市の社会福祉士(41)と、新潟県三条市の鍼灸(しんきゅう)師(37)の男性2人が国民年金に未加入だったことを理由に「障害基礎年金」を支給しないのは違法だとして起こした(学生)無年金障害訴訟(全国で9件起こされている)の判決があった。

判決は、「国民年金法が制定された1959年当時は18歳までに就職する人が大半で、学生を国民年金の強制加入の対象外としたことに一応の合理性は認められるが、同法が改正された85年当時「すでに学生無年金障害者が過酷な状況にあることが国会に報告されるなど、国会議員は学生を被保険者とする必要性が高いことを認識できた」にもかかわらず、「20歳以上の学生をそれ以外の国民と区別し、被保険者とせず放置したのは合理的な理由のない差別で、法の下の平等を定めた憲法に違反する」と判断した上で、立法措置を怠った国の責任を認め、総額1400万円の賠償を国に命じた。

なお、04年3月の東京地裁判決は、85年の法改正を違憲とし、救済のための立法を怠った国の責任を認めている。

 

 東京高裁;部分撤去認めず、住民側が逆転敗訴 国立マンション訴訟(04年10月27日)

 

東京都国立市の「大学通り」沿いにある14階建て・総戸数343戸のマンション「クリオレミントンヴィレッジ国立」(高さ約44メートル)をめぐり、周辺住民らが「良好な景観が壊された」として建築主の「明和地所」(東京都渋谷区)などを相手に、マンションの部分撤去などを求めた訴訟の控訴審判決があった。

判決は、「そもそも個々の国民や地域住民が私法上の個別具体的な権利・利益として、良好な景観を享受する地位を持つとはいえない」との前提から、「住民には景観の維持を求める具体的な利益(景観利益)はないと判断」、通りに面した棟の20メートルを超える部分(7階以上)について、住民の長い努力で美しい景観が作られたとき、それを守らせる利益が住民に生じるとして、その撤去を命じた一審・東京地裁判決を取り消し、請求を棄却する住民側逆転敗訴の判決を言い渡した。

また、マンションの建築計画を知った国立市が着工から約1か月後に、建物の高さを制限する条例を施行したことについても、「明和地所の意向を無視して、建築を一方的に制限する目的だった」と批判した上で、条例施行時には工事がすでに始まっていたことから、マンションは条例の適用を受けないと指摘し、違法建築にはならないと認定した。

  

☆ 東京地裁国家公務員給与減額分の支払い請求、東京地裁が棄却(04年10月21日)

 

 2002年の国家公務員の給与減額(人事院は同年8月、初のマイナス勧告となる平均7770円の給与引き下げを勧告、実際の給与も勧告通り引き下げられた)をめぐり、給与を減らす法律は2002年12月施行にもかかわらず、同年4月分の給与からさかのぼって減額したのは違法」として、財務省や厚生労働省などに勤務する日本国家公務員労働組合連合会(国公労連)の組合員の公務員139人が、減額された給与など計約1200万円の支払いを国に求めた訴訟の判決があった。

判決は「減額方法は国会にゆだねられている」と退けた。

 

 山形地裁;5歳児虐待殺人の男、「未必の故意」懲役13年判決(04年10月14日)

 

山形県村山市で、腎臓病だった当時5歳の幼児を幼児の母(26−懲役11年の実刑確定)と共謀、2003年5月から、殴るけるなどの激しい暴行を加えて全身にけがをさせたほか、食事を減らすなど虐待の末に、同年6月17日に多発外傷ショックで死亡させ山中に埋めたとして、殺人と死体遺棄の罪に問われた同市楯岡荒町、無職の被告(30)に対する判決があった。

 判決は、「幼児の悲しみ、恨み、絶望を思うと涙を禁じ得ない」などとして、末必の故意(みひつのこい=結果発生そのものを不確実に認識する場合に存する故意であり、結果発生の可能性を認識しながらその結果発生を認容した場合をいう)の殺人を認定した上で、「(被告)自身が当時、執行猶予期間中だったことから幼児の警察ごっこ(の遊び)にいら立ったという身勝手なもので、酌量の余地は全くない」と断罪、懲役13年(求刑・懲役15年)を言い渡した。

 

 最高裁第2小法廷;対策怠った国、県の責任認める 水俣病関西訴訟(04年10月14日)==判決文

 

熊本、鹿児島両県の不知火海沿岸から関西に移り住んだ水俣病の未認定患者45人(うち15人死亡)が、国と熊本県に損害賠償を求めた「水俣病関西訴訟」(95年、チッソなど加害企業が未認定患者に一時金を払う一方、行政の責任は認めないという政治決着を図ったが、これを拒否した唯一の裁判)の上告審判決があり、水俣病の公式発見から48年余りを経て、行政の責任を認める司法判断が確定した。

判決は、「(1)熊大研究班が有機水銀説を発表し、旧厚生省の食品衛生調査会が59年11月に水俣病の原因を「ある種の有機水銀」としたことなどを根拠に、住民の命や健康に深刻で重大な被害が生まれる状況を認識していた(2)原因が有機水銀化合物で、排出源がチッソ水俣工場である疑いが濃いことを認識できた(3)工場排水に水銀が含まれているかを分析することは可能だった」と指摘した上で、「被害は深刻で、国が規制していればその拡大を防ぐことができた」と述べ、 「国が水質2法(水質保全法、工場排水規制法)を使って水質基準を設定したり、環境に悪影響を与える施設として工場を指定したりするなどの規制をしなかったことは違法だ」と結論づけて、対策を怠った国と県の責任を「、「著しく不合理で、違法で、国家賠償法1条1項の適用上違法というべき」と認定。感覚障害や運動失調など他の症状を組み合わせる現行の国の基準を緩めて、「一定の条件があれば感覚障害だけで認められる」「チッソは患者51人に総額3億1950万円、1人当たり850万〜450万円の賠償責任がある(チッソ分の判決は高裁で確定)」とし、その4分の1について国と県の責任も認めた2審・大阪高裁の判断を支持し、37人について、総額7150万円の賠償を命じた。

また、についても「こうした状況を認識できた」と述べ、県漁業調整規則に基づき、工場の排水を有害物質と指定し、取り除くなどの規制をしなかったことが著しく合理性に欠けて違法だとした2審の判断を支持した。

だが、2審が損害賠償を認めた8人については「59年12月以前に水俣湾周辺地域から域外へ転居しており、行政の怠慢が原因で被害を受けたとは認められない」と述べて二審の判断を覆した。

 なお判決は、国と県の原告の一部が水銀汚染地域を離れて提訴まで20年以上になることから「損害賠償請求を求める期間が過ぎている」との除斥期間適用の主張を、「身体に蓄積する物質が原因で人の健康が害される損害の場合、形式的に適用するのは酷だ」と退けた。

 

 最高裁第1小法廷;非嫡出子の相続差別合憲、2判事「違憲」(04年10月14日)=判決文

 

嫡出子側が、「非嫡出子が法定相続分以上の預金を引き出した」として提起した、非嫡出子(婚外子)の相続分を嫡出子の半分としている民法の規定法の下の平等を定めた憲法に違反するかが争われた訴訟の上告審判決があった。

判決(多数意見)は、これまでの判例を踏襲して「合憲」と判断したが、5人の裁判官のうち、弁護士出身の才口千晴裁判官と職業裁判官出身の泉徳治裁判官の2人が「違憲だ」と判断、才口裁判官は、「自分の意思ではどうにもならない出生による差別だ」と指摘し、「結婚観も大きく変わって非嫡出子が増える傾向にあるし、相続差別を正当化する理由となった国民感情などはもはや失われたのではないかと思われる」と疑問を投げかけた上で、「法改正を待つまでもなく、司法においても不利益を救済する必要がある」と反対意見を述べた。

 なお、同小法廷は03年3月にも今回と同種の訴訟を担当し、その際も「3対2」で合憲判断を出している。

 

☆ 福岡高裁那覇支部;やんばる開発訴訟控訴審、住民側逆転敗訴(04年10月14日)

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沖縄県が98年3月までに、沖縄本島北部に、横断道路「広域基幹林道奥与那線」(14.2キロ)を整備、また国や県の補助を受けた国頭村が同月までに、土地改良事業として28.4ヘクタールの農地を開発したが、場所が、希少生物が生息する「やんばる」と呼ばれる沖縄本島北部の山間地であったことから、96年11月に沖縄県内の自然保護グループ「沖縄・山ばる(やんばる)・海」のメンバーが、公金支出差し止めなどを求めて提訴、しかし県がその後も支出を続けたため、住民側が、最終的に支出された約3億7700万円の賠償を求めた「やんばる開発訴訟」の控訴審判決があった。

判決は「工事への県の公金支出に手続き上の瑕疵(かし)は認められるが、公益上の必要性があった」などとして、工事は違法とする原告住民側主張を認め、工事手続きが森林法や土地改良法に違反していると認定、大田昌秀前知事に約3億2800万円を県に賠償するよう命じた2003年6月の1審判決を取り消し、住民側請求を棄却した。

 

 最高裁第2小法廷;逆暴行被害通報の女性を刺殺の恨み殺人、死刑確定(04年10月13日)

 

東京都内で日本たばこ産業の女性社員に乱暴したなどとして、90年に懲役7年の判決を受け服役、「口止めしたのに通報され逮捕された」と逆恨みし、出所から約2カ月後の97年4月、女性宅のある東京都江東区の団地で女性=当時(44)=を刺殺したとして、殺人罪などに問われた元土木作業員の被告(62)の上告審判決があった。

被害者が1人で、金銭目当てなどではない個人的な恨みによる殺人事件だったが判決は、「特異な動機による誠に理不尽で身勝手な犯行だ」と指摘、「計画性が高く、強固な殺意に基づいており、冷酷、残虐。社会に与えた影響も大きい」とした上で、殺人罪で1977年に懲役10年に処せられた前科があることも考慮、「死刑の判断は是認せざるを得ない」と結論付け、「悪質さは利欲的動機による殺人と変わらない」と死刑求刑に対し、被害者が1人で、動機が利欲的でないことなどを有利な情状として考慮し、「極刑がやむを得ないとまでは言えない」として無期懲役の判決を言い渡した99年の一審判決を破棄、「死刑はやむを得ない」と判断した00年の2審東京高裁判決を支持、上告を棄却した。これで死刑が確定した。

 

 鳥取地裁;セクハラ「二重処罰で110万円の支払い命令(04年10月12日)

 

00年3月、酒に酔った女子学生を鳥取市内のホテルに連れ込んだとして停職6カ月の懲戒処分を受け、停職処分が解けた00年11月に復職したが、02年9月までの約2年にわたり、所属学科長の業務命令で、講義や研究活動の禁止や学生や教職員との会話の制限などの処分を受けたのは、憲法が禁じた二重処罰に当たるとして、鳥取大学工学部の助教授(52)が国を相手取り、慰謝料など1650万円を求める損害賠償請求訴訟の判決があった。

大学側は、「良好な教育研究環境を確保するため」と主張したが、判決は、「講義禁止は仕方ないが、研究活動まで事実上禁じるのは不当」として、原告主張の一部を認めて大側に110万円の支払いを命じた。

なお、助教授は、この影響で重度のうつ病になり、自殺を2回、図ったという。

 

 最高裁;長崎の母子像訴訟 「違憲でない」 長崎住民の上告棄却(04年10月11日)

 

 長崎市が爆心地公園に設置した母子像は宗教的で違憲だとして、住民が伊藤一長市長に像の撤去と設置費1億4700万円の返還を求めた訴訟の最高裁第2小法廷判決があった。

判決は、違憲には当たらないと判断、住民の上告を棄却した。これで、「憲法が禁じるほど宗教性があるとは認め難い」と原告の控訴を棄却した福岡高裁判決(04年3月)が確定した。

 

☆ 東京地裁;文春に110万円賠償命令 西田ひかるさん巡る記事で(04年10月08日)

 

 『週刊文春』の03年4月17日号「『西田ひかると辛島美登里は社長の愛人』? ポーラ化粧品株主総会で爆弾質問」と題する記事でイメージを傷つけられたとして、タレントの西田ひかるさんが発行元の文芸春秋と同誌元編集長に計約2500万円の損害賠償謝罪広告の掲載を求めた訴訟の判決があった。

判決は、聞広告や電車の中づり広告の見出しなども個別に検討した上で、「記事は原告の社会的評価を低下させた」と認める文春側に計110万円の支払いを命じた。一方、「謝罪広告を掲載する必要までは認められない」と述べ、謝罪広告の請求は却下した。

 

☆ 富山地裁;石川銀の株売買で2100万円支払い命じる(04年10月08日)

 

2001年10月、石川銀行の元取締役らに「新株を引き受けていただけませんか」などと持ち掛けられ、8000株購入のため約3000万円を支払ったが、株券は交付されないまま、同行は01年12月に破たんしたため、損害を受けたとして、富山市の建設会社が石川銀行や元取締役(54)などに約3000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

判決は、「石川銀行と元取締役には株売買の際に、説明義務違反があった」と述べ、石川銀側に約2100万円支払うよう命じた。

☆ 大津地裁;滋賀刑務所「セクハラ放置」で法務省に賠償命令(04年10月04日) 

 2002年4月、矯正協会に採用され、滋賀刑務所作業課へ派遣されていた大津市内の女性(38)が、同年7から12月にかけて、同僚女性から事実無根の男性刑務官との交際のうわさを流されたことから同年10月下旬、調査と防止策を求めたが、刑務所長側はまともに対応しなかったため、セクハラによる精神的苦痛を受けたとして、国(法務省)や財団法人矯正協会などに220万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

 判決は、「刑務所長は迅速かつ正確にセクハラの事実を確認し、適切に対処すべきだった」と認定した上で、「刑務所長は当初、セクハラに何の措置も講じず、セクハラ被害を防ぐ職務上の義務を怠った」として、国とうわさを流した同僚に計35万円の支払いを命じた。

なお、人権擁護を掲げる法務省が、セクハラ訴訟で負けたのは初めてという。

 

 最高裁;新潮社の1980万円支払い確定 名誉棄損で最高額(04年10月01日) 

 

 00年7〜11月、交通事故で死亡した理事長の妻ら4人に多額の保険金が掛けられていたと報道した休刊中の写真週刊誌「FOCUS」の記事で名誉を傷つけられたとして、熊本市の医療法人「林田会」と林田実理事長が、発行元の新潮社と当時の編集長らを相手に約1億7千万円の損害賠償などを求めた訴訟の決定が最高裁第2小法廷であった。

