第3回

●水木 しげる/著 『ねぼけ人生』 筑摩書房 ISBN 4-480-03499-4

 あまりにも面白い本なので友達に貸すとゼッタイ返ってこない。きっと「ゲゲゲの鬼太郎」や「悪魔君」はみんなも読んだだろう。だけど作者の人生のほうがマンガより面白ことは知られてない。かれは自分が就く仕事でことごとく失敗をするは、ニューギニアの戦地で片腕をなくすは、なんとかつかんだ紙芝居や貸本マンガのブームもさっさと終わるは、極度の貧乏神に取り憑かれるなど、成功するまでは苦労の連続だ。だけど持ち前の性格から自分の人生を楽しむだけでなく、マンガでたくさんのひとを楽しませてしまう。ちなみに昨年の自殺者は三万三千人で史上最多の記録を塗り替えた。これは交通事故による死亡をはるかに上回る勢いである。みんな水木しげるみたいになれば自殺なんてしないのに。だけど水木しげるのような性格はこれはこれでひとつの才能なのだ。みんなに教訓をひとつ:幸福というのも才能である。だから才能のないボクはこつこつ勉強しなきゃならない、ってことを痛切に実感させられた本なのです。ガーーーン!

●ブコウスキー,C.(チャールズ)/著、中川 五郎/訳 『詩人と女たち』 河出書房新社 ISBN 4-309-46160-3

 おそらくブコウスキーは史上最もかっこいいジジイであろう。かれの興味を惹くのは酒と女性とギャンブルぐらいだ。たしかに写真に写ったブコウスキーは、パンツいっちょでヒゲはボウボウの無精ヒゲ、おまけにビール腹を恥ずかしげもなくさらし、アルコールでニヤニヤ酔っぱらっている。ただの薄汚いだけのオヤジじゃないか!だけどブコウスキーが荒れに荒れた生活を小説に書くと、なんとも美しい作品になってしまうから不思議である。かくして絶世の美女が砂糖に群がる蟻のように寄ってくる。かれが書く本はカルト的な人気を博して売れまくる。だからと言って荒れた生活を最後までやめようとしなかったパンクなジジイ。きみたちも茶髪でロックをやっているからとか、オヤジたちに反抗しているからかっこいいなんて勘違いしちゃ駄目だよ。かっこよくしたいという気持ちがあるなら死ぬまでかっこよくしていなさい。

●村上 春樹/著 『螢・納屋を焼く・その他の短編』 新潮社 ISBN 4-10-100133-2

 かなしいはなしです。きみたちも友人と酒を飲みながら将来を語ったり、なんで自分が勉強しているのか分かんなくなって世間や先生の悪口を言ったり、思い通りにならない不満を遊びや馬鹿なことで解消したり、クラスやバイトの人間関係に悩んでみたり、ちょっとびくびくしたあこがれを異性に抱いたり、なんでもいけど大学生活をめちゃくちゃ満喫するのだろう。たしかに今はそう思っていないかも知れないけど、こんなにキラキラした時間というのはもうあっと言う間に過ぎ去っていってしまうんだ。あとはキラキラしていたという思い出があるだけ。だからかなしいはなしになっちゃうんだね、と気付いたときはもうきみたちの青春は終わっています。かなしいのがもっと読みたいひとは同じ村上春樹の「ノルウェイの森」上・下を読むといいかも。だけどこっちのほうは死ぬほどかなしいはなしです。

図書館入り口に戻る