デ・スメット

デ・スメットが「小さな家」シリーズで始めて言及されるのは、『シルバー・レイクの岸辺で』第23章、「測量技師の家」で冬を過ごしているとき。「ここにできる町は何て名?」というキャリーに問いに、とうさんが「ドゥ・スメットっていうんだ。ずっとむかし、この土地に開拓にきたフランス人に神父の名をとってつけたんだよ」と答える場面です。

『シルバー・レイクの岸辺で』『長い冬』『大草原の小さな町』『この楽しき日々』『はじめの四年間』に登場するサウス・ダコタ州の小さな町。

最寄空港、スー・フォールズ(Sioux Falls)の「スー」とは、言うまでもなく、インディアンのスー族のことです。空港からデ・スメットまでは車で約2時間ですが、道沿いにインディアンの居留地を示す看板がいくつか見られます。途中にヴォルガというロシアの大河の名を留めた町もあります。『長い冬』に出てきたか?




ローラゆかりの場所を巡る出発点は、オリベット・ストリートにあるギフトショップ、兼、ローラ・インガルス・ワイルダー協会の本部です。訪問者はここでデ・スメットの地図を入手し、測量技師の家(Surveyor's house)とインガルスの家のチケットを購入します(2000年8月現在で5ドル)。以下、その順番にしたがって・・・

「測量技師の家」  ギフトショップのお隣りで、ファースト・ストリートとオリヴェット・アヴェニューの角にあります。

しかし、『シルバー・レイクの岸辺で』第14章の始めに「測量技師たちの家は、掘立小屋から半マイルもない、湖の北側の岸に建っていた」("North Shore if the lake not half a mile from the shanty"[144])とあるのに、なぜ町中に・・・と不思議に思っていました。シルバー・レイクは1920年代に排水工事がなされたという話は聞いていたので、もとはここまで水が来ていたのかしら、などとも考えたのですが、もとはローラが記した通りシルバー・レイクの北の岸にあったのを、後に移動させたとのこと。家そのものはローラが一冬過ごしたまさにその家で、デ・スメットで最も古い家の一つだそうです。

「小さな家」シリーズで、特に好きなことの一つが、冬の支度を終えた後の満ち足りた感じ、そして、その後の冬の日の楽しげな様子です。ですから、『シルバー・レイクの岸辺で』の同じく第14章で、ローラが食器や食料がぎっしりならんでいる「測量技師の家」の小部屋を覗いて、嬉しさのあまり声をあげてしまいそうになる場面、そして、第22章でボースト夫妻をまじえて過ごす「たのしい冬の日々」は、何度読んでもわくわくします。そのローラが覗いた食料部屋も、ボーストの奥さんが作ってくれた飾り棚もどちらもこの「測量技師の家」の中にあるのです。

ボーストの奥さんが作ってくれた飾り棚は家の入り口を入ってすぐ左側にあります。「一番上の棚は、かあさんが楽に届く高さでした」とローラは書いていますが、ガース・ウィリアムズのイラスト(福音館の版では、272ページ)で見るよりも、棚の位置はたいへん低く感じられます。棚の位置も多少移動したのかもしれませんが、かあさんだけでなく、みんなとても小柄だったのでしょう。当時のその他の家や衣服を見ても、感じられることです。

「ブリュースター学校のレプリカ」  「測量技師の家」の隣りにあります。ブリュースター学校は、15歳で教員免許を取ったローラが初めて教えた学校。自分よりも年上で背も高い男子生徒二人を前に、ローラが悪戦苦闘する様子が『この楽しき日々』に描かれています。

中は狭くて暗く、板の間から外の光が漏れています。本物の学校では、板の間はちゃんとふさいであったと思いますが、それでも、農閑期の冬だけ開講したこの学校。ストーブの側でないとそれは寒かっただろうと、想像されます。


サード・ストリートにある「インガルスの家」

とうさん、かあさん、メアリー、キャリー、グレイスが1887年から1928年にかけて住んだ家。と言っても、グレイスが1901年に結婚(グレイスとネイサン・ダウはこの家の居間で式を挙げたのだそうです)、その翌年にとうさんが亡くなり、そして、キャリーが1912年に結婚すると、かあさんとメアリーは下宿人を置いて、生活費を稼いだそうです。ローラは1885年に結婚したため、この家には住んでいません。

立派なストーブにミシン、とうさんがメアリーが音楽を続けるために買い求めたオルガンがあるこの家は、とうさんが造った家の中で最も広く、立派です。

二階へは、裏の階段を上っていきます。ここに住んだわけではありませんが、ローズゆかりの品々、書物机や食器等が展示してあります。書物机の棚の中には福音館の『プラム・クリークの土手で』が置いてありました。ボタンを押すと、ローズの養子、ロジャー・マクブライド氏によるローズの品々の説明を聞くことができます。


「組合派教会(Congregational Church)」  デ・スメットに初めて建てられた教会。「インガルスの家」の裏手にあります。とうさんは大工として建設に関与し、一家はこの教会に通ったのです。その後かなり増築されたとのことですが、とうさんが建てた部分も残っています。写真右手の大きな屋根のある一角です。

「小さな家」シリーズ(NBCテレビの『大草原の小さな家』でも)の牧師さんと言えば、インガルス一家がウォールナット・グローブで出会ったオルデン牧師でしょう。オルデン牧師は一足先に、さらに西へと向かっていましたが、一家が冬を過ごしている「測量技師の家」を偶然訪れるのです(第23章)。一家はオルデン・牧師がデ・スメットの教会に着任するのを心待ちにしていましたが、ブラウン牧師が先に着任してしまいます。なお、ブラウン牧師の養女のエイダはローラの親友になります。




町の中心部を離れて南の方へ。南東には「デ・スメット共同墓地」が、南西には「インガルス家の農地跡」があります。なお、共同墓地とは、宗派に関わらず、キリスト教徒の墓がある墓地のこと。

「デ・スメット墓地(De Smet Cemetery)」  とうさん、かあさん、メアリー、キャリー、ローラの長男が眠る墓地。他にボースト夫妻や、グレイスとその夫のネイサン・ダウ、ブラウン牧師夫妻など、「小さな家」に登場する人物たちの墓もあります。面白いのは、ロフタスさんの墓石の片面に「フリッツェル」の名があることです(墓石の西側にはフリッツェル、東側にはロフタスの名が刻まれている)。なお、フリッツェルさんは「小さな家」シリーズには登場しません。

小高い丘の上にある、開放的で気持ちの良い墓地です。
「インガルスの農地跡」

左の写真の木々は、『シルバー・レイクの岸辺で』第29章でローラたちが植えたハイロハコヤナギで、「芝草のなかの黒土からすっくと」立っていた四本の若木が成長したものだと思われます。
「インガルスの農地跡」へ行く途中で、大沢地(ビッグ・スルー[Big Slough])を通りました。シルバー・レイク沿いにある沼地で、ローラが書いている通り、背の高いアシが生い茂っています。

ビッグ・スラウ(Big Slough)
シルバー・レイク  1920年代に排水工事が施され、現在かろうじてその跡を留めているシルバー・レイク。セメント工場(?)の裏手にこじんまりと横たわっていた。しかし、小高い丘から見下ろした限りで、水はきれいなブルーでアヒルがたくさん泳いでいた。
鉄道  今でも列車は通っているという話だが、一台の車両も見られず。
ローラとアルマンゾの家。  フォース・ストリートとロフタス・ストリートの間。現在は売りに出されているという噂。
メインストリート  ここにとうさんの店などもあったという。
ロフタスさんの店


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