決定は、「理事長が事故に不自然な関与をしたと印象づける」と指摘した上で、「伝聞や推測に基づく内容で、真実とは認められない」と結論づけ2審判決を支持し、新潮社側の上告を棄却する決定をした。これで、被告らに計1980万円の賠償を命じた2審・東京高裁判決が確定したが、賠償額のうち、理事長個人への支払い額の1430万円は、確定した個人に対する名誉棄損の賠償額としては、最近の高額賠償判決に中でも過去最高(1審判決は1320万円の賠償を命じたが、2審判決は記事掲載が長く続いたことなどを理由にさらに660万円増やした)。

 

 大阪地裁;「刑軽すぎる」と検察批判、求刑上回る判決(04年10月01日) 

 

03年12月から04年2月の深夜から未明にかけ、帰宅途中の10代から20代の女性計3人に背後から抱きつき、暴力団員を装って「騒いだら刺すぞ」などと脅して強姦、さらに現金など計3万8千円を奪った上に、04年2月から3月にかけても別の女性2人に強姦しようとしたが未遂に終わる等、大阪市内で5人の女性に対して暴行を繰り返したとして強姦(ごうかん)や強盗などの罪に問われた無職の被告(34)の判決公判があった。

判決は、「女性の人格そのものを蹂躙(じゅうりん)する犯罪であり、被害は心身にわたって深刻「自宅を目前に被告の毒牙(どくが)にかかった無念さは計り知れない。極めて厳重な処罰を望んでいるのも当然だ」とし、その上で、「3件の強姦事件はそれぞれ懲役5年、未遂の2件も懲役1年と同1年6カ月に値し、合算すると懲役17年6カ月」になると判断、「実務上はそれより相当下回る刑を言い渡すのが通例だが、被害者保護の見地から相当ではなく、検察の求刑には到底賛同できない(「求刑は軽きに過ぎると言わざるを得ない」)と検察側を批判し、求刑を2年上回る懲役14年を言い渡した。

 

 長崎地裁;在外被爆者の手当、来日しなくても申請可能(04年9月28日)

 

長崎市に原爆が投下された翌日の45年8月10日、同市を訪れて被爆したあと韓国・釜山に戻り、04年7月25日に78歳で死亡した崔さんが生前、被爆者援護法に基づく健康管理手当支給を代理申請したのを却下した長崎市の処分は違法だとして、処分取り消しを求めた訴訟の判決があった(同月16日の結審後だったため、民事訴訟法に基づき予定通り判決が言い渡された。なお崔さんは、76年に来日し被爆者健康手帳を受け、80年に足の病気の治療で再度来日した際、健康管理手当を支給されたが、その年に帰国した後は打ち切られていた。同手当は03年3月から在外被爆者にも支給されるようになり、寝たきりだった崔さんは04年1月、日本の支援者を通じて復活支給を長崎市に申請したが却下されたため04年2月に提訴した)

判決は、長崎市の「国外からの支給代理申請を認めると、医師の事情聴取などの実質的審査が難しくなり、受給資格のない申請者に支給される恐れがある」との主張を「現在のような通信技術の発達した時代において、審査の大半は代理人を通じて可能」と退けた上で、被爆者援護法に「国家補償的な性格」があるとし、その立法目的は「被爆による健康被害に苦しむ被爆者を広く救済すること」と認定、「同法の目的は、来日できない在外被爆者にも援護を行うことを想定している」「(来日が困難な在外被爆者にも、申請先を居住地の都道府県知事や広島、長崎両市長とした援護法の施行規則について)在外被爆者が手当の支給要件に該当するのに受給できない事態を招くことは同法の目的や趣旨に反し無効」と判断し、市の処分を取り消した。

この判決は、国外に住む被爆者が来日しなくても同手当を申請できると認めた初の司法判断として、少なくとも400人以上とされる寝たきりなどで来日できない在外被爆者に、支給の道が開かれたことになる。

 この判決に対し厚生労働省は「同法を所管する立場から対応を検討したい」とするコメントを出した。

 

 最高裁;音楽CDでレッスンのダンス教室「著作権侵害」(04年9月28日)

 

名古屋市などにある7つの社交ダンス教室が無断で音楽CDをレッスンに使ったとして、社団法人「日本音楽著作権協会」(JASRAC、東京都渋谷区)が経営者らに使用料などを求めた訴訟の決定が最高裁第3小法廷であった。なお、ダンス教室が市販のCDを断りなく使用することが、音楽著作権の侵害にあたるかどうかが初めて争われた事案である。

判決は、ダンス教室側の「特定少数の受講生向けで、著作権侵害ではない」などとの主張を退け、レッスンでの使用は「入会金さえ支払えば、不特定多数の人が受講できるため、不特定多数に対する『公の演奏』にあたるとして、著作権侵害と認定した03年2月の名古屋地裁判決、04年3月の同高裁判決を支持、教室側の上告を受理しない決定をした。これで、CDの再生差し止めと、過去10年分の損害として計約3600万円の支払いを命じた二審・名古屋高裁の判決が確定した。

JASRAC(ジャスラック=Japanese Society for Rights of Authors Composers and Publishers=日本音楽著作権協会。1939(昭和14)年設立の日本における音楽関係の著作権を管理する社団法人)によると、全国約2400のダンス教室のうち、約1000の教室で現在も無断使用が続いているという。

 

 最高裁;生徒会誌への寄稿文不掲載、憲法に反しない(04年9月28日)

 

 95年末に群馬県立富岡実業高校(富岡市)の生徒会の顧問教員から依頼を受け、「マレーシア・シンガポールの旅」と題する紀行文を書いたが、校長が、文章が特定の日本企業を非難したり、日本の戦争責任を指摘したりしている点について、「一方的だ」として掲載させなかったことに関して、表現の自由や教育権を侵害されたとして、県と当時の校長に220万円の損害賠償を求めた訴訟の最高裁判決(第3小法廷)があった。

判決は、家永教科書訴訟に関する最高裁判決などを踏まえ、「生徒会誌への寄稿に教育的価値があるとしても、教育の自由の範囲に含まれるとはいえない」「校長の校務をつかさどる権限は生徒会活動にも及ぶ」などとした上で、「校長の行為は表現の自由や学問の自由などを保障し、検閲禁止を定めた憲法の規定に反しない」と判断、原告の主張を退けた01年10月の前橋地裁高崎支部、04年2月の東京高裁判決を支持し、上告を退ける判決を言い渡した。

 

☆ 東京地裁;国労3組合員への不当労働行為を認定、JR東日本敗訴(04年9月27日)

 

1990年11月、鶴見駅に勤務していた国労の組合員1人を、助役への暴力を理由に懲戒解雇、また同年7月と翌年2月にも組合員2人を国労バッジの着用などを理由に、清涼飲料水の自動販売機の管理業務に配置転換となった国鉄労働組合(国労)所属の組合員3人をもとの職に戻すことなどを命じた中央労働委員会(厚生労働大臣の任命する、使用者・労働者・公益を代表する各9人の委員により構成される行政委員会のひとつで、つ以上の都道府県にまたがる労働争議、または全国的に重要な事件について労働関係の調整を行う)の救済命令に対して、JR東日本が取り消しを求めた訴訟の判決があった。

 判決は、「解雇などは国労の弱体化を図る意図でなされたもので、不当労働行為に当たる」として、JR東日本の請求を棄却した。

 

 刑事・民事で逆判断の殺人放火、2審は逆転有罪(04年9月27日)

 

神奈川県藤沢市で93年12月14日、アパートの1室が焼け、この部屋に住む宝石店店員(当時25歳)の遺体が見つかった事件で、殺人と現住建造物放火の罪に問われた元交際相手の被告(32)の控訴審判決があった。なお、この事件は被疑者が「被害者が放火後に包丁で自分の首を刺し、心中を図った」と主張したため、横浜地検が98年にいったん被告を不起訴処分とした後、遺族が損害賠償を求めた民事裁判で「殺人」が認定され(1、2審判決が、同被告の「殺人」を認定し、総額約9、700万円の支払いを命じ、最高裁確定)、地検が改めて捜査、01年に起訴するという異例の経緯をたどった。

事件当時、室内には被害者と被告しかおらず、「(1)誰が首を刺し、放火したのか(2)被告に犯行の動機があったと推認できるか」が争点となったが、判決は、「被害者が心中を持ちかけ、灯油をまいて点火した後、自分で首を刺した」とする被告の主張を退ける一方、検察側が立証の柱とした「首を刺されたことで出血性ショックになり、さらに、放火による一酸化炭素吸引で心不全を起こした」との鑑定書について、「証明力があるとは言えない」とし、「死因は焼死」と認定したが、「鑑定書に証明力がないというだけの理由で、無罪にはできない」と結論づけた上で、「(前日に被告との別れ話がまとまったことを)喜んでいた被害者が心中するとは考えにくい」「現場にいた被害者以外の唯一の人物であり、過去に被害者に危害を加えていた被告が犯行を行ったとの認定に、合理的な疑いをいれる余地はない」と断定、03年6月の1審・横浜地裁の無罪判決(1審では刑事と民事の判断が分かれた)を破棄、逆転有罪判決した。ただし、「被害者は一大決心して別れることにした。(それを)放火して殺害したもので許しがたい犯行であるが、被告は当時若くて未熟で(求刑通り)無期懲役を選択するには躊躇(ちゅうちょ)がある」と、懲役15年に減刑した。

 

 大阪高裁;大学への入学辞退時の授業料、返還命じる(04年9月10日) 

 

 消費者契約法が施行された01年4月以前の大学入試に合格し、入学を辞退した元受験生2人が、大阪医科大(01年3月2日に合格した男性は入学金と授業料などを納めたが、同22日に発表された国立大学の後期入試に合格し、同大への入学を辞退した。しかし、入試要項には21日正午以降の辞退者には学納金を返さないとする「不返還特約」があり、男性は714万円を失った)と神戸松蔭女子学院大(同大に合格した女性も同様の経緯で51万円が戻ってこなかった)を経営する各学校法人に入学金や授業料など学納金の返還を求めた訴訟の控訴審判決があった。

大学側は「定員確保や財政基盤の充実のために必要」と主張したが、判決は、不返還特約について「受験生の心理状態に乗じて大学側が一方的に定めた暴利行為」と指摘した上で、「不労所得による財政確保に公共性があるか疑問。入学辞退に伴う損害はほとんどないのに、学生が支払う違約金は異常な高額で公序良俗に反する」と結論付け、また、「学納金を納める余裕がないために上位校をあきらめさせる効果があるとすれば、憲法から導かれる大学選択の自由を制約することになりかねない」と述べ、請求を棄却した一審判決を変更、法施行前の入試では初めて、入学金を除く計665万円の返還を大学側に命じた。なお、入学金については、大学に入るための権利金的な性格を認め、返還を認めなかった。

 一連の返還訴訟では、不当な違約金の徴収を禁じた消費者契約法の施行以降の入試の合格者にだけ授業料の返還を認め、施行前については認めない司法判断が定着していた。

 

☆ 東京高裁;プロ野球選手会の即時抗告を棄却、たが、誠実な交渉促す(04年9月8日) 

 

 球団合併問題をめぐる仮処分申請の即時抗告(裁判上、迅速に確定されることが必要な決定について、期間を定めて認められる不服申し立ての方法)に対する決定があった。

決定は、選手会には団体交渉権があるとしたが、今回のオリックスと近鉄の合併問題については仮処分を認める必要性まではないと判断し、日本プロ野球選手会の即時抗告を棄却した。一方、日本プロ野球組織の交渉態度を「誠実さを欠いていたことは否定できない」と指摘、04年9月9日からの選手会との話し合いで誠実に交渉しなければ「不当労働行為の責任を問われる可能性がある」と警告した上で、オリックスと近鉄の合併に伴う選手の労働条件について団体交渉をしなければならない、と指摘した。さらに、元東京高検検事長の根来泰周氏がコミッショナーであることを挙げ、「プロ野球組織の代表者には著名な法律家が就任しており、9日からの選手会との交渉では実質的な団体交渉が行われることが期待される」と言及。そうでなければ国民の信頼を失いかねないと指摘した。

 

 神戸家裁;代理出産の母子関係認めず(04年8月14日)

 

 兵庫県在住の50代の夫妻が高齢だったため02年秋、アジア系米国人女性から卵子提供を受け、夫との精子で体外受精した上、米国人の代理母の子宮に移して米国で誕生した双子の父母欄にそれぞれの名前を書いた出生届を提出したが、兵庫県明石市代理出産を理由に不受理とした処分の取り消しを求め、神戸家裁明石支部に申し立てていた家事審判の決定があった。 

決定は、「妻は卵子提供者でも、分娩(ぶんべん)者でもない。法律上の母子関係は、基準としての客観性・明確性の観点から、分娩した者と子との間に認めるべきだ」として申し立てを却下した。

これに対して夫妻は「家裁の判断には事実誤認がある。最高裁判例は生殖補助医療が進歩していない時代の判断で、子どもが誕生した経緯を十分くみとっていない」として、大阪高裁に即時抗告(裁判上、迅速に確定されることが必要な決定について、期間を定めて認められる不服申し立ての方法)する。

 なお、「50歳以上の女性が母の場合、出生の事実を確認する」との法務省通達があるため保留となり、約1年後に分娩により母子関係は発生するとした1962年の最高裁判決を理由に「不受理相当」と判断した。

 

1962(昭和37)年4月27日最高裁第2小法廷判決

 

主   文

 

本件上告を棄却する。

 

上告費用は上告人の負担とする。

理   由

 

 上告代理人敦沢八郎の上告理由について。

 

 被上告人が上告人を分娩した旨の原審(その引用する第一審判決)の事実認定は、その挙示する証拠に徴し、首肯するに足り、これに所論のような違法は認められない。所論は、ひつきよう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を争うに帰し、採用するをえない。

 

なお、附言するに、母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知を俟たず、分娩の事実により当然発生すると解するのが相当であるから、被上告人が上告人を認知した事実を確定することなく、その分娩の事実を認定したのみで、その間に親子関係の存在を認めた原判決は正当である。
よつて、民訴401条、95条、89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

 

 

 東京高裁;UFJ抗告、高裁認める(04年8月11日)

 

UFJホールディングスと三菱東京フィナンシャル・グループの統合交渉のうちを求めていた問題で、控訴審の決定があった。

決定は、UFJと住友信託との間で締結された基本合意書の「独占交渉権」を定めた条項について、法的拘束力を認めたものの、「双方の信頼関係はすでに破壊され、最終合意に向けた協議の継続は不可能」と判断、UFJと傘下のUFJ信託銀行、UFJ銀行に「住友信託銀行以外の第三者との間で、UFJ信託銀行の営業移転や合併などに関する、情報提供や協議を行ってはならない」とした、東京地裁の仮処分決定を取り消した。

 住友信託は、東京高裁が基本合意書の法的拘束力を認める一方で、仮処分を申し立てたこと自体を理由に独占交渉権を否定したのは「憲法上の裁判を受ける権利を侵害する極めて不当な判断」として、決定の取り消しを求める特別抗告許可抗告を11日夜、最高裁に行った。

 

 東京地裁;UFJの統合交渉禁止、住友信託の申請認める(04年7月27日)  

  

 経営悪化が続くUFJが04年5月に傘下のUFJ信託を売却することで住友信託と基本合意に至ったが、三菱東京と経営統合する方針に転換、7月に入って急きょ、住友信託に売却の白紙撤回をしたのは不当だとして、住友信託銀行が総資産約190兆円という世界最大のメガバンクが誕生するUFJと三菱東京の経営統合交渉の差し止めを求めた仮処分の決定があった。

 決定は、「5月にUFJと住友信託側の間で結んだ独占交渉権に関する基本合意には法的拘束力がある」と指摘した上で、「UFJが第三者と統合交渉した場合、住友信託側に著しい損害や差し迫る危険が生じることは明らか」との判断を示し、住友信託の申請認め、UFJの統合交渉を禁止した。

なお、UFJは直ちに異議を申し立て、命令が確定するまで統合交渉を継続する方針。

 

☆ 東京地裁;「フライデー」記事で、森前首相の請求を棄却 (04年7月26日) 

 

俳優、渡辺謙さんの妻が借金の際に「選挙資金が必要な人がいる」と前首相の名前を出して知人に融資を持ち掛けたとする「離婚訴訟と大物政治家」の見出しや森前首相の写真などを掲載した写真週刊誌「フライデー」(04年2月13日号)で名誉を傷つけられたとして、森喜朗前首相が発行元の講談社に1、000万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決があった。

 判決は、「関係を明確に否定する前首相の言い分も掲載され、勝手に名前を利用していた可能性にも言及している」と指摘した上で、「前首相が借金に関係しているなどの印象は与えない」と述べ、請求を棄却した。

 

 東京地裁;君が代斉唱問題:再発防止研修停止申し立て却下(04年7月26日) 

 

東京都教育委員会が今年の卒業式などで、君が代斉唱時に起立しなかった都立高校などの教員ら137人に命じた「再発防止研修」(04年8月上旬)をめぐり、教員側が求めていた執行停止の申し立てについて、却下の決定があった。

決定は、「研修の具体的内容が明らかでなく、執行停止するほどの緊急性があるとは認められない」と指摘して、却下したが、「自己の思想、信条に反すると表明する者に何度も同一の研修を受けさせるなど著しい精神的苦痛を与える程度に至れば違憲の可能性がある」と、今後の研修の内容や運営方法によっては思想・信条の自由の侵害になるとの見解を示した。

 なお、この問題では、教員側が教委の研修命令の取り消しを求める本訴訟を起こしているほか、処分の撤回を求め、都人事委員会に不服申し立ても行っている。

 

 東京地裁;内部告発した医師の責任否定、日本医大の賠償請求棄却(04年7月26日)

 

 97年12月、あごなどを骨折し、同大付属病院に入院し、あごの骨をワイヤなどでつないで固定する手術を受けたが、多臓器不全で亡くなった20歳代の女性患者への治療に関して、手術で第1助手を務めた男性医師(46)が、死亡した患者の遺族や報道機関に「ミスでワイヤが脳に刺さった」「手術でミスがあった」と内部告発したため、名誉を傷つけられたとして、日本医科大学(東京都文京区)と執刀医が、この医師を相手に1億3、000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

判決は、「手術中のレントゲン写真はワイヤが脳にかかっているように写っており、刺さったと男性医師が信じたことには相当の理由があった」と指摘した上で、「遺族やマスコミへの情報提供に故意や過失はなく、不法行為は成り立たない」と述べ、また、「証言は公益を目的としていた」とも認めて賠償責任を否定した。

他方、男性医師側が主張した、大学病院の医療ミスと事後の隠蔽(いんぺい)行為については、他の医師の意見書などを踏まえ「真実とは認められない」と判断した。

 なお、同男性医師はその後同大を退職、現在、横浜市内で開業しているが、死亡した女性患者の両親が01年5月、同病院を相手に約1億円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こし、現在、係争中となっている。

 

 東京高裁;キャンディ−」作者に賠償命令(04年7月21日)

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 19987年、漫画「キャンディ・キャンディ」のジグソーパズルを製造したが、「キャンディ・キャンディ」の著作権をめぐるトラブル(原作者のクレーム)でキャラクター商品を販売できなり大量の在庫を抱えたとして、埼玉県三郷市の玩具メーカーが、作画を担当した漫画家いがらしゆみこさんと著作権管理会社に約910万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決があった。

判決は、「原作者といがらしさんの間に、別の訴訟が係争中だったことをメーカーに知らせる信義則上の義務があった」と述べ、請求を棄却した03年9月の一審東京地裁判決を変更し、約170万円の支払いを命じた。

 なお、一審判決は、メーカーと直接の契約関係があった別の著作権管理会社2社に約780万円の支払いを命じたが、いがらしさんらへの請求は棄却していた。

 

 東京高裁;通信傍受の妥当性認定 初適用事件控訴審(04年7月19日) 

 

 通信傍受法が初めて適用され、麻薬特例法違反(業としての営利目的譲渡)などの罪に問われた元暴力団幹部の被告(36)の控訴審判決が04年7月16日、東京高裁であった。

傍受の令状を裁判所が発付できる要件として、「他の方法では犯人の特定や犯行の内容を明らかにすることが著しく困難な場合」と定めている通信傍受法の3条に関して、弁護側は「密売人を取り調べるなど、他の捜査方法があった」と主張し、「捜査の端緒さえつかめれば、いくらでも傍受できるという判決だ」と批判したが、判決は、「末端の密売人を取り調べれば、組織に捜査が知られ、首謀者や組織全体の解明が難しくなる。旧来の捜査方法では限界があるのは明らかだ」と判断し、懲役5年6カ月、罰金80万円、追徴金42万9、000円とした一審・東京地裁判決を支持し、被告側の控訴を棄却した。

 

 東京地裁;週刊誌記事巡る賠償訴訟、滝沢秀明さん一部勝訴(04年7月16日)

 

 02年12月と03年4月の「週刊女性」に女性アイドル歌手との恋愛に関する記事を掲載され、損失を被ったとしてタレントの滝沢秀明さんと所属するジャニーズ事務所が計1億1、000万円の賠償などを求めた訴訟の判決があった。

判決は、「意に反して私生活が公開されている部分がある」として滝沢さんのプライバシー権侵害を認定、またジャニーズ事務所についても「記事は、所属タレントの恋愛や結婚を禁止し、自由を奪っているとの印象を与えるが、取材が不十分で、真実との証明はない」として名誉毀損を認め、滝沢さんと事務所に50万円ずつ支払うよう、出版元の「主婦と生活社」と編集人に命じた。

 

 高松高裁;一審取り消し、認知認める判決 凍結精子死後認知訴訟 (04年7月16日)

  

 西日本に住む40代の女性が、98年に無精子症になる恐れがある白血病に対する放射線治療に備えて医療機関で精子を冷凍保存し、99年に病死した後、その精子による体外受精で01年に男児を出産したとして、出生届を出したが、夫の死後300日以上たって生まれており、夫婦間の子どもと認められないとして受理されなかったため、男児を夫の子として認知するよう求めて02年6月に提訴した訴訟の控訴審判決があった。

控訴審で女性側は、「民法がこうした事態を想定していなくても、憲法などで法の不備を補うべきだ」と主張、また夫が生前、「自分が死んでも再婚しないのなら、子を産んで両親の老後をみて欲しい」と頼んだと主張。「子どもの福祉の見地から父子関係が保障されるべきだ」と訴えていた。

判決は、「死亡した男性は妻の賛同が得られれば、保存精子を使って子どもをつくってほしいと希望しており、死後の懐胎について同意していたと認められる」「認知の訴えは、懐胎したときの父の生存は要件ではない」と述べ、「早急に何らかの立法的手当てが行われることが望ましい」とした上で、「(1)夫が生前、死後の体外受精に同意していたとは認められない(2)死者との間で法律上の父子関係を認めることが子の福祉にかなうとも言えない(3)学会などの動向を見ても消極的意見が多い」などとして請求を棄却し松山地裁の一審判決を取り消し、死亡した男性の子であると認知する逆転判決を言い渡した。

民法は、親の死から3年以内であれば、死後の認知を求める訴えを起こせると定めているが、親が生きていた間の妊娠を前提としており、医療技術の進歩による精子凍結保存という事態は想定していない。

なお、妊娠時に死亡していた男性を父親と認める司法判断は初めて。

   

最高裁第1小法廷;漫画の「ドロボー」は適法(04年7月15日)

 

 従軍慰安婦問題をめぐり激しく論争していた関西大学上杉聡講師が著作で漫画「新ゴーマニズム宣言」の著者小林よしのり氏の漫画のカットを引用したため、小林氏が小学館の「SAPIO」1997年11月26日号に掲載された漫画「新ゴーマニズム宣言」で「絵を勝手にドロボー」などと批判、泥棒姿の似顔絵を描いたのは名誉棄損として、上杉氏が小林氏らに損害賠償などを求めた訴訟の上告審判決があった。

 判決は、「ドロボー」表現について「上杉氏の行為が著作権侵害で違法であるという小林氏の法律的な主張」と認定、「法的見解の表明自体は、意見や論評に当たる」との初判断を示した上で、「表現は人身攻撃に及ぶものではなく、上杉氏の著作にも小林氏をひぼう、やゆするような表現が多く見られることなどを考慮すると、『ドロボー』は意見や論評の域を逸脱していない」と判断、「ドロボー」は事実の摘示とし、「上杉氏の行為が無断盗用で違法との印象を与えるが、真実ではなく、真実と信じる理由があるとも認められない」として、250万円の支払いと謝罪広告の掲載を命じた2審東京高裁判決を破棄、表現は適法として請求を退けた。

なお、引用自体については、適法とした東京高裁判決が02年4月に最高裁で確定している。

 

 最高裁第1小法廷;遺跡捏造報道、週刊文春敗訴確定 名誉教授側訴え認める(04年7月15日)

 

 週刊文春の01年1〜3月にかけての聖嶽(ひじりだき)洞穴遺跡(大分県本匠村)で石器を捏造(ねつぞう)したとの疑惑報道で、01年3月9日、「死をもって抗議する」との遺書を残して自殺した別府大名誉教授の遺族が、故人の名誉を傷つけられたとして発行元の文芸春秋などに3、300万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟の判決があった。

判決は、「謝罪広告の掲載を直接、その雑誌に命じることは思想・良心の自由に反する」などとした文春側の主張を退けた上で、「陳謝の意を表明する程度の謝罪広告掲載を命じても違憲ではない」とするこれまでの判例を踏襲して文春側の上告を棄却した。

これで総額920万円の支払いと謝罪広告の掲載を命じた2審・福岡高裁判決が確定した。

 

☆ 最高裁第1小法廷;生徒会誌の原稿削除は「合憲」 群馬・元高校教諭の敗訴確定(04年7月15日)

 

1996年2月、群馬県立桐生工業高校の元教諭が、定年を前に教師生活などを振り返った回想文を生徒会誌に寄稿し、この生徒会誌が在校生に配布された後、元校長は新1年生に生徒会誌を配布する際、日米安保条約に反対する記述などが含まれていたため「ふさわしくない」と判断し、回想文を切り取って配布したことに関連して、原稿を校長が削除したのは憲法違反として、元教諭が県と元校長に100万円の賠償などを求めた訴訟の判決があった。

判決は、「元校長が削除を命じたことは、表現や学問、教育の自由などを定めた憲法に違反しないことは、過去の判例上明らか」と述べて、元教諭側の上告を棄却した。これで、元教諭敗訴が確定した。

なお、1審・前橋地裁は00年11月、「生徒会誌は元教諭の刊行物ではないから、元教諭には回想文を発表する自由はない。元校長の指示には合理性もあるから適法」として元教諭の請求を棄却、また東京高裁も2002年5月、「回想文を一般刊行物に発表することは妨げられず、憲法が禁じた検閲には当たらない」などと合憲性を認めていた。

 

☆ 東京高裁;信州大学キャンパスに神社「憲法の精神に反する」(04年7月14日)

 

 長野県松本市の信州大キャンパスに京都の伏見稲荷神社の分社として戦前、旧帝国陸軍の「松本歩兵第50連隊」の守護神であった白翁稲荷神社があるのは憲法の政教分離原則に違反するなどとして、大学教授が信州大を相手に神社の移転と慰謝料95万円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決があった。

判決は、「神社を大学構内に存置させたままにしている国や同大の姿勢は、憲特定の宗教団体に対する公金支出を禁止した憲法89条の精神に明らかに反する不相当な行為と言わざるを得ない」と批判しつつも、「原告には神社の構外移転を直接要求できる権利はなく、信教の自由がただちに侵害されたとはいえないし、精神的苦痛が生じているとも認められない」として、請求を棄却した一審・東京地裁判決を支持し、控訴を棄却した。

 同神社は戦後、連合軍の指示でいったん構外に移転したが、56年に同大医学部の友好団体「杏蔭会」が中心になって元の場所に戻した。なお、神社の経費は杏蔭会が負担し、公費は一切支出されていない。

 

 東京地裁;受動喫煙被害、江戸川区に5万円賠償命令(04年7月12日)

 

  職場での禁煙・分煙対策が講じられなかったため健康を害したとして、95年4月に同区に採用され、都市開発部再開発第一係に配属された東京都江戸川区の職員(36)が、当時の職場では自席での喫煙が認められ、その後設けられた喫煙場所も仕切りなしで部屋の中に置かれため、もともと気管支が弱かった同職員は同僚のたばこにより、目やのど、頭の痛みに悩まされ、96年1月には大学病院で「血痰、咽頭痛、頭痛など受動喫煙による急性障害の疑いがある」とする診断を受けたことから、同区に治療費や慰謝料として約32万円を求めた訴訟の判決があった。

判決は、症状と受動喫煙の因果関係は認めなかったが、受動喫煙の危険性に対し、区が安全上配慮すべき一般的な義務の内容について「危険性の態様や程度、被害結果など具体的状況に従って決まる」と指摘した上で、原告が「のど痛や頭痛、血たんといった受動喫煙による急性障害が疑われ、非喫煙環境での就業が望まれる」との医師の診断書をとって何とかしてほしいと上司に訴えた96年1月から、人事異動で別の部署に移る同年3月末までは、「区は受動喫煙の危険性から原告の生命、健康を保護するよう配慮する義務があり、96年当時、原告は医師の診断書を示して改善を訴えたのに、区は、原告の席を喫煙場所から遠ざけるとともに、自席での禁煙を徹底させるなど速やかに必要な措置を講ずべきだったのに放置した」と認定、この間の精神的、肉体的苦痛に対する慰謝料を5万円と算定した。

一方、診断書が出る前については「症状と受動喫煙との因果関係を認めるに足りる証拠がない」などとして配慮義務違反は問えないとした。また、96年4月以降についても、異動先の部署には強力な換気装置が設置され、分煙対策が進んでいたことなどから賠償の対象にならないとし、原告の請求を棄却した。

 なお、受動喫煙の被害をめぐる訴訟で雇用者側に賠償を命じた判決は初めて。

 

 広島高裁;強制連行、西松建設に賠償命じる逆転判決(04年7月9日) 

 

太平洋戦争中に強制連行され、広島県加計町の水力発電所建設現場で過酷な労働を強いられたとして、中国人の元労働者2人と遺族3人が工事を請け負った西松建設(本社・東京都、当時西松組)に対し、98年1月に総額2、750万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決があった(03年7月に和解を勧告したが、西松建設は「強制連行、強制労働は国の政策だった」と主張して協議は決裂していた)

判決は、意思に反して連行された中国人労働者が、工事現場で24時間の監視の下、不衛生な状態で食事も十分に与えられないまま、長時間にわたる危険な重労働を強いられたと指摘した上で、西松建設の不法行為と安全配慮義務違反を認定した。それを前提に、原告らの損害賠償請求権については、不法行為があった時から、除斥(じょせき)期間の20年以上が過ぎているため、不法行為に基づく損害賠償請求権は消滅しているとしたが、一方、安全配慮義務違反の損害賠償請求権については、提訴前の96年には時効により消滅したとしつつ、「正義・公平・条理などに反する特段の事情がある場合は、時効の適用は許されない」と判断、「(1)原告は人権侵害を受け、重大な被害を受けた(2)西松建設は強制連行・強制労働に関する資料に虚偽の記載をした」などを考慮、西松建設に対し、「損害賠償義務を免れさせることは著しく正義に反し、時効の適用は権利の濫用(らんよう)にあたり許されない」と結論づけ、企業の不法行為や安全配慮義務違反を認めたが、除斥期間や消滅時効を適用して、提訴時には損害賠償請求権がないとして原告の訴えを退けた02年7月の一審・広島地裁判決一審判決を取り消し、西松建設に請求全額の支払いを命じる逆転判決を言い渡した(西松建設は即日上告)

 なお、中国人強制連行を巡る訴訟は全国で計11件が係争中で、控訴審判決は、04年5月、原告の請求を棄却した福岡高裁に次いで2件目。提訴に時間がかかり損害賠償請求の権利が失われる、「時の壁」と呼ばれる民法上の規定を超えて損害賠償を命じた初めての控訴審判決になった。

 

 横浜地裁;「セクハラ窓口の対応違法」厚木市に賠償命令(04年7月8日) 

 

 01年4月に採用された直後から、直属の上司だった男性係長に「早く結婚しろ」「子供を産め」と言われたり、同僚宅でのバーベキューパーティーに参加した際の集合写真を撮る時にひざの間に座らされ、「不倫しよう」と迫られる等のセクハラを歓送迎会や暑気払いなどで4回にわたり受けたうえ、同年10月、市職員のための相談窓口に被害を訴えたが、責任者である男性の課長(現在は別の部署の部長)は事実関係の調査を十分にせず、女性職員に「考え過ぎ」などと話すなど係長をかばう発言を繰り返し、女性を保護するための措置を何も取らなかった等の不当な対応をされ精神的な被害を被ったとして、神奈川県厚木市役所の女性職員(30)が、330万円の損害賠償を求めた国家賠償訴訟の判決があった。

判決は、「係長の発言は原告に精神的苦痛を与えた」と述べたうえで、相談窓口の責任者だった課長が「被害者保護や加害者への制裁を何もしなかった」ことを「市の定めた要綱などに基づく義務違反」に当たると認定して、同市に220万円を支払うよう命じた。

 

 最高裁第1小法廷;父は朝鮮籍、終戦前日に出生の男性に日本国籍(04年7月8日)

 

 先の大戦敗戦の前日の1945年8月14日に日本人の母の婚姻外の子として生まれ、敗戦後の同年9月8日に朝鮮籍の父から認知を受けた大阪府内の男性(58)が、国を相手に、日本国籍を持つことの確認を求めた訴訟の最高裁判決があった。

一審は、1952年4月のサンフランシスコ平和条約の発効で、日本は朝鮮に属すべき領土や人に対する主権を失い、かつ、旧国籍法は「父子国籍同一主義」を採用しているとして、「男性は日本の国内法上、朝鮮人としての法的地位を取得し、平和条約発効で日本国籍を失った」と判断したが、最高裁は、1950年7月1日に施行された現行の国籍法は「認知で国籍は変動しない」との立場を採っていることに注目して、「男性は現在の国籍法の趣旨に照らして日本国籍を持つ」と結論づけた2審を支持、国側敗訴の判決を言い渡した。これで原告の日本人としての法的地位が確定した。

なお、原告の男性は敗戦後52年が過ぎた97年、勤務先の建設会社社長の協力で戸籍謄本などを取り寄せ、裁判を起こすことができた。

 

☆ 最高裁第2小法廷;公費参列は合憲 最高裁が初判断(04年6月28日)

 

1990年11月の即位の礼と大嘗祭(だいじょうさい)への公費での参列(知事は即位の礼に、井口元議長は即位の礼と、同月の大嘗祭の両方に参列し、県費から計約2万8、000円が旅費として支出された)は違憲として、神奈川県の住民16人が故長洲一二・元県知事と故井口隆時・元県議会議長に、旅費の返還を求めた住民訴訟の上告審判決があった。

判決は、77年の大法廷判決が示した政教分離の憲法判断基準(目的効果基準)を適用し「天皇の即位に祝意を表する目的で、社会的儀礼として即位の礼に参列した行為は、憲法が禁じる宗教的活動には当たらない」と述べ、1、2審判決に続いて合憲の判断を示し、住民の上告を棄却した。住民側敗訴が確定した。

なお、大嘗祭への参列は2002年、既に合憲判断を示しているが、即位の礼の公費参列をめぐる最高裁の判断は初めて。

 

 東京地裁;最高裁が異例の敗訴、ロッキード事件の議事録非公開で(04年6月24日)

 

 ロッキード事件では、検察当局が、田中角栄元首相に5億円を贈ったロッキード社のコーチャン元副会長らの嘱託尋問調書を米国側から得るため、1976年、検事総長と東京地検検事正が元副会長を起訴しないことを確約する「不起訴宣明」を出し、最高裁も「宣明書」でこれを確認したが、これに関連して、社会福祉法人職員(43)は、宣明書を出すに至った当時の裁判官会議の議事録などを、最高裁の要綱に基づき、2001年に開示請求、一部は開示されたが、議事録は、最高裁規則で「会議は非公開」とされていることを理由に開示されなかった。そのため非開示は違法として、国に130万円の賠償を求めた訴訟の判決があった。

 判決は、「会議の非公開と議事録の事後公開は区別して考えるべきで、議事録をすべて非公開とする必要はない」「(公開は)理由なく妨げられてはならず、最高裁の担当課長には請求者の利益を保護する職務上の注意義務があったのに、それを尽くさなかった」と判断した。と述べ、非公開措置の一部を違法と判断、国に6万円の賠償を命じた。

最高裁敗訴の最高裁の情報公開を巡る訴訟の判決は初めて。なお、情報公開請求訴訟は、行政機関の処分を対象とする行政訴訟の一つで、行政機関ではない最高裁を相手には起こせないため、今回の訴訟は賠償請求の形を取っていた。

 

 東京地裁;近親婚者にも受給資格認める 遺族年金で東京地裁判決(04年6月22日)

 

 内縁の夫である叔父(おじ。当時72)が死亡したのに、直系血族または3親等以内の傍系血族との婚姻を禁じている民法の「近親婚」を理由に遺族年金の受給資格を認めないのは違法だとして、1958年から12歳年上の叔父と内縁関係になり、叔父が死亡する2000年まで、叔父と事実上の夫婦として生活してきた茨城県内の姪(めい)の女性(64)が社会保険庁長官に不支給処分の取り消しを求めた訴訟の判決があった。

判決は、「資格を認めれば、国家が反倫理的な近親婚を公認することになる」との社会保険庁の主張を退け、「遺族年金は、遺族の生活の安定のために給付されるもので、民法とは目的が異なる」としたうえで、「一度は親子の関係にあった者が内縁関係になった場合とは、社会的評価や抵抗感が異なる」と述べ、「内縁関係は42年にわたり、職場や地域でも抵抗なく受け入れられてきた。法的には婚姻関係に等しい」「民法上禁じられている(3親等内の)近親婚関係にある者に年金を支給しても、遺族の生活保障という厚生年金制度独自の観点からの行為で、国が(3親等内の)近親婚を公認したことにはならない」と女性の主張を認め、不支給処分を取り消した。

近親婚者に遺族年金の受給資格を認めた判決は、今回が初めて。

なお、85年の最高裁判決では、亡夫の連れ子と内縁関係にあった女性に、連れ子が死亡しても遺族年金の受給を認めなかった。

厚生年金保険法では、遺族年金を受給できる「配偶者」に「事実上婚姻関係と同様の事情がある者」を含めており、訴訟では、この女性が「配偶者」にあたるかが争点になった。

 

 最高裁第3小法廷;「謝罪広告掲載は合憲」 黒川紀章氏巡る記事で文春敗訴(04年6月22日)

 

建築家黒川紀章氏がデザインした愛知県豊田市の矢作川にかかる全長約474メートルの「豊田大橋」(動物の骨格をモチーフとした二連の白いアーチが特徴で100億円以上を投じて99年3月に開通)をめぐる週刊文春00年4月6日号の「『100億円恐竜の橋』に市民の大罵声(ばせい)」の記事で、「肯定的な評価もあったのに、批判的な評価だけをことさら取り上げた」として名誉棄損の成立を認めたことに関連して、メディア側に謝る意思がないのに謝罪広告の掲載を命じることが憲法19条の思想・良心の自由に反するかどうかが争われた訴訟の判決があった。

判決は、「事実無根の政見放送で他の候補を中傷した候補に新聞への謝罪広告掲載を命じることは憲法に反しない」とした56年7月の最高裁大法廷判決を踏襲、「単に事態の真相を告白し、陳謝の意を表明する程度の謝罪広告掲載を命じることは倫理的な意思、良心の自由を侵害せず、憲法に違反しない」とする判断を示し、発行元の文芸春秋(東京都千代田区)側に600万円の支払いと同誌への謝罪広告掲載を命じた二審・東京高裁判決を支持し、文春側の上告を退けた。また、「報道の自由を保障した憲法21条にも違反する」とする文春側の主張に対しても「違反しないことは明らか」と退けた。

  

 東京地裁;星野SDが文芸春秋に勝訴(04年6月18日) 

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 『週刊文春』02年6月6日号と13日号において、前年に中日監督を退いたことに関して、「フロントが人脈と金脈を危ぐした」などと、ゴルフ場開発などの共同事業をめぐる星野SDの人間関係に関する事実無根の記事で名誉を傷つけられたとして、阪神の星野仙一オーナー付シニアディレクターが週刊文春を発行する文芸春秋(東京)に5、300万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決があった。

判決は、「交友関係は真実だが、それを理由に監督を解任された、との記事内容は真実とは言えない」と指摘した上で、同社に230万円の支払いを命じた。

 

 東京地裁;2ちゃんねるに220万円賠償命令(04年6月17日) 

 

インターネット掲示板「2ちゃんねる」で02年5月から03年3月の間、同社社員の能力や社長を中傷する発言が多数掲載されたが、管理人が1〜3カ月間、こうした発言を放置したてめ、損害を被ったとして、ダイビングショップを経営する「ケイズ企画」(大阪府茨木市)と同社社長が掲示板の管理人を相手に約2、400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

 判決は、「発言とコースの申込者減少による損害との因果関係は認められない」とする会社側の訴えを退け、「ダイビングスクールや社長に関する侮辱的発言が信用を低下させるのは明らか。被告は発言の削除義務を怠った」として、社長に220万円の支払いを命じた。

 

 大阪地裁;暴行死賠償判決で、懸賞金300万円を損害と認定(04年6月11日) 

 福岡県の会社員(当時26歳)が01年4月22日未明、結納で訪れた大阪市北区の路上で、肩がぶつかったことから2人と口論になり、殴るけるの暴行を受けて同24日に死亡した事件で、両親が加害者の男2人(2人は逃げたが、両親が古賀さんの結婚資金300万円を懸賞金にして情報提供を呼びかけ、目撃情報をきっかけに逮捕され、傷害致死罪で懲役6年と同5年が確定)に約1億2、000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

判決は、「被害者が倒れた後も暴行を続け、両親が犯人を捜していることを知りながら約10カ月も逃走を続けた」と指摘した上で、懸賞金300万円のほか、情報提供を呼びかけるチラシや立て看板の作製費用も損害と認定し、計約8、900万円の支払いを命じた。

被害者側が懸賞金を出して情報を募るケースが増えている状況から、「懸賞金を損害と認めた画期的な判決」との評価もある。

 

☆ 東京地裁;宮沢りえさんとのキス写真掲載した雑誌社に110万円賠償命令(04年6月10日)

 

03年10月号の月刊誌「ブブカ」に、会員制クラブで中田選手が女優の宮沢りえさんとのキスシーン写真7枚など掲載されたため、プライバシーを侵害されたとして、サッカーの中田英寿選手がコアマガジン社(東京都新宿区)を相手に2、200万円の損害賠償などを求めた訴訟判決があった。

判決は、「撮影は友人以外の入店を拒絶したクラブ内で、高度のプライバシー保護が期待されていた。写真公表で不快感を覚えたのは明白」と指摘し、コアマガジン社に110万円の賠償を命じた。

 

☆ 東京地裁;「北の家族」に返還命令(04年6月10日)

 

 02年に経営破綻(はたん)したが、民事再生手続きで再建された居酒屋チェーン「北の家族」(本社・東京都豊島区)に対して、店の看板、すし製造ロボット、通信カラオケ機等の物品を貸していたリース会社「ジーイーキャピタルリーシング」(東京都港区)が、同年、「破綻した場合は契約を解き、物品を返してもらう取り決めだった」と提訴していた事件の判決があった。

判決は、北の家族側の「事業を続けながら自主再建を目指す民事再生の制度の趣旨に反する訴えだ」などとの主張を退け、「無権限で物件を利用し利益を得ているに等しい」と結論づけ、借りている物品はすべてリース会社に返還するともに、未納代金に相当する約1億5千万円の損害金の支払いも命じた。

 なお、未返還の物品があるのは本社と10店舗で、厨房(ちゅうぼう)設備やテーブル、冷蔵庫まで含まれている。

 

 東京地裁;大王製紙進出断念で秋田県に55億円返還命令(04年5月26日)  

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大王製紙(愛媛県四国中央市)は1989年、秋田市内に工場を建設することで秋田県と合意、さらに94年には工場進出しなかった場合、同社が土地造成費と工業用水道整備費の一部を違約金として県に支払う覚書を交わし、担保として約55億円の預金証書を預けたが、反対住民らが県と秋田市の補助金支出差し止めを求めた訴訟が長期化するなどして進出が遅れ、2000年11月、同社は秋田市への工場進出を断念、「断念は誘致した秋田県側の事情が原因」として、県に工場進出の覚書に違約した場合の担保として預けていた約55億円の返還を求めた訴訟の判決があった。

 判決は、「反対住民が起こした訴訟などの影響で、工業用水の単価が確定せず進出の大前提を欠いた状況だった。大王製紙が断念を決めたのはやむを得ず、進出断念の表明後、県には企業に再検討を真剣に求める姿勢が乏しかった」と批判した上で、「工業用水単価が決まらないのに、計画の実行を強いるのは信義則上も不相当だ」とし、違約金の支払い義務はない」と述べた、請求を全面的に認める判決を言い渡した。

 また、「企業の事情で一方的に進出を中止した」として、既に預かっている担保分を含め大王製紙に約84億円の支払いを求めた反訴については、請求を棄却した。

 なお、東京地裁は03年12月、大王製紙が県に16億円を支払うとする和解案を提示したが、県側は「金額が低すぎる」と受け入れなかった。

 

 福岡高裁;中国人強制連行訴訟国と企業に賠償責任なし(04年5月24日)

 

張宝恒(ちょう・ほうこう)さん(80)ら中国人男性の元労働者15人(現在70〜80歳代。うち1人死亡)が第2次大戦中に中国から強制連行され、敗戦まで福岡県大牟田市田川市の三井鉱山の炭鉱で強制労働を強いられたとして、国と三井鉱山(本社・東京)に総額3億4、500万円の損害賠償と謝罪などを求めた訴訟の初めての控訴審判決があった。

判決は、戦前の不法行為に国は賠償責任を負わないとする「国家無答責」の法理について、「特段の事情がある場合は国は責任を負わなければならない」「強制連行及び労働は人間的価値を否定する。甚だしく人倫にもとる」と批判、国家無答責の法理を適用して国に責任がないというのは「著しく正義、公平に反する」としてこれを退けた上で、強制連行及び強制労働については、「強制連行は1942(昭和17)年の閣議決定を受け、国策で行われ、産業界も熱望した。家族と平穏に暮らしていた中国人を意に反して他国に強制連行した」と認定した。また、「十分に食事を与えず賃金も支払わないなど、劣悪な環境下で労働させ続けた」として安全配慮義務違反もあったと指摘した。

だが、国の責任については、控訴審で明らかになった強制連行の詳細をまとめた外務省報告書を焼却したこと対して、「国が戦後も証拠隠滅(いんぺい)活動をした」と事実を認定しながら、元労働者らが帰国してから00年5月の提訴まで約55年かかっていることから、不法行為の時点から20年が経過すれば賠償請求権が消滅する民法上の「除斥期間」の規定を適用、また、安全配慮義務違反については、1986年以降、中国国民が自由に出国できるようになった時点から、賠償請求が可能だったとして、すでに14年過ぎているなどとして、時効(10年)の成立を認定、三井鉱山に計1億6、500万円の支払いを命じた一審福岡地裁判決(福岡地裁:強制連行福岡訴訟で三井鉱山に賠償命令、国への請求は棄却(02年4月26日)を取り消し、元労働者側の請求を棄却する逆転敗訴を言い渡した。

 この裁判は、中国人15人が00年5月から01年10月まで三次にわたり福岡地裁に提訴。一審判決は国に対する請求は、国家無答責の法理を採用して棄却していたが、強制連行及び労働を国と企業の共同不法行為と認定し、一連の戦後補償裁判で初めて企業の賠償責任を認め、三井鉱山に賠償を命じた。

 なお、中国人強制連行巡る訴訟は全国で他に10件ある。04年3月の新潟地裁判決新潟地裁;大戦中の中国人強制連行、国に初の賠償命令(04年3月26日)では初めて国の賠償責任を認めた。

 

 大阪地裁;憲法判断に踏み込まず請求棄却 靖国訴訟・大阪地裁(04年5月13日)=判決全文

 

 01年から03年にかけての3度にわたる小泉純一郎首相の靖国神社参拝で精神的な苦痛を受けたとして、台湾人124人を含む計236人が、国、首相、靖国神社に1人1万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

判決は、首相の神社仏閣への参拝については、「一般の公務員などと違い、すべてを私的な領域とすることはできない」とした上で、首相の個々の参拝が、国の機関としての行動にあたるかどうかを検討、参拝で公用車を使い、秘書官を同行させたことについては、「緊急事態や警備のため」と指摘、「内閣総理大臣」と記帳したり、その肩書をつけて献花したりした」ことについても、「肩書を明らかにして社会的影響力の存在を示すことは私的領域においても行われることである」とし、結局、「参拝は国の機関としての首相の職務行為とは言えない」との初めて判断を行い、憲法判断に踏み込まないまま請求を全面的に退けた。

 なお、小泉首相の靖国参拝の違憲性を問う訴訟は全国6地裁で7件起こされており、今回の判決は大阪(第1次)、松山、福岡に次ぎ4番目。

 

 名古屋高裁;文春への賠償請求を棄却 連続リンチ殺人の記事で(04年5月12日)

 

 1994年に仲間と共謀して大阪、愛知、岐阜の3府県において計4人を殺害した連続リンチ殺人事件で強盗殺人罪などで起訴された事件当時18歳の男性(28)が、97年7月、本名と似た名前を使ったり、非行歴や結婚歴などを載せて報道され、プライバシーを侵害されたとして週刊文春の発行元の文芸春秋に100万円の損害賠償を求めた訴訟の差し戻し控訴審判決があった。

判決は、「少年時の犯行だからといって直ちに公共の利害に関する事実は否定されない」「記事の公表は、男性が受ける被害に勝る」とし、約30万円の支払いを命じた一審判決を取り消し、請求を棄却した。

 なお、一審と差し戻し前の二審は「記事は少年事件で個人が特定できる報道を禁じた少年法61条に反する」と判断しtが、最高裁が2003年3月、記事は少年法に違反しないとした上で「プライバシー侵害の部分があり、文春に賠償責任があるか、審理を尽くすべきだ」として差し戻していた。

 

 東京地裁;スピッツ犬の医療過誤訴訟で獣医師らに80万円命令(04年5月10日)

 

 02年12月下旬に糖尿病のスピッツ犬(メス、当時9歳)に嘔吐(おうと)などの症状が出たため、東京都大田区の動物病院に入院したが、治療ミスで03年1月3日に転院先で死んだとして、飼い主の夫妻が、同病院の院長と当時の担当獣医師2人の計3人に438万円余の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。 

判決は、夫妻が結婚10周年を機にこの犬を飼い始め、10年近く子どものようにかわいがっており、「生命を持たない動産と異なり、犬などの動物は飼い主にとってかけがえのない存在になることがある」ことを認めた上で、「必要なインスリンの投与療法をしなかった」と述べ、院長と獣医師1人に慰謝料60万円を含む計80万円余の支払いを命じた。

 死んだ猫をめぐって02年に宇都宮地裁が93万円の賠償を命じるなど、ペット医療過誤訴訟の賠償額が高額化しているが、慰謝料だけで60万円を認めたのは過去に例がない。

なお、この裁判は、医療専門の部署で審理が行われた。

 

 東京地裁:2ちゃんねるに開示命令(04年5月7日)

 

フリージャーナリストら3人が、03年5月から7月にかけて「原告が犯罪に関与している」などとした名誉を傷つける書き込みをされたとして、インターネットの掲示板「2ちゃんねる」の運営者に発信者に関する情報の開示を求めた訴訟の判決あった。

判決は、原告の請求をほぼ認め、「原告が犯罪に関与しているなどのメッセージは名誉棄損に当たる」と指摘した上で、プロバイダー責任法に基づき、発信者情報の開示義務があると判断して、発信機器を特定できるIPアドレスの開示を命じた。

 なお、原告の3人は訴訟と並行して同じ内容の仮処分を申請。東京地裁が04年4月9日、申請を認めたが、2ちゃんねる側は仮処分に従っていない。

 これに関して原告の一人は「通信記録の保存期間が過ぎるまで訴訟を引き延ばすため、徹底的に裁判所を無視している。悪質だ」と話している。

 

 最高裁;筑豊じん肺で国の責任を初認定 患者勝訴が確定(04年4月27日)=判決文全文

 

福岡県筑豊地方の炭鉱で働き、じん肺にかかった元炭鉱労働者とその遺族計176人(144人がすでに死亡)が、戦後の復興と経済発展に尽くした炭鉱労働者の安全への配慮(細かい粒子の飛散を防ぐ「湿式化」を省令で定めるなど)の対策を怠ったとして、国と日鉄鉱業(東京都千代田区)に総額約18億7、000万円(1人当たり3、300万円)の損害賠償を求めた筑豊じん肺訴訟の最高裁判決が、85年12月の提訴から18年目4か月ぶりにあった。

判決は、「国は法律に基づき省令を定めるなどして企業にじん肺防止を規制・指導監督する権限を持つ」とした上で、「権限不行使が、許される裁量の限度を逸脱して著しく合理性を欠く場合は国家賠償法上の責任を負う」とする基準を示し、「遅くとも60年に旧じん肺法が施行された時点で、粉じん防止のために削岩機の湿式化などを義務づけて適切な措置を実施させる必要があったのに、旧通産相が86年に旧省令を改正するまで、散水や防じんマスクの着用を一部にしか義務づけなかったのは『違法』」と判断、二審・福岡高裁判決を支持、一生治ることのないじん肺の発症と被害拡大を防ぐための対策を怠った国の責任を初めて認定、また、「戦前から炭鉱でも患者が発見され、55年ごろまでには、対策の必要性について明確な認識が形成された」にもかかわらず、「散水・噴霧、湿式削岩機の導入、防じんマスクの使用や従業員教育などの面で十分な対応をしなかったのは、信義則上求められる安全配慮義務に違反した」として日鉄鉱業の責任を認定、さらに、損害賠償請求権の消滅時効(10年)や、すべての権利がなくなる除斥(20年)の主張については、「病気の発生時ではなく死亡時から進行する」とする判断を示して、救済対象の範囲内だと結論づけた国と同社の上告を棄却する判決を言い渡した。これで、国と同社に総額計約5億6、559万円の損害賠償を命じた判決が確定した。

一審・福岡地裁飯塚支部は95年7月、企業6社の責任を認めたが国の責任は認めなかった。これにたいして二審は01年7月、「権限不行使は許容される裁量の範囲を逸脱して著しく不合理だ」と国の不作為の責任を認め、日鉄鉱業以外の2社の分も合わせて約7億4、600万円(うち企業との連帯負担分約4億1600万円を含む)の支払いを命じた。

なお、提訴段階の被告企業6社のうち、日鉄鉱業を除く5社は、控訴審の途中か上告後に患者らと和解が成立したが、日鉄鉱業だけが「時効が成立している」と争ってきた。

 

 東京高裁;発明対価1、265万円 日立金属の特許訴訟(04年4月27日)

 

日立金属(東京)在職中の1983年、新しい永久磁石素材の開発をしていた際、窒素を含ませて磁力を強める手法を発明(特許は日立金属が取得)した元研究員が、特許権譲渡の対価として会社に約8、900万円の支払いを求めた訴訟の控訴審判決があった。

判決は、会社側の「特許権譲渡の時点で将来の利益を予測し、投資リスクを差し引いて算定すると相当対価は約60万円」との主張を、「会社側主張の計算方法は、特許による実績(利益)を基に毎年、報奨金を支給することを定めた社内規定に反する。会社が得た利益を基に発明者の貢献度を考慮して算定するべきだ」と退けした上で、会社側が得た利益について、一審認定額に一審判決後に得た約1、460万円を加えて1億3、750万円余りと算定し、一審同様に「元研究員の貢献度は10%」として約1、375万円を相当対価とし、受け取り済みの報奨金など計約110万円を差し引いて、約1、130万円の支払いを命じた一審東京地裁判決を約135万円増額し、1、265万円の支払いを命じた。

 

 元軍属男性の敗訴が確定 台湾BC級戦犯訴訟(04年4月23日)

 

戦時中の1942年から約3年間、旧日本軍軍属として台湾から捕虜監視員としてボルネオに派遣された、BC級戦犯として処罰を受けたとして、台湾出身の原告(78)=宮崎県佐土原町=が、国に補償などを求めた訴訟の最高裁(第2小法廷)判決があった。

判決は、「第2次世界大戦と敗戦によって生じた戦争犠牲や戦争損害に属する」と指摘したが、「これに対する補償は憲法が全く予期しておらず、政策的見地からの配慮をするかどうかが考えられるにすぎない」と述べ、請求を退けた1、2審判決を支持、林さんの上告を棄却した。これで敗訴が確定した。
 なお、原告は戦後、捕虜を虐待したとして連合国側の軍事裁判で禁固15年の判決を受け、約11年間服役、巣鴨刑務所などに服役し、56年8月、30歳で釈放された。72年に日本国籍を取得、82年には子供の住む宮崎県に移り、84年に国に旧軍人普通恩給を請求したが、戦犯としての拘禁期間が在職年数に加算されず、支給要件を満たさないとして認められなかった。

 

☆ 最高裁;マンション滞納管理費は「定期給付債権」、請求は5年間(04年4月23日)

 

 埼玉県草加市のマンション管理組合が管理規約などに基づき、部屋を購入した男性に、前の所有者が滞納していた1992年1月〜98年4月までの管理費など約174万円の支払いを求め、2000年に提訴した訴訟の上告審判決があった。

判決は、請求可能な期間を10年間として全額の支払いを命じた1、2審判決を変更、男性側の「管理費は毎月支払うべきもので、請求権が5年間で消滅する『定期給付債権』に当たり、請求の一部は時効になっている」との主張を容認する判断を示した。
 なお、分譲マンションの管理費をめぐっては、住宅ローンの返済に追われて支払いが滞ったり、前所有者の滞納分についてトラブルとなるケースなどが全国で相次ぎ、不動産業界の現場でも5年説、10年説が混在していることから、管理組合との間で訴訟が頻発している。

 

 最高裁;学内組織に「大学に解散権」ある(04年4月20日)

 岡山大学の全学生や職員らの組織で、文化・体育の学生サークルに、学校からの補助金を分配するなどの支援をするため、1949年に設立され大学の承認を受けた法人格のない学内団体「岡山大学学友会」が大学によって解散させられたのに伴い、解雇された元嘱託職員の男性が、大学側に雇用関係の確認などを求めた訴訟の上告審判決があった。

判決は、学校教育法の規定から「大学は課外活動が円滑、効果的に行われるよう指導する責務を負う」との見解を示したうえで、学友会会長が大学長であることや事務室が大学構内にあることなどを考慮し、「(団体の活動状況が)承認時の趣旨に反しており、改善も困難など相当な理由がある場合は、課外教育の一環から、大学側が学友会のあり方を是正するのは当然で、かつ大学は解散を決定できる」とする初判断を示し、大学側敗訴の03年2月の広島高裁岡山支部判決を破棄して、男性側の請求を退ける判決を言い渡した。これで、男性側の敗訴が確定した。

なお、1審・岡山地裁は01年、男性敗訴の判決を言い渡したが、2審は逆転判決だった。

 

 高松高裁;大洲市名簿公開訴訟、2審も住民側が勝訴(04年4月15日)

 

愛媛県大洲市が02年1月、同市のダム建設計画をめぐり、原告市民らが01年に建設の是非を問う住民投票の実施を求めて署名活動を展開した際の署名した約1500人の名前や住所、生年月日が記載され名簿を情報公開請求により公開したのはプライバシー権の侵害として、市民187人が市に1人当たり10万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決があった。

判決は、大洲市の「原告らの権利を侵害した事実はない」と控訴理由を退け、「プライバシー権を犠牲にしてまで開示する必要はない」として、原告187人について1人当たり5万円の賠償請求を認めた1審松山地裁判決を支持し、市側の控訴を棄却した。

 

☆ 東京地裁;過払い返還金、戻すよう国に命令(04年4月14日)

 

障害年金を規定よりも多く受け取っていたために国から5年間の過払い分109万円余の返還を求められた男性(62)が、社会保険庁による返還処分の取り消しを求めた訴訟の判決があった。

判決は、「男性は年金以外に収入はなく、減額されたうえ過払い分を返還することは、著しい不利益」と指摘し、返還処分を違法と認定、国側に対し既に返還された56万円余を男性に戻すよう命じた。

 

☆ 東京地裁;2ちゃんねるの発信者情報開示命じる仮処分(04年4月9日)

 

 03年、武富士の疑惑について雑誌に記事を書いたところ、これらの記事に関連する中傷発言が相次いで2ちゃんねるに書き込まれたインターネットの掲示板「2ちゃんねる」で中傷する発言を掲載されたとして、ジャーナリスト3人が、2ちゃんねるの管理人に発信者情報の開示を求めた仮処分申請についての命令があった、

仮処分命令は、ネット上のプライバシー侵害に対応するために制定されたプロバイダー法に基づき、発信者情報の開示を命じたもので、これまで同種の判決はあったが、仮処分命令は極めて珍しい。

なお、ジャーナリストは03年11月、発信者のIPアドレスと発信日時の開示を求める訴訟を起こしたが、管理人側が出廷しなかったため、3月に仮処分を申請していた。

 

 福岡地裁;九州靖国訴訟、泉首相の靖国神社参拝は違憲(04年4月7日)==小泉首相靖国神社参拝問題

 

泉首相が01年8月に首相就任後初めて靖国神社に参拝、「総理大臣である小泉純一郎が心を込めて参拝した」などとの説明をしたのは、「参拝は政教分離を定めた憲法に違反しており、参拝によって信教の自由を侵害された」などと主張して、九州・山口の市民ら211人が首相と国に1人当たり10万円の損害賠償を求めた訴訟の判決あった。

判決は、国側の「私的参拝」との主張を退け、小泉首相の参拝は内閣総理大臣の職務として行われた公的な性格のものだったと認め、「その行為者の意図や目的、一般人に与える影響などを考慮し、社会通念に従って客観的に判断すると、憲法20条3項で禁止されている宗教的活動に当たり、同条項に反する」と述べ、小泉首相の参拝に対する初めての違憲の判断を示したうえで、「参拝により原告らが憤りなどを抱いたとしても、法的利益の侵害があったとは言えない」として、不法行為の成立は認めず、慰謝料請求は棄却した。

 なお、首相の靖国参拝をめぐる訴訟では、85年の中曽根首相(当時)の公式参拝について、91年1月の仙台高裁判決が「その目的は宗教的意義をもち、靖国神社の活動を援助する効果がある」と初めて違憲判断を示し、また、92年7月の大阪高裁判決も「宗教的活動に当たる疑いが強く、憲法に違反する疑いがある」と指摘している。

 小泉首相の参拝をめぐっては、東京、千葉、大阪、松山、福岡、那覇の計6地裁で起こされており、04年2月の大阪地裁判決は、憲法判断に踏み込まず原告の請求を退けたものの、「参拝は小泉首相が内閣総理大臣の資格で行った」として、公的な性格の参拝だったと認定、松山地裁は04年3月、公務性についても触れず、憲法判断も示さなかった。

 

 

九州靖国訴訟判決の要旨

 

 小泉純一郎首相は自民党や国民に批判があったのに、強い意志と政治的意図に基づき、戦没者の追悼の場所として必ずしも適当でない靖国神社への参拝を今後も続ける意向をしめした。

 

小泉首相は、本件参拝に際し、公用車を使用し、秘書官を随行させ「内閣総理大臣小泉純一郎」と記帳し「献花内閣総理大臣小泉純一郎」との名札を付した献花をし、参拝後に内閣総理大臣である小泉純一郎が参拝した旨、述べており、本件参拝は行為の外形において内閣総理大臣の職務の執行と認め得るものというべきであるから、国家賠償法1条1項の「職務を行うについて」に当たる。

 

 本件参拝は神道の教義を広め、春秋の例大祭や合祀(ごうし)祭等の儀式行事を行い、拝殿、本殿等の礼拝施設を備える宗教法人である靖国神社において、内閣総理大臣によりなされたものであり、その行為の行われた場所、その行為に対する一般人の宗教的評価、行為者の意図、目的、行為の一般人に与える効果、影響等諸般の事情を考慮し、社会通念に従って客観的に判断すると、憲法20条3項によって禁止されている宗教的活動に当たり、同条項に反する。

 

 本件参拝は、原告らに対して信教を理由として不利益な取り扱いをしたり、心理的強制を含む宗教上の強制や制止をするものではないから、原告らの信教の自由を侵害したものとはいえない。また、原告らの主張する宗教的人格権平和的生存権等は、憲法上の人権と認めることはできない。

 

原告らの主張する人格的利益は、憲法上の人権とはいえないものとしても、一般論として不法行為による被侵害利益たり得ないと解することはできない。しかしながら、本件参拝により原告らが不安感、憤り、危ぐ感等を抱いたとしても、その行為の性質上、これにより賠償の対象となり得るような法的利益の侵害があったものということはできず、本件参拝について不法行為の成立を認めることはできない。

 

 

☆ 福岡地裁;自殺“逆転”判決、保険金の支払い命じる(04年4月6日)

 

99年10月、大分県日田市の国道で軽乗用車を運転中、道路横のダムに車ごと転落、水死した福岡県太宰府市の中古車販売会社社長=当時(67)=の事故が自殺として保険金が支払われないのは不当、と遺族が三井住友海上火災など大手保険5社に約2億4、000万円を求めた訴訟の判決があった。

判決は、債務超過に陥っていた会社の経営状況や、死亡する数年前から多数の保険契約を結び、過去にも交通事故で高額の保険金を受け取っていた不自然さを挙げ「保険金の支払い条件である偶然の事故ではなく、保険金目的の自殺だ」との保険会社の主張を退け、「倒産が必至で自殺を決意するほどだった、とまでは考えがたい」と判断、死亡当時、男性が12社と計21件の生命保険契約などを結んでいた点についても「会社が保険の代理店でもあり、付き合いで契約に応じた結果であり、過去に多額の保険金を受領した経緯も不自然とは言えない」として、約1億8、500万円の支払いを命じた。

 

 東京高裁;週刊文春の出版差し止め命令を取り消す(04年3月31日)==⇒決定要旨=確定

 

「週刊文春」の出版差し止めを命じた仮処分決定を巡る保全抗告審で、発行元の文芸春秋(東京都千代田区)の申し立てを認め、東京地裁差止め命令を取り消す逆転決定を出した。

決定は、月刊誌の事前差し止めの是非が争われた「北方ジャーナル事件」の最高裁判決(86年6月)を踏襲、表現の自由を「民主主義体制の存立と健全な発展のために、憲法上最も尊重されなければならない権利」と位置づけたうえで「事前差し止めは表現の自由に対する重大な制約であり、認めるには慎重なうえにも慎重な対応が要求される」と判断、「長女らは私人に過ぎず、記事はその私事を内容としたもので、公益を図る目的がないのは明らか」と述べ、さらに「こうした内容を不特定多数にけん伝することで、長女らが精神的苦痛を被るのは当然」とプライバシー侵害を認定した「記事には公益性がなく、長女らのプライバシーを侵害するが、長女らの人格に対する非難とまでは言えず、日常生活で耳にし、目にする情報の一つに過ぎず、事前差し止めを認めなければならないほど、重大な損害を与える恐れがあるとまでは言えない」として差し止め命令を取り消した。

 

 水戸地裁;障害者虐待で勤務先の元社長に賠償命令(04年3月31日)

 

 水戸市内の段ボール加工会社「アカス紙器」で働いていた知的障害者の女性3人が、元社長(57)から性的暴行などを受けたとして総額3、000万円の慰謝料を求めた訴訟の判決があった。

判決は、元社長側の「日常的な虐待は一切なかった」「刑事裁判で有罪になった暴行以外の性的暴行などは事実無根」などと主張を「信用できない」と退け、92年から96年の間に、元社長が原告らに対し、殴るけるなどの暴行を繰り返した事実を認定、原告側らが刑事告訴したが、不起訴となった性的暴行についても「原告らの供述は中心的部分に関して終始一貫している」として、原告側の証言を採用したうえで事実と認めた上で、「(元社長は)原告らに身体的暴行や性的暴行を加えており、精神的苦痛を賠償する責任がある」として原告側の主張をほぼ全面的に認め、さらに、「知的障害者である原告は、アカス紙器以外の雇用先を見つけることが容易でない状況にあった」とし、元社長は原告が反抗したり、拒むなどができないという「優越的立場を利用して暴行を継続した」と厳しく断罪し、元社長に計1、500万円の支払いを命じた。

 なお、元社長は96年、障害者雇用に対する国の助成金をだまし取ったなどとして詐欺や傷害などの罪で起訴され、水戸地裁は97年、元社長に懲役3年、執行猶予4年の有罪判決を言い渡した(確定)。しかし、性的暴行については水戸地検が「被害日時が特定できない」などとして不起訴処分にしていた。

 

☆ 東京地裁;手術後の輸血ミスに賠償命令(04年3月31日)

 

 00年4月、大腸のポリープ摘出手術後、高熱と下血が続き、1週間後に急性胃かいようによる出血性ショックで死亡した千葉県市川市の男性(当時56歳)の遺族が、処置のミスを主張して同市の「日下部病院」を経営する医療法人と主治医に約9、400万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

判決は、遺族側が主張した手術方法や胃かいようの防止措置についての過失は認めなかったが、死亡前に連日1リットル以上の下血があったことに触れて、「主治医が必要な量の輸血をしていれば、死亡は回避された」として、輸血を怠った過失を認め、病院と主治医に約8、050万円の支払いを命じた。

 

 熊本・宮地簡裁;宿泊拒否で組織的と判断、アイスター前社長らに略式命令(04年3月29日) 

 

 熊本県南小国町の「アイレディース宮殿黒川温泉ホテル」がハンセン病歴を理由に、国立療養所菊池恵楓園(けいふうえん)(熊本県合志町)の入所者らの宿泊を拒否した問題で、宮地区検は04年3月29日、ホテルを経営する化粧品訪問販売会社アイスター(本社・東京)と、当時の経営トップだった西山栄一前社長(73)ら3人を旅館業法違反の罪で略式起訴した訴訟の判決があった。

判決は、同社が組織的に宿泊拒否を決めたと判断して同日、同社と西山前社長・成瀬ことみ取締役(55)、前田篤子・同ホテル総支配人(57)ら3人に罰金各2万円の略式命令を出した。

 なお、宿泊拒否による旅館業法違反の罪で刑事処分を受けるのは異例であるが、アイスターは同日、江口社長と弁護士の連名で声明文を出した。罰金を納付したことなど処分の経緯を説明した上で、「刑事処分に対して不服申し立てをいたしません」としている。

 

 東京地裁;元マネジャーに暴行、デヴィ夫人に450万賠償命じる(04年3月29日)

 

 2002年11月東京都内で、車を運転していた時、タレントのデヴィ夫人と口論になり、デヴィ夫人(64)から後頭部をこぶしでたたかれ、1週間のけがを負わされる暴行をされたなどとして、元マネジャーの男性(61)が、デヴィ夫人と所属事務所に対し、暴行に対する慰謝料と、時間外勤務手当など計約840万円の支払いを求めた訴訟の判決があった。  

判決は、「故意による暴行で通院を要する傷を負った、との供述は十分信用できる」として暴行の事実を認定、慰謝料と治療費約36万円と、時間外手当として約410万円の支払いを命じた。

 一方、デヴィ夫人は男性に対し、この暴行について「週刊誌の取材に真実ではないことを答え、名誉を傷つけられた」と1、500万円の損害賠償を求めたが、判決は、「一部は真実でなかった」として男性に10万円の支払いを命じた。

 

 東京地裁;週刊新潮記事めぐり謝罪広告と440万円賠償命令 (04年3月29日)

 

 「大使館に女性を呼んで買春した」などとする週刊新潮の02年12月12日号の記事で名誉を傷つけられたとして、ベラルーシの日本大使館で専門調査員として勤務していた男性が、発行元の新潮社(東京都新宿区)に1、 100万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決があった。

判決は、「一般読者が男性と特定できなくても、面識があったり、経歴にある程度知識がある人には、男性だと分かる」と指摘したうえで、「売春婦の証言以外には記事を裏づける直接の証拠がないが、夜間に大使館を訪れた者しか分からないような特別な内容が含まれておらず、信ぴょう性が乏しい」と名誉棄損を認定し、440万円の支払いと謝罪広告の掲載を同社に命じた。

 

 東京地裁;椎名桜子さんのプライバシー侵害、月刊誌に支払い命令(04年3月26日)

 

 月刊誌「噂(うわさ)の真相」(休刊)の01年11月号の記事で自分の名誉や家族のプライバシーが侵害されたとして、作家椎名桜子さんと家族が同誌と編集長らに2、200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

判決は、「シングルマザーであることは原告自ら公表しているが、一般に知られていない私生活の部分を公開する公共性は見いだせない」と述べた上で、「ゴーストライター疑惑」などの記述も「真実と信じた理由は何もない」「『スキャンダル女王』など、ふしだらな女性作家との意見や論評は行き過ぎだ」として名誉毀損の成立も認め200万円の賠償を、さらに、掲載当時2歳と4歳だった2人の幼児についても「こどものプライバシーを著しく侵害した」と述べ、1人につき55万円、(総額330万円)の支払いを同誌側に命じた。

なお、幼児のプライバシー侵害を認めた判決は初めて。

 

 新潟地裁;大戦中の中国人強制連行、国に初の賠償命令(04年3月26日) ==判決要旨高裁最高裁

 

第2次大戦中の1944年夏、中国・山東省などからから強制連行され、新潟市の新潟西港の港湾運送会社「新潟港運」(現リンコーコーポレーション)で、終戦までの約1年間、食事はわずかしか与えられず、暴行を受け、賃金も払われないという劣悪な環境で石炭運びなどの労働を強いられたとして、王成偉さん(76)ら中国人の生存者10人(原告の1人張文彬さん〔83〕は、広島で原爆に被爆した補償も求めた)と死亡者1人らが、国と会社を相手取り、総額2億7、500万円(1人当たり2、500万円)の損害賠償を求めていた訴訟の判決があった。

判決は国と会社側の、不法行為から20年で請求権が消滅する「除斥期間」の主張を容認しつつ、国側が主張した国家賠償法施行前は国の行為について個人は賠償請求できないとする「家無答責」を排斥、また国と会社は「労働者に極めて不十分な食事、衣料しか与えず、宿舎に布団・暖房はなく、入浴もさせなかった。訓練なしに危険な労務をさせ、日常的に暴力で監督した」「人としての尊厳を保ちながら安全に生活・労働できる程度」の安全配慮義務を怠ったと認定、さらに、消滅時効の援用を「国と会社は戦後、強制連行の全ぼうを把握していたのに隠すなど不誠実で、実質的に提訴を妨害した。信義に反する権利濫用」として退け、国と会社に連帯し総額8、800万円(1人当たり800万円)を支払うよう命じた。

なお、中国人強制連行訴訟は、東京、京都、福岡など全国で12件提訴され、現在11件が係争中であるが、国に賠償を命じたのは初めて。また、企業に賠償を命じたのは、2002年4月の福岡地裁判決(福岡高裁で係争中)に次いで2件目である==札幌地裁判決

 

☆ 東京地裁;文芸春秋社に200万円の賠償命令(04年3月25日)

 

 『週刊文春』02年10月31日号で、「新聞協会賞受賞 女性記者のスピーチに待ったをかけたあの大物」との見出しの記事を掲載され、当時日本新聞協会会長だった渡辺会長が協会賞の授賞式でスピーチする受賞者の人選に影響力を行使したと報じたことから、名誉を傷つけられた、として渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長が、発行元の文芸春秋(東京)などに3、000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

判決は、「記事内容は真実と認められず、関係者から得たとする情報も具体性を欠いている」として名誉毀損を認め、200万円の支払いを命じた。

 東京地裁;無年金障害者「放置は違憲」、国家賠償命じる(04年3月24日)

 

89年に国民年金法が改正されて強制加入の対象になるまでは任意加入だった国民年金の保険料を任意加盟当時に支払っていなかったことを理由に学生時代(当時学生の加入率は1〜2%)に事故や病気で重い障害を負った首都圏の元大学生4人が、最高月額約8万3、000円(傷害1級)の障害基礎年金を不支給とされた処分の取り消しと、1人当たり2、000万円の賠償を国側に求めた訴訟の判決があった。

判決は、障害基礎年金制度が創設された85年の同法改正を重視して、当時は大学進学率が高まっており、障害を負った時期が20歳の前か後かで支給の可否が分かれる学生の人数も急拡大していた事情を踏まえずに、「障害を負った学生が保険給付を受けられるよう立法的手当てをしないまま放置した(「少なくとも85年には是正すべきだった」)ことは法の下(もと)の平等を定めた憲法に違反する」と述べて国に計1、500万円の賠償を命じた。

 なお、厚生労働省の推定(02年7月時点)では、4人と同じように障害基礎年金の支給を受けていない学生無年金障害者全国で約4、000人(主婦、外国人、未払い者を含めた無年金障害者は、厚生労働省の推計で約12万人)もおり、同様の訴訟は、この訴訟も含め計30人が札幌・大阪や福岡など全国9地裁に起こしており、24日の判決が司法の初判断となった。

 

☆ 東京地裁;「ネット記事の見出しに著作権なし」(04年3月24日)

 

インターネットに流すニュース記事のために作った見出しが無断で使われたとして、読売新聞東京本社(東京都千代田区)が、ホームページ(HP)用コンテンツ制作会社「デジタルアライアンス」(神戸市)を相手に見出しの使用差し止めと6、825万円の損害賠償を求めた訴訟の判決あった。

判決は、「問題の見出しは25字以内と短いうえ、客観的事実や短い修飾語を付け加えた記述だけで、創作的表現は認められない」と述べたうえで、「見出しは読売側がネット上で無償で公開した情報で、利用は本来自由であり、かつ、被告が不正に利益を図ったなどの事情もない」して、著作権法で保護される著作物ではないとの判断を示し、読売側の請求をすべて棄却する判決を言い渡した。

 なお、アライアンス社が提供するのは、電光掲示板のように様々なニュースの見出しが流れる「ライントピックス」というサービス。

 

☆ 東京地裁;NHK番組の制作会社に賠償命令 「取材先の信頼侵害」(04年3月24日)

 

東京で00年12月8日から5日間、民間人によって開催された「女性国際戦犯法廷」についてNHK教育テレビの01年1月30日に放映した「問われる戦時性暴力」と題した番組が、主催者側の意図に反する内容(実際に放映された番組では、慰安婦らへの性暴力について、昭和天皇と日本国家に責任があると判断した「法廷」の結論などがすべてカットされていた)に改変されたとして、共催者の市民団体『戦争と女性への暴力』日本ネットワーク」(バウネットジャパン)とその代表側が、NHK側を相手に2、000万円の慰謝料支払いを求めた訴訟の判決があった。

判決は、取材される側が番組内容に抱いた「期待・信頼」は法的保護の対象になると判断、その「期待権」を侵害した場合には、取材者に賠償の責任が生じると判断し、また、取材する側とされる側の約束はその後の番組内容にも及ぶとした上で、「番組内容は、当初の企画と相当乖離(かいり)しており、取材される側の信頼を侵害した」と述べて、実際に取材にあたったNHKの孫請け制作会社「ドキュメンタリー・ジャパン」(DJ、東京都港区に100万円の支払いを命じた。なお判決は、 「放送事業者には、取材素材を自由に編集して番組制作することが保障される」などと述べ、NHKに賠償責任はないと判断、NHKへの請求は棄却した。

放映に関して主催者側のバウネットは、DJの要請に応じて開催前や開催当日に特別な便宜を図っていた。

原告は、孫請けの番組制作会社のみに慰謝料の支払いを命じた東京地裁の判決を不服として控訴。

 

☆ 東京高裁;講演出席者名簿提出、早大に慰謝料支払い命令(04年3月23日) 

 

 中国の江沢民国家主席(当時)が98年11月に早稲田大学で講演した際、出席予定の学生ら約1、400人分の名簿(講演会参加を事前登録した学生約1、400人分の氏名、住所、電話番号、学籍番号)を、学生らの同意を得ずに大学側が警視庁に提出したことは不当だとして、元同大学生3人が1人当たり慰謝料など33万円の支払いを求めた訴訟の差し戻し後の控訴審判決があった。

判決は、「大学が無断で個人情報を警察に開示したのはプライバシー侵害にあたる」と述べたうえで、「中国の核軍拡反対」と大声で叫び、横断幕を掲げて警官に身柄を拘束された点を重視、3人が講演中に「参加申し込みの時点で講演妨害目的を持っており、妨害行為をしなかった6人の訴訟よりも慰謝料額は下回る」と結論づけ、1人につき5、000円の支払いを命じた。

 なお、03年9月の最高裁判決は、氏名や住所など個人の識別情報を無断で提供した行為はプライバシー侵害だとして原告の元学生3人に損害賠償請求権を認めて差し戻すとともに、別に訴訟を起こした6人については1人1万円の慰謝料を認めた。

 

☆ さいたま地裁;主治医らに7600万円賠償命令 埼玉医大医療過誤訴訟(04年3月24日)

 

埼玉県川越市の埼玉医大総合医療センターで00年、抗がん剤を過剰投与され死亡した同県鴻巣市の女子高生(当時16)の遺族が、埼玉医大と元主治医(34)ら6医師を相手取り約2億3、000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

判決は、大学と主治医ら3医師の医療過誤を認め約7600万円の支払いを命じた。なお、遺族側は、死因を故意に隠蔽(いんぺい)され、精神的苦痛を受けたとして大学と院長ら4医師に慰謝料も求めていたが、これに関して判決は、「病死」とした死亡診断書の虚偽記載を認定したが、「積極的な隠蔽目的と認めるべき事情はない」と退けた。

 

☆ 札幌地裁;中国人強制連行の賠償請求、20年で権利消滅(04年3月23日)==判決要旨

 

第2次大戦中に強制連行され、北海道内の炭鉱などで過酷な労働を強いられたとして、現在中国に住んでいる中国人男性43人(うち7人は死亡)が国と三井鉱山、住友石炭鉱業、熊谷組、三菱マテリアル、新日本製鉄(以上東京都)、地崎工業札幌市など企業6社を相手に総額8億6、000万円(1人あたり2、000万円)の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟(99年9月に提訴し、02年8月に追加提訴)の判決があった。

判決は、03年1月の京都地裁、同3月の東京地裁判決で相次いで排除された、旧憲法下での国の行為について責任を負わないとする「国家無答責」(国家賠償法施行された1947年以前の国の行為の責任は問えないと)の論理を持ち出した国側の主張も認めた上で、強制連行や強制労働については、「労働力の不足を補うため、国が企画立案し、国と企業が実施した」と、国と企業による共同不法行為を認定したものの、「(除斥期間の適用が)著しく正義・公平の理念に反するというべき特段の事情があるとはいえない。請求権は消滅している」と判断して、20年で損害賠償請求権が消滅するという民法の規定(除斥期間)などを適用し、原告の請求を棄却した。

 なお、中国人の強制連行をめぐる判決では、福岡地裁が02年4月、除斥期間の適用を制限し、三井鉱山に総額1億6500万円(1人あたり1100万円)の支払いを命じたが、除斥期間の適用と国家無答責の両方を認められたのは初めて。また、12件ある中国人強制連行訴訟のうち、1審での原告側敗訴は5件目である。

 

 東京地裁;議員の名誉棄損訴訟で新潮社に100万円賠償命令 (04年3月23日)

 

 02年4月25日号『週刊新潮』の「『鈴木宗男団長』サハリン訪問議員団の『買春』疑惑話」の記事で名誉を傷つけられたとして、桜田義孝衆院議員(自民、比例南関東ブロック選出)が、発行元の新潮社(東京都新宿区)と編集長に1、000万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決があった。

判決は、「売春で知られるバーに議員らが行った事実から、議員の一部が買春をしたとの疑いを抱くこと自体は、それなりに首肯できる」としながらも、「記事には買春をしたという明確な指摘はないが、買春をしたという印象を読者に与える」と認定、「公益性はあるが、買春が真実であるとも、真実であると信じた十分な理由もない」として名誉棄損の成立を認めた。ただ、「自ら疑惑をもたれるような行動をした」と指摘した上で、最近では比較的低額な賠償額である100万円の支払いを同社側に命じた。

 

 東京地裁;サンデー毎日記事で名誉棄損、330万円賠償命令(04年3月22日)

 

02年4月21日号『サンデー毎日』「1兆円市場 ダイヤモンドに気をつけろ/組織的インチキ表示発覚」の記事で「原告の鑑定会社の信用は著しく低下し、取引先からも取引を中止された」と、名誉を傷つけられたとして、宝石の鑑定会社が発行元の毎日新聞社(東京都千代田区)を相手に3、300万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

判決は、「記事は重要部分が真実でなく、真実と信じた相当の理由もない」と述べ、損害を回復するには、金銭の賠償だけでなく、全国の消費者に向けた同誌での謝罪広告が必要だと判断、330万円の支払いと謝罪広告の掲載を同社に命じた。

 

☆ 東京地裁;週刊文春に出版差し止め仮処分 田中前外相長女の記事で(04年3月16日)

  

04年3月17日に発売予定の『週刊文春(3月25日号)』に、「独占スクープ」と題し「田中真紀子長女 わずか1年で離婚」などのタイトルで、田中真紀子前外相の長女の私生活に関する記事が掲載されることをめぐりは、長女側が「プライバシーを侵害している」との理由で、同誌を発行する文芸春秋(東京都千代田区)に対し、この号の出版を禁止する仮処分命令を求める訴訟の決定(1人の裁判官が短時間に行った)があった。

決定は、記事は3ページにわたって、長女の離婚に関する私生活について記載している部分を「切除または抹消しなければ、これを販売したり、無償配布したり、または第三者に引き渡してはならない」と仮処分を命じた。政治家の親族が、プライバシーを理由に出版禁止の仮処分を申請したのは例が少なく、また、販売部数が多く、影響力の大きい週刊誌の発売前日に出版禁止の仮処分を命じられるのも極めて異例であるが、同社は、すでに74万部を出荷しておりそれは回収しないが、今後出荷予定であった約3万部の出荷を止めた(週刊文春の発行部数は81万部)。

だが、雑誌はすでに流通ルートに乗っているうえ、大手出版社の週刊誌の差し止めと有名人の長女の問題ということ話題になることとも相俟って、かえって雑誌は売れ、長女側の「訴えの利益」は事実あまりない結果となる。

文春側は「言論の制約」として、3月17日に異議を申し立てた。

なお、雑誌をめぐっては、最高裁大法廷が86年6月、販売予定の月刊誌「北方ジャーナル」の記事について名誉棄損の成立を認めたうえで、販売禁止を命じた仮処分決定を支持しており、小説では同じ最高裁が02年9月、芥川賞作家の柳美里さんのデビュー小説「石に泳ぐ魚」のモデルになった女性の主張を認め、「出版されれば、重大で回復困難な損害を被る恐れがある」と判断、柳さんと発行元の新潮社などに出版差し止めなどを命じた2審判決が確定した(最高裁の判例は、「内容が真実でないか、公益目的でないことが明白で、被害者が重大で回復困難な損害を被る恐れがある時」に限定している。また、差し止めによって、「表現の自由」などが侵害される恐れがあるため、あくまでの例外的な手段としてのみ認めている)。

また、89年にも、東京地裁が仙台育英高校の元教諭が同校を経営する仙台育英学園を内部告発した書籍について、プライバシーにかかわる部分の発売禁止を認めた出版物の販売・出版禁止の仮処分申し立てが認められており、さらに、97年には、宝塚歌劇団のトップスターらの住所や本名を掲載した「タカラヅカおっかけマップ」などに販売禁止が命じられた

このほか、サッカーの中田英寿選手が「勝手に半生記を出版された」として出版社と争った訴訟でも、東京地裁が00年、発行差し止めと385万円の支払いを命じており、芸能人に関連した出版物に対しても、同様の仮処分決定や判決が出されている。

 

 松山地裁;小泉純一郎首相の靖国神社参拝、『公権力の行使』にあたらず、訴えを却下(04年3月16日)

 

小泉純一郎首相の01年8月13日、02年4月21日、03年1月14日に行った靖国参拝(4次にわたり提訴)は、政教分離も原則を定めた憲法に違反するなどとして、四国の戦没者遺族ら133人と2宗教法人が、小泉首相と国、神社に違憲確認や1人当たり1万円の損害賠償などを求めた訴訟の判決があった。

判決は、小泉首相の参拝について「法律の根拠に基づかない単なる事実に過ぎず、国民との間で権利義務関係が生じる公権力の行使には該当しない」とした上で、「違憲確認をしても原告に利益がない」と判断、憲法判断に踏み込まないで、「参拝は『公権力の行使』にあたらず、原告の訴えは不適法」などとして違憲確認と参拝差し止めの訴えなどを却下、同時に損害賠償請求については棄却した。また、原告側の「他人の干渉を受けずに個人の死を静かにしのぶ権利(宗教的人格権)を侵害され、苦痛を受けた」との訴えについても、「戦没者をどのように回顧するかに関して、自ら決定し、行うことが制約されたということはできず、利益の侵害は認められない」とした。

原告側は控訴する。

 なお、小泉首相の靖国参拝を巡っては、全国6地裁に同様の訴訟が起こされ、松山地裁判決は、2月27日の大阪地裁に続くもの。大阪地裁は参拝の公的性を認定したが、憲法判断はしなかった。これに対して松山地裁は、公的か私的かについても触れなかった。

 

 

判決原文(全文)

 

  「本件参拝は、被告小泉が靖国神社に参拝したというものにすぎず、原告らに何らかの強制力を及ぼしたり、原告らを不利益に取り扱ったりするものではないから、本件参拝によって、原告らが戦没者に関する祭祀等について自ら決定し、行うことが制約されたということはできない。したがって、本件参拝によって原告ら主張の利益の侵害があったとは認められない。」

 

 

 

 最高裁;第3小法廷学資積み立て理由の生活保護費減額は違法(04年3月16日)

 

 生活保護を受けていた福岡市東区の元大工(提訴後に61歳で死亡)が1976年、高校生活に費用として長女名義で月3000円の学資保険に加入、90年に約45万円の保険金を受け取とったが、福祉事務所は大部分を収入と認定、家族4人分の保護費を半年間、月額約18万円から約9万5000円に減額した。この処分の是非が争われた訴訟の上告審判決あった。

判決は、預貯金や保険金などは原則的に資産と認定してきたこれまでの厚生労働省の運用をくつがえし、「保護費などを貯蓄に充てることは本来、生活保護法の予定するところではない」「保護費を受給者の需要に完全に合致させることは困難。世帯主などに家計の合理的な運営をゆだねていると解釈するのが相当」とし、節約で貯蓄可能な金銭が生じることも考えられると指摘、ほとんどが高校に進学する状況や進学が自立に役立つことも考慮し、「生活保護法の趣旨にかなっていれば、保護費を原資とする貯蓄などは収入と認定すべき資産には当たらない」とする初判断を示した上で、「高校修学のための費用を蓄える努力をすることは法の趣旨目的に反しない」として減額を違法と判断し処分を取り消した二審・福岡高裁判決を支持し、福岡市東福祉事務所長の上告を棄却した(行政側敗訴確定)。

なお、違法な減額処分による賠償も求めたが、第3小法廷はこの点についての原告側の上告は棄却した。

 一審・福岡地裁は95年、「保護費を蓄えなければ、高校進学ができなくなる」と、保護費からの貯蓄を認めない行政を批判したが「学資保険は進学目的だけだったとは言い難い」と請求を退けたが、福岡高裁は98年、「保護費からの預貯金は目的や金額が法の趣旨から逸脱していなければ、保護費を減額するべきではない」と判示していた。

 

☆ 東京地裁;戸籍続柄、婚外子区別はプライバシー権侵害 地裁、差し止め認めず(04年3月2日)

 

 「慣れ親しんだ自分の姓を大切にしたい」との思いから婚姻届を出さずに事実婚を選んだ夫妻85年8月に女の子が誕生、夫婦は、当時住んでいた東京都中野区に届けたが、区は、一見して婚外子と分かる「女」と記載したため、婚姻届を出した夫婦の子(嫡出子)は、戸籍の続柄に「長男」「二女」などと書かれ、婚外子(非嫡出子)は「男」か「女」と区別して記載されるのは、不当な差別を生むとしてとして、夫妻が、国と同区を相手に99年に提訴した訴訟の判決があった。

判決は、国側の「非嫡出子は嫡出子の半分しか相続権が認められず、記載を区別する必要がある」との主張を退け、「非嫡出子は今も就学、就職、結婚時に見過ごしがたい不利益な取り扱いを受けている」と指摘した上で、社会生活で戸籍謄本の提出を求められることも多く、差別を助長する実態がある点も踏まえて、「一見して明らかな記載方法を用いる必要性は乏しい」と結論づけ、「区別記載は戸籍制度の目的の必要限度を超え、プライバシー権の侵害だ」との初判断を示した。さらに、非嫡出子かどうかは、認知の記載や、父親欄の空白で判別できる、とも述べた。

ただし、法相が続柄欄の記載を改廃しなかったことに注意義務違反はなかったとして、記載の差し止めや計400万円の慰謝料請求は退けた。

 夫妻側は、区別記載が法の下の平等を保障した憲法に反するとも主張したが判決は憲法判断には踏み込まなかった。

 なお、夫妻は、戸籍と同じ記載だった住民票をめぐっても88年に提訴したが、この裁判などをきっかけに、95年3月からは、記載を「子」に統一するよう旧自治省が通達を出した。この結果、訴えの利益がなくなったなどとして、99年に最高裁で原告側の敗訴が確定したが、この訴訟で二審・東京高裁判決は「差別記載は法の下の平等を定めた憲法違反」との判断を示している。

 

☆ 大阪地裁;小泉首相の靖国参拝「公的」、賠償請求は棄却(04年2月27日)

 

 小泉首相の01年8月の靖国神社参拝は「憲法の定める政教分離原則に反する」として、旧日本軍人・軍属の遺族ら計631人が国と首相、靖国神社を相手に、1人あたり1万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

判決は、小泉首相側の「参拝は、憲法で小泉に保障されている信教の自由にもとづくものだ」との主張や、国などの「私的参拝」との主張を退け、小泉首相がその年の総裁選時から参拝を公約とし、就任後も国会で「内閣総理大臣として参拝するつもりだ」と発言したことや、参拝には秘書官が同行して公用車を使い、「内閣総理大臣小泉純一郎」と記帳、献花したことなどの事実を指摘したうえで、「献花料を公費で出していないことなどを考慮しても、総理の資格で参拝した(首相の職務としての公的な参拝)と認めるのが相当」と結論づけた。

しかし、憲法の政教分離原則の判断には踏み込まず、「原告らの信教や良心の自由は侵害されていない」として、賠償請求は棄却した。また、原告の一部が求めていた参拝差し止めの請求については、「原告らが侵害されたと主張するような宗教上の感情は、法律上保護された利益とは認められない」との見解を示して却下した。

 

 ゲームソフトの馬名、馬主に権利なし 最高裁が逆転判決(04年2月13日)

 

家庭用と業務用の競馬ゲーム「ギャロップレーサー」シリーズに無断でオグリキャップやトウカイテイオーなど、実在する競走馬の名前を使われたことは、名前や肖像を他人に勝手に使わせない権利としてタレントなど著名人に認められている「パブリシティー権」の侵害にあたるとして、馬主の会社6社と個人13人が、制作・販売元の「テクモ」(東京都千代田区)に販売などの差し止めと総額780万円余の損害賠償を求めていた(同社は、金額面で折り合いのついた馬主には馬名使用料を支払っている)訴訟の判決が最高裁第2小法廷であった。

判決は、馬の名前が持つ「顧客吸引力」を第三者が利用したとしても、馬そのものの所有権を侵害したとはいえないと指摘した上で、「商標法や著作権法などは、物の名前を一定の範囲に絞って法的に保護しているが、法令の根拠もなく馬の名前に排他的な使用権を認めるのは相当ではない」と結論づけ、「馬は物であり、パブリシティー権はない」とする初めての判断を示した。ゲームソフトを販売していた会社に損害賠償を命じた一、二審判決を破棄し、馬主側の請求を退ける逆転判決を言い渡した。

 なお、一審・名古屋地裁は日本中央競馬会(JRA)が主催するレースの中で格式の高いG1レース出走馬に限って初めて馬名についてパブリシティー権を認めた。二審・名古屋高裁はG1優勝馬に範囲を絞ったものの、やはり権利を認めた。

 

 東京地裁;東京都に約1億円賠償命令 高校水泳部員の事故で(04年1月13日)

 

 99年7月、部活動終了後に教諭の許可を得て自主練習をしていた際、スタート台から飛び込んで底に頭を打ち、自力で立つことも不可能な後遺症が残ったのは顧問教諭の指導が不十分だったからだとして、水泳部員だった元東京都立葛西工業高生(21)と父親が都を相手に約2億2、000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があった。

判決は、「逆飛び込みの危険性について注意を促したり、教諭の立ち会いなしに練習することを禁じたりしなかった過失がある」と述べ、生徒が母親を亡くしている点などを考慮して約7、000万円の付き添い看護費を認めるなど総額2億円近い損害を認定した上で、「技術が不十分なまま自主練習をした」として4割を過失相殺(かしつそうさい=債務不履行または不法行為に対する損害賠償額を算定する際、債権者や被害者の側に損害発生について過失があれば、それを考慮して賠償額を減らすこと)し、さらに日本体育・学校健康センターから受けた障害見舞金3、000万円余を控除し、9、682万円の支払いを命じた。

 

☆ 東京地裁;漫画も「わいせつ文書」(04年1月13日)

 わいせつなコミック本を販売したとして、わいせつ文書販売の罪に問われた出版社「松文館」(東京)の社長(54)に対する判決があった。

判決は、弁護側の「性表現の自由は大幅に拡大された。本件漫画はわいせつではない」と主張を、「過激な性表現物がはんらんし、性的秩序の維持に脅威を及ぼしかねない現状だが、この漫画を許容する社会通念は形成されていない」として退け、「問題の漫画本『蜜室(みっしつ)』はもっぱら読者の好色的興味に訴えるものだ」と認定した上で、「写真と同様に視覚に訴える漫画は性的刺激の程度を強くすることが可能で、わいせつ文書に当たる」と明確に判断し、懲役1年、執行猶予3年(求刑懲役1年)を言い渡した。

 なおわいせつ漫画をめぐり略式裁判(略式起訴)で有罪が確定した例は複数あるが、正式裁判で漫画がわいせつ文書に当たるかが争われた初めてのケース。また、本格的なわいせつ裁判の判決はほぼ20年ぶりである。

 

 青森地裁;運転者は「誰か」10年以上裁判で被告に有罪(04年1月4日)

 

91年4月6日午前3時10分ごろ、青森市八ツ役矢作の県道で軽乗用車を酒気帯び運転し、道路左側の電柱に衝突、助手席にいた知人の短大女性講師(当時29歳)が車外に投げ出され死亡する自損事故を起こしとして、業務上過失致死と道交法違反の罪に問われた同市古館の会社員告(37)の判決があった。

 

判決は、「被告は助手席で寝ており、運転はしていない」とする弁護側の主張を退け、「運転していたのは東被告で、女性は助手席に乗っていた」と認定して、懲役2年、執行猶予4年(求刑・懲役2年6月)を言い渡した。

 

この事件で県警は、事故当時に車を運転していたのは東被告とみて、約1年後の92年4月、東被告を青森地検に書類送検し、同地検はさらに補充捜査をして93年3月、在宅起訴したが、被告が運転してことを否定して争ったため「運転していたのは誰か」が争点となり、結審まで10年かかる長期裁判となった。

 

 

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